本日、二つ下の同僚からTELがあり、知り合いの車が、轍にハンドルとられてしょーがないので、ちょっと見てやってほしいとの連絡がありましてね。
車は、某国産メーカーの高級SUV。
轍に取られるって、どーせ19とか20とかへのインチアップとかで、オフセットもツライチぱつぱつのオフセットの方向に持っていってんでねーの? と思いましたが、話を詳しく聞いていると、どうもそーでもない。
考えてみれば、この同僚だってタイヤのプロ。そんな典型的なパターンなら、わざわざこんな電話を寄越したりもしない。
んじゃ、まぁとりあえず見てみましょってことになりました。
お客様が来店されるまでに、こちらも準備をしておきます。
チャララン♪(某国民的タヌキ型ロボットが不思議なポケットからアイテム出す時の効果音で)
こんなこともあろうかと予備タイヤ~
車でもパソコンでも、なんでもそうなんですが規格工業品のトラブルシューティングをするとき、一番手っ取り早いのは疑わしい部品を正常品(と確認できているもの)に入れ替える事です。
特に、車のトラブルなんてものは物理も化学も精神医学も内包する厄介な類なものなので、
どこに問題が有り、どこに問題が無いのかをはっきりさせる為の手段として、接客的観点からも経営的観点から見ても予備パーツに勝るモノは無いというのが僕の持論です。
そんなわけで、うちに置いてあるトラブルシューティング用予備タイヤのうち、今回の車につかえるサイズを見繕って、エアー点検や取り付けナット等の準備しておきます。
さて、お客様がいらっしゃいました。
いくつか問診と検診をさせていただきます。
まずはタイヤチェック。
タイヤの状態を見ます。ほうほう、五部山以上ある、まだまだ新しいタイヤです。
タイヤサイズを見ます。事前に聞いていましたが、純正ホイールに純正サイズです。公道での安定的ハンドリングとしてはベストな組み合わせでしょう。
次に問診。
ふむふむ、最近この車を中古で買った。
ふむふむ、踏切りだとか荒れた道だとか、とにかくギャップや轍があると、とにかくハンドルが取られ、車があっちこっちへ。
ふむふむ、以前に乗っていた車は同メーカーの高級大型ミニバンなど。その時は、19や20インチも履いていたことがあるが、こんなに酷かった事は無い。
ふむふむ、どうやら問題は感性的なものではなく、本当に物理的な異常がありそうです。
ならば、あとは車体とタイヤのどちらに原因があるのかをはっきりさせる必要があります。
そんなわけで、先ほど用意したタイヤをフロント左右にとりつけます。
さぁ、お客様これでしばらく走ってきてください。
10分後。
お客様「全然違いました(;・∀・)」
K「あ、じゃぁタイヤですね(´・ω・`)」
10分で、問題はほぼ解決されました。
そんなわけで、原因はタイヤかホイールのどちらかとなりました。
しかし、ホイールは天下の純正ホイール。回転させても歪みもほぼない事は分かってましたし、歪んでたら現れる影響は轍のハンドル取られだけで済みませんので、ほぼほぼタイヤであろうことが確定しました。
今回のタイヤ。
サイズは純正サイズの18インチです。
溝、5mmは残っています。
フロント左右に関しては、偏摩耗も特に見受けられません。
(4本全体で見ると、ちょっと変な摩耗はしてるんですけどね)
だが、アジアだ。(´・ω・`)
製造年、まだまだ出来たばかり。5年も10年も古くありません。
目視でみても、丸いタイヤです。歪な形にはなっていません。
だが、アジアだ。(´・ω・`)
タイヤパターンはかっこいい。
まるで、うちのメーカーが一昔前に出してた、オンロード用SUVタイヤにそっくりなパターンをしております。
とても、よく走りそうなパターンをしております。
だが・・・アジアだ。(´・ω・`)
それも、HとかKとかな比較的アジアンの中でも有名メーカー(っていうかHなんか既に世界シェアでは抜かれてますけど)ではなく、もう本当にアジアン・ザ・アジアンって感じの、アジアンタイヤです。
ぶっちゃけて言ってしまえば、うちでも時々売る事あります。このメーカー。(笑)
でも、その時は決してこちらから進める事はしません。
黒くて丸けりゃ何でもよくて、車検が通って、1年持てば何でもいいから、とにかく一番安いやつ!
そういう要望のお客様にお出しするタイヤです。
だから、売買契約結ぶときに、くれぐれも念を押します。
初期不良な最低限の品質(交換したそばから空気がすぐ抜けるだとか、そもそもタイヤとして全く機能しないような欠陥)以外は、一切保証しませんよ。
性能に関してはNCNRですよと。
(これを言うと、ヤ〇オクかよ! と笑われますが)
タイヤって、
まっすぐ向いていたら絶対にまっすぐ走るものだと信じられがちですが
車をまっすぐ走らせる事ができるタイヤってのは、わりと高度な製造技術で作られてるんですよ~
って事です。
その事実を認識していないと、こーいうトラブルの時にアライメントとかサスペンションとか、すぐ「数値で狂ってる事が解りやすいもの」に目がいってしまって泥沼にはまりかねません。
弾性と粘性を併せ持つ複雑怪奇なタイヤというシロモノは奥が深いのです。
でも、誤解してほしくないのは、じゃぁこのアジアンにはまったく価値が無いのかっていったらそんな事は無いってことです。
車をまっすぐ走らせるのに疲れるのを我慢さえすれば、
車検の通るタイヤが国産の1/3以下の価格で手に入るのですから
選択肢としては有りでしょう。
それに、お客様も言っていましたが、平坦で綺麗な道路だったら気にならなかったとのこと。つまり外乱に弱いんですね。
でも、ドレスアップの為なら車が外乱に弱くなることを厭わないとするユーザーは、この業界ではそれほど珍しくもありませんから、そういったユーザーから見れば、これらのアジアンは「とにかく安い」というメリットだけが残るわけで、やはりアジアンタイヤにも需要はあるのです。
今回は、たまたま、そういったユーザー層とは違うところに、そういうタイヤがいって」しまったというミスマッチが起きただけなのです。
捨てる神あれば拾う神あり。
タイヤだけに限らず、製品というものには、必ずそれを求める需要があって生まれる物。
トラブルというのは、その需要と供給のミスマッチによって起きる事がほとんどです。
僕が関わる商談では、出来る限りそういうミスマッチが起きないように努めたいものです。
ちなみに、件のお客様からはこのタイヤを買い替える時は、必ずここに来ると言っていただきました。
ありがたいことです。
今月ピンチなので(笑)、その時が今月中に来てくれると嬉しいのですが、まぁそうそう美味い話も無いものだということも、この10年のタイヤ屋人生で理解しておりますので、その時が来るのを気長に待ちたいと思います。
おわり。