
トヨタのコンパクトミニバン・
シエンタに乗ってみました。グレードはDICE(ダイス)、ボディカラーはボルドーマイカメタリックです。
シエンタのデビューは2003年、なんで今さら新車試乗記かというと、この車一度販売が終了していたのですが、今年5月にマイナーチェンジすると同時に再発売されました。今までシエンタの試乗記は書いてなかったので、良い機会なので書いてみようと思います。
○だった点
・コンパクトなのに7人乗れるパッケージング
全長4.1m、全幅は1.7m未満とコンパクトなサイズですが、大人が7人乗ることができます。(ちなみにコンパクトカーで全長4.1mといえば、日産ノート、三菱コルトプラスに近く、同じようなコンパクト3列シートのホンダフリードより10cm以上短い)
全高を1670mmと高くすることにより乗員をアップライトに座らせ、前後方向の余裕のなさを補うパッケージングです。苦肉の策のようなパッケージングですが、これによって室内空間を有効に利用できているだけでなく、ドライバーが正しい姿勢で運転することができ、車両周囲の状況確認もしやすくなっています。
空間的無駄を少なくして、なおかつ真面目な自動車として成立するパッケージングになっていることは素晴らしいですね。
・取り回しの良さ
シエンタの最大の美点はここだと思います。車体サイズが小さいうえに、前後左右のウインドゥ下端見切りが低く、車両の周りの死角が少ないです。さらにドライバーの視点からボンネットが見えるので、狭いところや駐車場などで、車両の前端の感覚がつかみやすくて非常に取り回しがしやすいです。ファミリーのための車というイメージがあり、主婦など女性が運転する機会も多いミニバンですが、たいていの車はボンネットが見えず、取り回しが悪いのではないかという懸念があります。スタイル重視で車両直近の死角が大きい車も多い中、シエンタは使う人のことを考えて設計されているなと思います。
・後席スライドドア
本来であれば2008年発売の、同じトヨタのコンパクトミニバン・パッソセッテがシエンタの後継モデルになるはずだったと言われますが、セッテはスライドドアでなかった点がユーザーに好まれなかったのか、販売台数が思わぬ低迷し、シエンタの併売→再発売という結果になってしまいました。
子供がいる立場で申し上げると、ミニバンのリヤドアはスライドドアの方が圧倒的にありがたいです!乗降の際に子供が急にドアを開けたり、狭いところで子供のチャイルドシートを装着しているときに隣の車にぶつからないか気を使わなくて済む等、子供連れでの移動が楽です。以前は重いスライドドアに子供が指を挟むのではないかと心配でしたが、最近は電動スライドドアやイージークローザーの普及でその懸念もなくなりました。
・DICEの追加
今回のマイナーチェンジ&再登場と同時に新グレード「DICE(ダイス)」が追加されました。シエンタといえば、真ん丸のヘッドライトに丸みを帯びたスタイル、クリームイエローやライトグリーン、ライトブルーなどかわいらしいボディカラーなど、どちらかと言えば女性を意識した外観で、男性が乗るにはやや抵抗があるかなという感じでした。
DICEは標準シエンタの特徴だった丸型ヘッドライトから角型ヘッドライトに変わり、男性でもあまり抵抗感のない外観になりました。また、フロント左右フェンダーパネルは標準車と共通のようですが、交換パーツを最低限でイメージを変えることにも成功していますね。
気になった点
・VSCが選べないグレードが多い
最近普及が進む横滑り防止装置(VSC)ですが、最も高価格なGグレード以外、オプションでも選ぶことができないのは、メーカーの意識が低いと言わざるを得ません。今回の再登場の目玉グレード・DICEでも選べないのは意外です。
シエンタのように、背が高くて幅が狭いコンパクトミニバンは決して動的性能が高いとは言えません。その上、もともと軽い車に多人数乗車することにより、運動性能が大きく変化することは否定できません。同じ7人乗りミニバンで軽量級のシエンタと重量級のアルファードを比べてみると・・・
車両重量 車両総重量 増加率
シエンタ X"Lパッケージ" 1200kg 1605kg 31.6%
アルファード350G"Lパッケージ" 2030kg 2415kg 19.0%
※車両総重量とは定員乗車(7人)した状態の重量
つまり、元々の車重の軽いシエンタの方が車に対する負荷が大きく、運動性能の変化する度合いが大きくなり、走りにくく・止まりにくく・曲がりにくくなりがちです。そういった点を補うために安全装備の充実は重要だと思うのですが・・・
・古臭いCVTの制御
先日
カローラアクシオの試乗記でも同様のことを書いたのですが、エンジン回転数と速度の上昇が一致せず、アクセルを踏み込むと「ぶぅぅぅぅ
うえええぇぇぇぇぇ」とエンジン音だけが高まっていきます。いかにも一昔前のCVTを感じさせます。巡航時は車格の割に静粛性が高いので、余計加速時のエンジン音が気になります。
・燃費計が超小さい
近年登場する車は環境志向の高まりを受けて、どれも燃費計や低燃費運転のアシストモニターを装着していますが、シエンタの燃費計はオド/トリップメーターと同じところに切り替え式のごく小さいものが装備されています。最新の車、例えば
マツダデミオのドライビングアシストモニター「i-DM」等に比べると、機能・視認性ともいかにも物足りません。こういうところに設計年時の古さを感じさせられますね。
総評
2003年発売と決して新しい車とはいえないシエンタですが、再びマイナーチェンジされて発売されました。上記の通り、ここに至るまでは結構紆余曲折で、トヨタとしては2008年登場したパッソセッテをシエンタの後継モデルと考えていたようです。ところがセッテの思わぬ販売不振で、シエンタは長らくセッテと併売、昨年一度販売を終了したあと、今回マイナーチェンジして再登場となりました。
セッテの不振は、スライドドアではない、名前に「パッソ」が付いてミニバンらしくないなど言われていますが、根本的にミニバンとして必要なこと、すなわち室内の広さ・使い勝手など、シエンタの方がよく考えて設計されていて優れているなぁという印象は否めません。
トヨタとしてはより低価格・低コストなセッテを売りたかったんでしょうが、ユーザーはダマされなかったというか、より良いものを見抜く目を持っていたということでしょう。シエンタのベースは初代ヴィッツで、上記の通りCVTの制御や燃費計、それから内装の質感など、設計の古さを感じる部分もありますが、広い室内、真っ当なドライビングポジション、取り回しの良さなど今でも魅力のある車です。
シエンタの同クラスのライバル車といえばホンダのフリードですが、シエンタの購入を検討されている方はフリードとの比較をお勧めいたします。シエンタはよく出来ている車ですが、それでも上記の通り各所に設計の古さを感じる部分が散見され、フリードに比べると古い車であることを痛感させられます。車両価格もあまり変わりません。フリードにはハイブリッドの登場も噂されていますし、特に急ぎでなければフリードハイブリッドを見てから検討された方がいいでしょう。
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新車試乗記 レクサス・トヨタ編 | 日記
Posted at
2011/08/16 21:27:55