「美しい日本(ニッポン)のクラウン」 山村聰さんと吉永小百合さんのCMを良く覚えている。このとき5代目の4ドアピラードハードトップはこれまでにない形であり、6気筒エンジンの奏でるシャラシャラという音と共に強く印象に残っている。
月日は流れ、時代も変わり、先日新型クラウンが発表された。良い評価もあるが、良しとしない声も多く喧しい。新型車になり、これだけ騒がれるということは注目されている証左か。
私にとってのクラウンは父の世代が乗っていたイメージが強く、「自分の乗る車ではない」という印象をずっと抱いて来た。これまでの自分の車の選択肢に「クラウン」は入ることは無く、これからも選ぶことなく終わるであろうと思っていた。
日本のその辺で良くあるかもしれない普通の営業マンS氏と、ホントは車好きのY社長の会話。
S「社長、車は何に乗っているんですか?」
Y「えっ、俺? 何ってよくあるHEVだよ。」
S「エコカーですね!どうしてその車に乗っているんですか?」
Y「どうしてって、仕事で使うのにぜいたくな車は要らないし、燃費も良い方がいいし」
S「社長ほどの方であれば、やっぱりクラウンくらいに乗っていただいた方が良いのではないでしょうか?日本を代表する高級車ですし」
Y「俺はクラウンという車に乗ることに抵抗があり、ずっと避けてきたんだ」
S「そうなんですか?私が御社の社長であればクラウンに乗れれば良いなあと思いますけど」
Y「まっ、商売で一儲けしたら、イタリア製のスポーツセダンでも買うよ!」
こんな会話が、もしかしたらその辺でされているかもしれず、自身そのように思ってきたのも事実。今、その「クラウン」が気になっている。
先ずはクロスオーバーの外観。
当初はナニコレ?と言う感じであったが、しばらく見ていたら、どう見てもクラウンにしか見えなくなってきた。
従来型クラウンに変わり、新型クラウンが変化を見せたもの
① これまで必要とされてきた押し出し感の強いフロントマスクを変え、直線基調のスッキリしたフロントビューに変えた。
② これまで良しとされてきたローフォルムと訣別し、リフトアップされた都会的なフォルムに変えた。
③ 4発ハイブリッドエンジンに必要とは思えない左右2本出しマフラーが目立つリアビューを、マフラーエンドを見せないシンプルなものに変えた。
従来モデルと比較し、この辺りが評価の喧しい原因ではないかと?
全高を上げたことも面白い。副次的な効果をいくつか予測してみる。
フロアの低い車に乗る際、「よっこらっしょ」と出てしまう御仁(自身含む)に取り、乗り降りしやすいに越したことは無い。ドライバー自身が乗り降りしやすいヒップポイントはもちろん、リアシートも広く乗降性にも優れていると見る。カタログでは乗り降りの際の優雅な「所作」や高齢のご両親を乗せることにまで言及していることが面白い。TNGA以降、低くする設計が基本と見ていたが、異なる方向性を打ち出しているところが興味深い。 もう一つ室内の使い勝手について。この車はトランクが存在するがリアシートは倒せない。しかしこれにはスキートンネルが在る。可倒式シートでは長尺物を載せたとき4人乗車は難しくなるが、これはスキーをトンネルに差し込めばシートはそのまま。セダンで4人乗車でスキーに行くことが出来るとは素晴らしい。
次に駆動方式
FFベースではあるがこれはAWD。これまでのクラウンはFRレイアウトであり、降雪地のユーザーが選びにくかった点は否めない。四駆を選べば良いという話もあるが、FWD若しくはAWDレイアウトの他車に流れていた数は少なからずあると思われる。この車が興味深いのは、フロントに積まれるエンジンとモーターに加え、リアに搭載した「eAxle」を協調制御し、前後の駆動配分を100:0~20:80としたシステム。これはFRベースの従来型より優れた結果が見込まれ、降雪地ユーザーはもちろん、スポーティーな走りを求める層にも歓迎されるのではないか。GA-KプラットフォームによるAWD化はFRレイアウトに比べ弱みは感じられず、積極的に選択する理由になり得るのではと想像する。
そしてパワーユニット
注目すべき2.4Lターボデュアルブーストハイブリッドシステム。
アイシンとデンソーの合わせ技を、トヨタ車に供給する役割を担う、ブルーイーネクサス社(存在を初めて知った)。ここが開発した「1モーターハイブリッドトランスミッション」が肝となる。このトランスミッションを介しフロントとリアのモーターを駆動、T24A-FTSと呼ばれる2.4Lターボエンジンを搭載した全く新しいシステムと理解。エンジンを降ろせば電動車そのものに見え、派生を考えればBEVにもPHEVにも転換できる代物と思わせる。
5代目クラウン以来、クラウンは直6でなければならないと思ってきた自分に取り、クラウンがTHSハイブリッド化し4気筒になったことは選択肢から外していた遠因でもある。今回の2.4Lターボ付きハイブリッド+E-Four Advancedと呼ばれるAWDシステム+ダイレクトシフト6ATは興味深く、安全性の向上に加え、エモーショナルな走りも期待できる。しかし2.5L THSユニットに比べ燃費は悪い上にハイオク仕様、これを選択するには勇気が要るが、「HYBRID」のバッジはついているので、良く知る人が見ない限りエンジンの違いは分からないかと。
立場上CO2ゼロを叫ばなければならないトヨタではあるが、このユニットを売りにしようということは、まだまだ内燃機関で行くぞというメッセージともとれる。もう一つの2.5L THSシステムと比較し、燃費が不利なことがどのような評価を受けるのかも興味深い。
普段使いの実用車として、安全安心、少し燃費は悪いがちょっとは面白そうなクラウンに、これまで見向きもしなかった自分の心が動かされていることに驚いている。

Posted at 2022/07/28 21:42:32 | |
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くるま | 日記