2022年03月19日
18日のダウ工業株30種平均は5日続伸。週間では5.5%高と2020年11月以来の上昇率となった。原油高と金融政策という2つの不透明要因が後退したのが大きい。金融政策では、米連邦準備理事会(FRB)が16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内7回の利上げ予想を示し、金融引き締めの道筋が見えたと受け止められた。
もっとも、急激な相場の戻りで米主要500社の予想PER(株価収益率)は直近の底だった8日の18.3倍から、18日は19.4倍に上昇した。新型コロナウイルス禍の2年間のレンジは20~23倍。金利水準の違いを踏まえると20倍超えのハードルは高いだろう。
金融政策の不透明感も払拭されたとはいえない。FOMCでは0.25%の利上げを決めたが、この決定に公然と異を唱えたのがセントルイス連銀のブラード総裁だ。投票では0.5%の大幅利上げを主張して、唯一、反対票を投じた。
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ブラード総裁は18日、反対理由を説明した文章を同連銀のウェブサイトで公表した。「強い米経済と予想外の高インフレは政策金利が低すぎることを意味する。この状況に早急に対処しないとFRBの物価目標の信頼性が損なわれかねない」と指摘。年内に12回分に相当する利上げを実施し、政策金利を3%に引き上げるべきだと主張した。
文章ではFRBによる「エクセレントな」金融政策として、1994~1995年の利上げを例に出した。利上げ開始は94年2月。インフレ率は2%台半ばとさほど高くはなかったが、直前の経済成長率が5%を超え、景気過熱がインフレを招く前に「予防的な利上げ」に踏み切った。
予防的とはいえ利上げペースは急激だった。95年2月までの1年間に3%引き上げ、1回当たりの利上げ幅は0.5%が3度、0.75%が1度。米議会から「引き締めが急激すぎる」と批判の声が上がるほどだった。メキシコ通貨危機という副作用を生んだが、成果はほぼ狙い通り。インフレ率は2%台を維持し、経済成長率は95年前半に一時1%台に低下したが景気後退には陥らなかった。
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翻って今回のFOMC。会合後に公表した委員らの「経済見通し」では、物価指標である個人消費支出(PCE)物価指数の年末値を4.3%と予想した。委員16人の予想中央値だ。政策目標の2%をはるかに上回り、インフレ退治に及び腰とも受け取れる。ブラード総裁には政策対応が「甘い」とみえるのだろう。
普段はあまり注目されないデータだが、FOMCの経済見通しでは委員に自身の予想が上下に振れるリスクも聞いている。物価については16人全員が「上振れリスクがある」と答えた。全員が同じ答えだったのは史上初だ。今後、物価が予想以上に上昇し、ブラード総裁に歩み寄る委員が増える可能性は高い。
ちなみに94~95年の株価はどうだったか。94年はインフレと利上げの影響で長期金利が8%台に上昇。景気減速も警戒され、ダウ平均は年間で2%高にとどまった。一方、95年は利上げ打ち止めと長期金利低下が追い風となり、33%上昇した。同じパターンを繰り返すとは限らないが、今年の株価は上がりにくいと予想する根拠の一つにはなる。
Posted at 2022/03/19 18:09:11 | |
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