
スズキの新型コンパクト・
スプラッシュに乗ってきました。ボディカラーはカシミールブルーメタリック4です。
(フォトギャラリーに写真があります。)
○だった点
・しっかりとした欧州車的な走り味
一般道路でも速度レンジの高い欧州で生産・販売される車だけあって、走ることについては手抜きがありません。1.6m近い全高にもかかわらず重心が低い印象で、腰高感がなく気持ちよくコーナーを抜けて行きます。フロントだけでなくリヤサスがきちんと仕事をして、リヤタイヤをきちんと路面に接地させているため、ハードコーナリング時もFF車にありがちなフロントヘビーなつんのめり感がありません。
ステアフィールは直進付近での不感帯が少なく、反力の立ち上がりが明確な、しっとりした味付けです。電動パワステゆえの悪弊は感じることができませんでした。
・安全装備の充実
サイド・カーテンエアバッグやリヤ中央席3点シートベルト&ヘッドレスト、ISOFIX対応チャイルドシート固定用アンカーなど、コンパクトカーとしては非常に安全装備が充実しています。
・ブレーキタッチの改善
絶対的な制動力はたいしたことはないのですが、踏力と減速度が比例していて、気持ちよくブレーキが踏めます。またペダルタッチにも剛性感があり、急制動時にも安心感があります。スイフトのブレーキは踏力とタッチが比例していない、いわゆるカックンブレーキかったので、こういった改善はよいことだと思います。
もう少し頑張ってほしい点
・輸入車であることの影響がどう出るか?
欧州で生産されて日本に輸入された日本車といえば、最近では日産デュアリスが思い浮かびますが、デュアリスは現在日本国内で生産されているようです。
国内生産に切り替わった背景には、為替の影響やデュアリスが当初予想よりも人気があり輸入が間に合わないといったことが挙げられますが、欧州生産車は日本製に比べクオリティが低く、PDI(プレ・デリバリー・インスペクション:出荷前検査)での手直しする箇所が多かったことが大きな理由のようです。
今の時点で輸入車だからダメと断言するのは尚早ですが、ちょっと不安ですね。
・日本車の水準からすると物足りない装備
オートエアコン、電動格納ミラー、キーレススタート、HIDライトなど、現在の日本車コンパクトカーに常識的に装備されているものが、オプションでも装備できません。これらの装備は自動車の本質には関係ないものですが、一般的には受け入れづらいでしょうね。
・ワンタッチパワーウインドウがない
これも装備に関することですが、運転席ワンタッチパワーウインドウは下降はワンタッチですが、上昇はボタンを引き上げ続けなければいけません。最近は欧州車もワンタッチパワーウインドウを装備する車が増えてきていたので、これは驚きました。
・タコメーターがない
タコメーターが標準では備わらずディーラーオプションとなりますが、やはりCVT車であってもタコメーターぐらいは標準装備していただきたいです。それに大型の単眼メーターっておもちゃっぽい感じなので、あまりこの車に似合ってない気がするのですが・・・
・小回りが利かない
これはスイフトにも共通した弱点ですが、小さなサイズにもかかわらず、最小回転半径が5.2mと非常に大きいです。(ボディサイズが近いトヨタヴィッツやパッソが4.3~4.4m)タイヤサイズが185/60R15とコンパクトカーとしてはかなり大きいのが原因で、これが走りの良さをもたらしてはいるのですが、小さなサイズから取り回しのよさを期待すると裏切られそうです。
・街乗りで硬い乗り心地
これも走りの良さの裏返しですが、標準装備のコンチネンタルタイヤの特性もあってか、街乗りではかなり固い乗り心地です。路面の継ぎ目やマンホールの蓋などで角のある突き上げがありますし、路面状況によってはかなり揺すられ感があります。
・車体サイズが中途半端?
