
スズキ乗り的には大注目の新ミディアムセダン・
スズキ キザシに乗ってみました。
グレードは4WD、ボディカラーはプレミアムシルバーメタリックです。
○だった点
・剛性感溢れる走り
ステアリング・アクセルなどの操作系はずっしりとした重さがあり欧州車的、というより欧州車そのものといった印象です。
BMWやメルセデスほどではないですが、VWなどと同等、
プジョーなどラテン系の車よりもしっかりした印象です。
サスペンションにきちんと仕事をさせていて、特にリヤの接地感が高くコーナーでも安心感があります。(ステアリングの特性自体は明確なアンダーステアで、ロール感も結構あります。)
ちなみに後ろから床下を覗くと、強烈にゴッツイアルミのマルチリンク式リアサスペンションのロアアームが見えます。実用セダンとは思えないサスペンションです。
それから細かい話ですが、シフトレバーのマニュアルモードが押してダウン・引いてアップという本格的なスポーティなポジションです。
・出来のよいシート
前後席ともクッションの固さをパートによって変えていて、座面からお尻がズレにくくサポート性が高いです。
私はかなり上体を立ててアップライトに座るのですが、シートの出来が悪い車だとお尻が前にズレてしまい、運転しているうちに猫背になってしまいます。この車のシートはお尻の位置の拘束性が高いので、長時間の運転でも姿勢の変化が少ないでしょう。
また運転席は電動の座面前後独立高さ調節やランバーサポートも装備されていてポジション設定の自由度が高く、自分の好みの運転姿勢を取りやすいです。
リアシートには中央席まで3点式シートベルトと独立調整式ヘッドレストが備わり、左右席のヘッドレストは前後可倒まで可能です。
・個性があるスタイル
このクラスの一般的な日本車に比べ、曲面を多用した情緒的な外観です。また、4,650mmと全長が長くないわりに幅が1,820mmと広いため、塊感・凝縮感がありマッシブです。
最近はミディアムクラスの車でもコスト削減のため、プレスラインをなくして抑揚を減らした車が多い中、キザシは存在感がありとても個性的です。
また
スイフトやSX4との近似性もあり、スズキの車としてのブランドアイディンティティを感じさせます。
・充実した装備
本革パワーシート(運転席電動10ウェイ)、左右独立温度調整式オートエアコン、オートライト、クルーズコントロール、ETC、9エアバッグなど280万円級の車としては装備が充実しています。
本革シートの縫製はダブルステッチで高級感があります。
もう少し頑張って欲しい点
・重さを感じる操作感
長所のところで操作感が重くてしっかりしていると書いたのですが、日本車のミディアムセダンとしては、ステアリング・アクセルなどの操作系が異例に重いです。
アコード、
レガシィなど同クラスのセダンはもちろん
インプレッサWRXや
ランサーエボリューションと比べても重く、感覚としては
BMW3シリーズと同等かなあという印象です。実用セダンとしては、スポーティーというよりもちょっと重過ぎるように思います。
・エンジン騒音がやや大きい
室内に伝わってくるエンジンがやや大きいです。エンジン音が聞こえてくること自体は問題ないのですが、音色をチューニングしているとは言い難い実用車的な音で、なおかつトランスミッションがCVTのため速度とエンジン音が一致せず、加速時に違和感があります。
試乗の際は7~8%程度の勾配が連続するコースを走ったのですが、いかにもCVTという音を発してちょっとがっかりしました。コンパクトカーや軽なら許されるかもしれませんが、Dセグメントの車ではちょっと問題ありです。
コスト面で厳しかったと思いますが、6~8速の多段トルコンATがあれば、この車の良さが際立ったのに…と思うと残念です。
・後席頭上空間が狭い
後席の頭上空間は身長175センチの私が座って握りこぶしが入らないぐらい、側頭部は手の平が入らないぐらいと、空間的な余裕がありません。(先日試乗した
マークXとほぼ同等)
ミニバンに慣れた目で見るとかなり厳しいですね。
・スズキの車であること(爆)
スズキに対する市場からのイメージは軽自動車のメーカーであり、どんなにかっこよくても、どんなに走りが良くても、スズキの普通車はせいぜい
スイフトのようなコンパクトカーまでで、キザシのような2.4Lの車は日本国内では売れないでしょう。
この車がもしトヨタのプレミオか
カムリ、アベンシスであればはるかに売れているでしょうし、トヨタに対する評価も上がるでしょう。
総評
以前は軽自動車に毛が生えた程度のクオリティ・デザイン・走りだったスズキの普通車は、2004年の現行スイフト登場以降、全く様相を変えました。運転の楽しさを打ち出し、またデザインも日本の田舎や発展途上国だけではなく、欧州などでも通用する洗練されたものになりました。
余談ですが、現行
スイフトの登場時、私は「どうせちょっとかっこをよくしただけの安物車だろ、しょせんスズキだし…」と思っていたのですが、購入前に試乗してその走りの楽しさや出来のよさに衝撃を受けて購入に至りました。
キザシはその流れを受けて上級移行を果たし、北米や欧州・新興国など国際市場で、
ホンダアコードやVWパサートなどDセグメントの強豪にぶつけていこうという車です。だから根本的に日本国内で売ろうという考えはスズキにはないようで、完全に受注生産となります。
また、テレビCM等の販促もほとんどなく、カタログも
スイフトよりも薄く紙質も良くない15ページのペランペランなものです。
日本国内では相変わらずのセダン冬の時代なのでやむを得ないとは思いますが、これだけの実力のある車が広く知られずに終わるのかと思うと残念です。現行
スイフトのように、時間が経つにつれ良さが理解されるという車もありますが、もう少し自信を持って売っていっても良いのではないでしょうか。
車の実力や装備等、内容を考えると決して高くないのですが、それでも今日日300万円近い車にはなかなか手を出しにくいでしょう。
また、おそらくリセールバリューは相当悪いと思われるので、本当にこの車が欲しいという方は急いで買うよりも、現在ディーラーにある試乗車が中古として出回るのを待てば、新車の半値近くで買えるのではないでしょうか。
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新車試乗記 スズキ編 | 日記
Posted at
2009/11/23 19:43:27