2022年03月16日
2022年の春季労使交渉は16日に集中回答日を迎えた。早期妥結していたトヨタ自動車など大手自動車に加え、日立製作所や東芝なども労働組合の賃上げ要求に満額回答した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率は2%を上回った企業が多い。物価上昇が迫る中、中小企業にも賃上げの動きが広がり、持続的な賃上げができるかも課題となる。
21年は新型コロナウイルス禍で企業業績が悪化しベア見送りなど前年割れの回答が多かったが、今年は各労組が好業績を背景に前年超えの要求を掲げていた。
日産自動車やホンダ、日立や東芝が組合の要求に満額で回答した。日立の賃上げ率は2.6%(前年は2.1%)で15年の2.9%に次ぐ高水準という。日産の賃上げ率は2.2%で前年の1.9%を上回る。日本製鉄の賃上げ率は3%で、単純比較はできないが前年の賃上げ率1%を大きく上回る。トヨタは賃上げ率を開示していない。
自動車や電機などの主要労働組合が加盟する金属労協では16日午後6時時点で回答があった53組合のうち49組合で賃金改善を獲得。平均額も途中段階で2000円超と、15年以来の高水準だ。金子晃浩議長は「経営側は例年以上に人への投資の必要性に理解を示している」と語る。自動車や電機などではコロナ禍前の賃上げ率に回復してきた企業も多い。
今回の春季交渉では岸田文雄首相が3%超の賃上げに期待を示していた。経団連も好業績企業に賃上げを促していたことが、主要製造業で前年を上回る高水準の回答が相次ぐ背景にある。
厚生労働省によると21年の賃上げ率は1.86%で8年ぶりに2%を下回った。原材料高を受け今春には物価上昇率が2%に迫るとの予測もあり、今回の労使交渉では2年ぶりに賃上げ率が2%を上回るかが注目されていた。
資源高が長期化した場合、生鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率は「今春から夏に2%超。携帯通信費の引き下げなどの特殊要因を除くと3%程度に迫る」(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏)との予測も出始めている。2%超の賃上げが実現しても、物価高騰の影響が大きくなれば、家計負担感は改善されないとの見方がある。
米人材コンサルのコーン・フェリーによると日本の22年の予想賃上げ率は2.1%(中央値)。調査対象の97カ国中スイス(2%)に次いで低い。海外主要国に賃上げ率は見劣りし、インフレが加速する米国(3.5%)などとの賃金格差も拡大しそうだ。経済協力開発機構(OECD)によると、もともと現在の日本の平均年収は加盟国平均より低い35カ国中22位で、先進国の中で低水準にとどまっている。
ロシアのウクライナ侵攻の影響など、今後の企業業績への懸念材料もある。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「全ての企業が大盤振る舞いできる状況ではない」と指摘する。
経団連の十倉雅和会長は16日、「賃上げのモメンタム(勢い)は力強く維持されたとうれしく思う。これから賃上げを検討する企業の追い風となってほしい」と述べた。中小企業にも賃上げの動きが広がるか。大手企業も持続的な賃上げの流れを維持できるかも問われることになる。
Posted at 2022/03/16 20:46:09 | |
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2022年03月16日
政府は17日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京や大阪など18都道府県について21日の期限で解除する案を専門家に諮る。1月9日に沖縄など3県に適用して以来、およそ2カ月半ぶりに全国で対象地域がなくなる。
感染再拡大を警戒しつつ経済社会活動の本格的な再開を探る。
岸田文雄首相は16日、首相官邸で後藤茂之厚生労働相ら関係閣僚と話し合った。協議後の記者会見で、自治体側の要請を踏まえ全面解除する方針を表明した。17日に専門家でつくる基本的対処方針分科会で了承されれば政府対策本部で正式に決める。
首相は「第6波の出口ははっきり見えてきた」と述べた。「全国的な感染者数はピーク時の半分程度まで落ち着いてきた」と分析し、病床使用率なども「明確な低下傾向が確認されている」と強調した。
解除を諮問するのは北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、石川、京都、大阪、兵庫、香川、熊本の18都道府県。いずれも1月下旬から対象地域だった。
Posted at 2022/03/16 19:23:24 | |
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