
新型
マークXに乗ってみました。
グレードは250G“Sパッケージ”、ボディカラーはブラックです。
私は仕事柄、先代マークXにはよく乗る機会があるので、その印象とも比較してみたいと思います。
(カメラを持って行ったのに、SDカードを入れ忘れてしまったので、実車の写真を撮っていません。写真はカタログを撮影しました。つーかスキャナー買えよってwwwwwww)
○だった点
・素直な運転感覚
トヨタの車といえば一般的には、路面のインフォーメーションをほとんど伝えないステアフィール、曖昧な直進性、剛性感の低い操作系、ヤワなくせに変にゲインの強く、追い込んでいくと腰砕けになる足回りと、運転そのものを楽しむとか車を味わうという感覚とは無縁のものが多いように思いますが、マークXはトヨタ車としてはかなりしっかりした運転感覚です。
この車が
レクサスISやGS、クラウンなどトヨタを代表する高級車とプラットフォームを共用するという事情もあるのでしょうが、通常のトヨタ車に比べ足回りにはお金が掛かっている印象です。
また、後輪駆動ゆえタイヤの切れ角が大きく狭い道でも小回りが利き運転しやすいです。
・2.5Lがレギュラーガソリン仕様になった。
先代はすべてハイオク仕様でしたが、新型は2.5Lがレギュラーガソリン仕様になりました。今のご時世、経済性を考慮するとレギュラーガソリン仕様はありがたいです。
エンジン出力は先代2.5Lから比べると11KW(12PS)低下しており、確かに多少パワー感が低下していますが必要十分で、この程度なら十分納得できます。
・価格が少し安くなった
ベースグレードの250G“Fパッケージ”は車両本体価格238万円と、このクラスの車としてはリーズナブルな価格設定です。もちろんこの価格にはナビが入っておらず、このクラスらしいパワーシートなどもオプションとなりますが、買い易い価格である事はありがたいですね。
・子供っぽさの少なくなった内外装デザイン
先代マークXは、マークⅡまでの高齢化したユーザー層を若返らせるためか、内外装がちょっと過剰にデザインされていました。
見た目はかっこいいのですが、やや使いにくいエアコン・オーディオ操作部、昔のラブホみたいな(笑)大型のルームランプ、取って付けた感のあるヘッドライトなど…
新型はそういった粗削りだったデザインが洗練されて、このクラス相応の高級感があり、なおかつ若々しさも感じさせます。
ただ、フロントグリルのミッフィーの口みたいな×マークがなぜか先代よりでかくなっていますが…(笑)
・2.5L級セダンとしては良好な使い勝手
2.5L級の後輪駆動セダンとしては珍しくトランクスルーやリアシートリクライニングが備わっており、できるだけミニバン等との使い勝手の差を感じさせないようにする努力が見られます。
・大きくなりすぎていないボディサイズ
全幅が20mm拡大されて1,795mmとなりましたが、それでも1.8m未満で、全長は先代と同じ4,730mmです。ここ最近の新型車はモデルチェンジでボディサイズを拡大させることが多い中、むやみにボディサイズを拡大させなかったことは、この種の車の使われ方やユーザー層を熟知しているトヨタらしく配慮の行き届いているところだなあと思います。
もう少し頑張ってほしい点
・ボンネットが高くて前方の視界に圧迫感がある。
外観から「先代よりも妙にボンネットが厚く見えるなあ…」と思っていたのですが、実際に乗り込むと明らかに前方が見にくくなっています。
最近の新型車は対歩行者の傷害軽減のため、エンジンヘッドとの間隔をとるためボンネットフードが高くなる傾向がありますが、運転席からの直接目視による視界が良いことは安全運転の基本だと思うのですが…
・レクサスやクラウンに比べて明らかに雑な走行フィール
絶対的にはこのクラス相応の滑らかな走行フィールではあるのですが、この車とプラットフォームを共用する
レクサスIS・GSに比べると明らかに雑な印象です。
絶対的な車内騒音は静かですが、音質がなんとなくラフです。源流対策をして音や振動の発生自体を減らしたレクサスに対し、防音材でごまかしているマークXという印象です。
トヨタとしてはトヨタブランド車とレクサスブランド車との間に走りや内外装の質感に明確な差別化をしたいのだと思うのですが、ちょっと露骨ですね…
・プレミオ・アリオン、カムリに似ているスタイル
同じ世代の同じメーカーのセダンで、車格も近いのである程度やむを得ないのですが、外観が先代よりもプレミオ・アリオンや
カムリに似た印象になってしまいました。
マークXはある程度プレミアム性を持たせた車なのですから、あくまでも大衆セダンであるプレミオ・アリオンやカムリとは明確な差別化を図った方がよかったのではないでしょうか。
・室内空間が狭い
スタイル優先のためか、室内空間はやや狭いです。後席足元空間は十分なのですが、頭上・側頭部とも髪の毛が天井に触れます。
(私の身長は175cm)
また前席も良く言えばコックピット感覚があってタイト、悪く言えばセンターコンソールが幅広で狭いです。
先代マークXは個人タクシーにもよく使用されていましたが、現行型のこの狭さで大丈夫なんでしょうか…?