室内幅はスイフトより1cm狭いのですが、実感としてはもっと狭いです。リヤシートは3人横並びに座らせることも想定されているようですが、それによって左右席が端に追いやられて側頭部の圧迫感があり、快適とはいえません。足元スペースはスイフト並みで決して広いとはいえません。
また、荷室スペースもリヤウインドウが直立している分、多少スイフトよりも広いかな?という程度で、約1.6mの全高であることを考えると狭いです。
スイフトとは違う、ラクティスやキューブのようなハイト系のコンパクトとして売りたいのであれば、もう少し車体サイズを大きくして、室内空間を広げたほうがいいのではないかと思います。
現状では室内空間においてスイフトとの明確な違いがなく、スプラッシュを選ぶところがありません。
・ウインカーの音
ウインカーの動作音が今まで聞いたことがない「ペッケンペッケン」という感じの音で違和感があります。最近のダイハツ車の「ポッポッポッポ」という音も違和感がありますが、なぜこのような音にしてるんでしょうか?
総評
スイフト乗り的にはこの車は超注目でしたが、良くも悪くも欧州車そのものという印象です。日常的に高い速度域で使用することを考慮されているだけに、街乗りでは硬さの目立つ乗り心地も、速度を上げるに従ってしなやかなフットワークを披露します。スイフトはもしかしたら国内生産車と欧州生産車で足の特性に違いがあるのかもしれませんが、足のセッティングがやや柔らかく、路面のうねりで煽られる動きがあったり、ロールスピードがやや速く、グラッという動きを感じることがあるのですが、スプラッシュはスイフトよりも全高が高いにもかかわらず、安定しています。
またブレーキのタッチも、スイフトがややカックンブレーキなのに対し、スプラッシュは踏力と制動力が比例した、気持ちのいいブレーキです。
走らせたときの楽しさはもしかしたらスイフトより上かも?と思えます。
ただし、装備や使い勝手に現代の日本製コンパクトカーのレベルからすると考えられないぐらい劣っている部分があり、一般的にはあまりお勧めはできない車です。
車両本体価格は123万9千円とスイフトXG Lパッケージの約3万円安ですが、MD/CDプレーヤー、フルオートエアコン、電動格納ミラー、キーレススタートなどは備わりませんから、かなり割高な印象は否めません。
(輸入車なので仕方ないのですが、メーカーオプションでも選べない)
そればかりか、運転席パワーウインドウが閉まる方向がワンタッチではなかったり、燃費計が「○km/L」という表示ではなく、「○L/100km」(100km走るのに○リッターの燃料を消費したと表示する、欧州車によくあるタイプ)であったりと、この車が輸入車であるということを念頭に置かないといけない部分が多々あり、「そんなめんどくさいなら、別に他の車でいいよ」ということになりそうです。
CMは女性向けのおしゃれな車というイメージですが、きちんと各部の使い勝手を確かめて、納得した上で購入された方がいいでしょう。
実際スズキもそれほどこの車を売る気はないようで、月販目標は500台と控えめな数字です。
現状ではスイフトとの差異があまりない(というか一般的にはスイフトで十分)のですが、本気で売る気であれば、車体サイズを全長+300㎜、全幅+10㎜、ルーフエンドの絞込みを弱めてスペース系ハイトワゴンにすればよいのではないかと思います。
でも、よく考えたらそれってソリオですね。
この車は欧州ではオペルから「アジーラ(アギラ)」として併売されていますが、先代のアジーラはソリオでした。ソリオからすればかなり狭くなっているのですが、欧州のユーザーにとっては問題ないのでしょうか?
・・・と、否定的な意見が多くなってしまいましたが、日本国内においては普通車はスイフト、軽はワゴンRとよくできた車がすでに存在するため、スズキとしても特にこの車を一生懸命売るというより、ちょっと毛色の変わった車として「こんなのもあるよ~」というものなので、納得して購入すれば問題はないでしょう。
お勧めするとすればこんな方でしょうか・・・
・走りそのものの実力はきわめて高く、受動的・能動的安全性も高いと思われるので、長距離を乗る方
・スイフトに興味があるが、ちょっと台数が多すぎるから・・・という方
CMは女性向けのようなイメージですが、ハンドルがやや重かったり、小回りが利かなかったり、各部の使い勝手にちょっとクセのある車なので、あまり女性向けとはいえないかも・・・