
新型
エルグランドに乗ってきました。
グレードは350ハイウェイスタープレミアム(2WD)、ボディカラーはオーロラモーヴです。
○だった点
・FF化したこと
新型エルグランドの大きなトピックといえば、この車の先祖であるキャラバンコーチ/ホーミーコーチ以来連綿と続いてきた後輪駆動レイアウトを捨て、ついに前輪駆動化されたことでしょう。
ライバルの
アルファード/
ヴェルファイアの影響や、2011年から発売される日産の北米専売車・クエストとのプラットフォーム共有化などが主な理由です。
先代は車高が高かったのですが、床下の駆動系機器類の影響でフロア高も高く、「よっこらしょ」という感じで乗り込むような高さでした。
新型は前輪駆動化によって床が低くなり乗り降りがし易くなりました。これは家族で乗る機会も多いミニバンとして非常に重要なことだと思います。
・マルチリンク式リアサスペンションによる良好な乗り心地
最近は大衆車だけではなく
アルファードなど大型ミニバンでも、コストダウンや室内スペースの確保などの点からトーションビーム式リアサスペンションが採用される例が多くなっていますが、新型エルグランドはマルチリンク式のリアサスペンションです。
コストが余分に掛かるにも関わらずマルチリンク式を採用していることで、大型高級ミニバンらしいしっとり落ち着いた、フラットライドな乗り味を実現しています。
直接のライバルである
アルファード/
ヴェルファイアが、トーションビーム丸出しのコツコツポコポコした乗り心地であるのに比べ、エルグランドは明らかに乗り心地が良いです。
先代E51系と比べても、どこかトラックベースを思わせる、バネ下の重い感じのドタドタモッサリした走りだったE51系に対し、新型は乗用車らしい高級感のある乗り味に進化しています。
もう少し頑張ってほしい点
・少し狭い3列目と荷室
全長4915mm×全幅1850mmの堂々たる外寸ですが、そのわりには室内は広くありません。特に3列目シートの空間と荷室スペースは、格下のセレナよりも小さいのではないかと思えます。
絶対的には狭くありませんが、
アルファード/
ヴェルファイアには劣っている点です。
・FF化したこと
長所でFF化したことと書いたのですが、逆に残念な点でもあると感じます。
私個人としては、本当に高級な車はやはり後輪駆動でなければならないと思うのですが、新型エルグランドはライバルの
アルファード/
ヴェルファイアの影響で先代までの後輪駆動を捨ててしまいました。
前輪駆動であると前軸荷重が過大になり、鈍重なハンドリングになりがちだったり、アクセル開度によるセルフアライニングトルクの変動とあまり高級車らしくない動きが出がちです。
アルファード/
ヴェルファイアとの差別化のためにも後輪駆動にこだわってもよかったのではないかと思います。
日産にはフーガや
スカイライン用の後輪駆動プラットフォームがあるのですから、それを流用できなかったのでしょうか。
・2.5Lの4気筒化
先代の途中で追加された2.5Lですが、先代はVQ25DE型6気筒エンジンだったのに、新型は4気筒のQR25DE型エンジンになりました。エンジン単体重量の軽減、フリクションの軽減、実用域での性能等を考慮すれば4気筒化は避けられないのでしょうけど、高級ミニバンならば6気筒にこだわってほしかったです。
今回は残念ながら2.5Lに乗ることができませんでしたが、機会があれば試乗してみたいです。
・何かに似てる外観
外観デザインはこれまでのエルグランドと雰囲気を変えてきたのですが、結果的に他車、具体的に言うとホンダのエリシオンプレステージに似てしまいました。
このクラスの車に求められる貫禄を表現しようとするとデザインテイストが似てくるのでしょうけど、これまでのエルグランドが独自性のあるデザインだっただけにちょっと残念です。
・エアロ仕様偏重のラインナップ
最下級グレードの250XL以外はハイウェイスター、ライダーなど派手なエアロ付きの仕様です。確かにカッコはいいのですが、ユーザー層を限定してしまうような気がします。
ハイウェイスターは確かに売れ筋だったと思いますが、E51系はそんなに標準車は売れてませんでしたっけ???
ライバルの
アルファード/
ヴェルファイアはラインナップの半数以上がエアロなしのグレードなので、もう少しハイウェイスター以外のベーシックな外観のグレードを拡充してもよいのではないでしょうか。
・ボディカラーの選択肢が少ない
ボディカラーのバリエーションはたった5色しかありません。上級車ならばもっと選択肢を持たせるべきではないでしょうか。
・低い販売目標
これはエルグランドの車自体には関係ないのですが…
この車の報道向け発表会で日産の志賀俊之COOはこのクラスのミニバンのトップを取りたいと語りましたが、そのわりには月販目標台数は1900台と
アルファード/
ヴェルファイア連合の販売実績(2010年1~6月平均8,539台)の2割強という低い目標です。
どうも最近の日産の車は、販売台数の目標を低く設定しておいて、目標の○倍受注した!絶好調だ!と喜んでいることが多いように思いますが、いかがなものかと思います。
総評
8年振りのモデルチェンジだけに、先代からは走りや使い勝手を中心に大幅に進化しています。フラッグシップミニバンらしく充実した装備と広大な室内空間、さらに新型になってから内外装等の造りが良くなり、また先代ではどこかトラック的で粗さがあった乗り心地や静粛性が飛躍的に改善されています。
アルファード/
ヴェルファイアと比較しても遜色はなく、むしろ乗り心地など快適性では上回っており、買って損はない車です。
先々代E50系エルグランドの時代には、販売面で当時のトヨタのライバルであったグランビアを圧倒していました。モデルライフの途中でグランビアが大幅マイナーチェンジして威圧的な外観デザインになったり、兄弟車のグランドハイエースを追加したりしてエルグランド追撃に必死でしたが、結局エルグランドの牙城を崩すことができませんでした。
ところが2002年にトヨタが満を持して
アルファードを発売してから立場が完全に逆転して、エルグランドが後塵を拝することになってしまい、エルグランドは2.5Lを追加するなどして対抗しましたが、結局
アルファードに販売台数で圧倒的な差を付けられてしまいました。
新型エルグランドは先代よりも造り込まれて出来が良くなっているうえ、ライバル車の一台であったホンダエリシオンが生産中止となり、大型ミニバンマーケットがエルグランドと
アルファード/
ヴェルファイアの寡占状態になるため、新型エルグランドは先代よりも販売面では盛り返してくるでしょう。
ただ、ライバルの
アルファード/
ヴェルファイアの影響を大きく受けて、前輪駆動化・2.5Lは4気筒化と、ちょっと安っぽくなったような印象は否めません。
「
アルファード/
ヴェルファイアは大衆車と同じ前輪駆動・4気筒ですが、エルグランドは高級車と同じ後輪駆動・6気筒ですよ!」という売り方をすれば、
アルファード/
ヴェルファイアよりも上級なイメージを得ることもできたのに…と思います。
また、どうせ前輪駆動・4気筒化してコストダウンを図るなら、価格をもう少し下げるべきではなかったかと思います。
最下級グレードの250XLの価格は307.65万円ですが、
アルファード/
ヴェルファイアの最低グレード(300万円)よりも高いです。298万円ぐらいにするとインパクトがあってよかったのにと思います。
これらの点に、やっぱり日産はつくづく商売が下手だなあと感じます。
ともあれ、車の出来自体は十分満足いくものだと思います。先代、先々代エルグランドからの買い替えやセレナ等からのステップアップ、セダンからの買い替えでも満足度は高いのではないでしょうか。
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