・リアシートヘッドレスト
試乗車の250G“Sパッケージ”などはリアシート左右席が独立式のヘッドレストではなく、ハイバックシートです。
トヨタのことですから、ヘッドレストの重要性は認識しているのでしょう。一方で現行型ユーザーへのクリニックを行った結果、リアヘッドレストを有効に活用していないということが判明して、コストダウンを兼ねて調整機構を省略したのでしょうが、ユーザーに使われていない安全装備は使うように啓蒙するのもメーカーの責務です。このような改悪はやめていただきたいものです。
・なんのための排気量拡大?
先代マークXはエンジン排気量が3.0Lと2.5Lの二本立てでしたが、新型は3.0Lが3.5Lへと排気量を拡大させています。3.0Lでも動力性能が不足ということはないと思うのですが、なぜ今日日こんなに排気量を拡大させるのでしょうか?
おそらくいろんなエンジンを準備するよりも、クラウン、
アルファード、
ブレイドなど多数のトヨタ車に搭載されている3.5Lの2GR系に集約し、3.0Lの3GR系を廃止しようということなのかもしれませんが、それなら3.0Lに集約してもよいのでは?
・ボディカラーが少ない
外装色はたった6色しか設定されていません。売れ筋になるのはどうせ白・黒、後はせいぜい銀だから、ボディカラーは少なくていいとトヨタは思っているのかもしれませんが、コンパクトカーの
ヴィッツが13色、
iQが12色なのに、はるかに高額なマークXのボディカラーが選べないのは納得いきません。
ちなみに
BMW3シリーズは12色、メルセデスベンツCクラスは11色です。いくらコストダウンのためとはいえ、3シリーズやCクラスよりも台数が売れているであろうマークXのボディカラーが少ないのはどういうことなんでしょうか?
・内装の質感が今一歩?
試乗車の250G“Sパッケージ”はシリーズの中でも内外装をややスポーティに装ったグレードで、黒の内装色が特徴ですが、シート生地などの質感がイマイチ安っぽく、ノア/ヴォクシーなどと大きく変らない気がします。
皮やアルカンターラだから上質というわけではないですが、ファブリックの質感をもう少し向上させていただきたいです。
総評
先代マークXはトヨタの車としては運転感覚がシャープでしたが、新型もその美点を受け継いでいます。この車がクラウンやレクサスIS・GSなどトヨタを代表する高級車とプラットフォームを共用していることや、フロントエンジン・リアドライブの3BOXセダンというコンベンショナルなレイアウトであることなど、運転していて違和感が少なく、トヨタの車の中では楽しく運転できます。
プラットフォームは先代からのキャリーオーバーで、機構的にも特に目新しいところのない保守的なモデルチェンジですが、手堅くまとまっているので新型もコンスタントにボチボチ売れるでしょう。
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