
ついにというかやっとというか、NC型ロードスターに乗ってきました。試乗車のグレードはリトラクタブルハードトップ(RHT)のRS(6MT)です。
NCに乗るのは2005年の発売時、2006年のRHT登場時以来3度目です。
NCがデビューしてもう2年以上が経ちますが、ミニバン、コンパクトカー、軽全盛の時代にあって貴重な本格的国産スポーツカーであり続けています。
3ナンバー幅になったこと、排気量が2,000㏄になり、ライトウエイトスポーツカーとしては排気量が大きすぎることなどに対して批判はありましたが、このご時世、ロードスターのようなコンパクト・オープンスポーツカーはそこにあるだけで、存在しているだけでよいではないか、という気持ちになってきます。
ドライブフィールについては語りつくされたことですが、自分の意思どおりに走り、曲がり、止まる、とても気持ちいい車です。四季を感じて走るオープンの爽快さ、コンパクトなボディサイズ、扱い切れるエンジン性能、軽快なシャシー特性など、本当に運転の魅力あふれる車です。
ただし、残念ながらNA、NBの時代から感じていた悪い点が依然として改善されていない部分も散見されます。ロードスターは根強いファンの多い車で(私もそうですが)、悪い部分でも「馬鹿な子ほどかわいい」っていう感じで許してしまっている傾向があるように思いますが、それがこの車の進化を止めてしまっているようにも思います。
資金力に余裕のあるトヨタのような巨大メーカーでなく、マツダがこのような本格的スポーツカーをずっと作り続けていることは賞賛に値するのですが、スポーツカーを理解しているマツダだからこそ、なぜこのような低い妥協点なのかと残念に思える部分もあります。
正直言ってごく一部の点においては、コペンにもリードを許しているのではないかと思われる点もあります。
ロードスターが好きだからこそあえてそういった部分を指摘し、苦言を呈していきたいと思います。
○だった点
・相変わらず「ロードスター」であること
私はNA6、NB8に通算で7年近く乗ってきたのですが、NCは乗った瞬間「あ、ロードスターだ」と感じさせるもの、例えばドライビングポジションやハンドリング、性能と実用性の両立など、過去のロードスターと共通する要素を持っています。
ボディサイズが拡大し、エンジンの排気量が2,000㏄になりましたが、この車は依然として、紛れもなく「ロードスター」です。この独特の存在感をいつまでも保ち続けて欲しいものです。
・高速でのスタビリティーの改善
ワインディングでの軽快な操縦性はそのままに、高速道路での安定性も兼ね備えており、ハンドルに手を添えているだけでビシッと直進していきます。ショートホイールベースの後輪駆動車としては、かなり高いレベルにまとめたと思います。
NA6の時にはヒラヒラしたハンドリングと引き換えに高速での直進性は悪く、特にノーマル車高、ノーマルタイヤだとかなりフラフラしていたのですが、それと比べると隔世の感があります。
・ステアリングの剛性感
NBではNAをベースにエアバッグを装着したせいか、ステアリングコラム、シャフトに剛性感がなく、なんとなくワナワナとして頼りない感じがありました。
NCはチルトステアリングが新たに備わったにもかかわらず、ステアリング周りの剛性感がNB以前より増してしっかりした印象です。
・実用性の高いRHT
パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)は、開閉に要する時間が短く、気軽にオープンにすることができ、またクローズドボディ並みの快適性を兼ね備えています。
さらに、多くの電動ハードトップオープン車が、オープン時のトランク容量が壊滅的になるのに対し、ロードスターはソフトトップ車と同等のトランク用量を確保しています。こういった点にマツダのオープンカーに対する経験の深さを感じます。
今回の私の購入のターゲットはソフトトップのRSなのですが、NB時代の幌の劣化状況や、(私は経験がないのですが)幌を切られるイタズラに対する強さを考えると、RHTもかなり魅力的です。
いまひとつだった点
・ガサツなエンジンフィール
これは悪い方に相変わらずですが、エンジンフィールは依然としてガサツな感じです。B6、BPエンジンの頃と変わらないガサガサした音と、無理やり回っているような高回転で、回して楽しいエンジンではありません。
正直言って、サーキットなどでインテグラやシビックのタイプRの後にこの車に乗るとがっかりします。
エンジン本体や吸排気系などのアフターパーツが豊富なので、チューニングによって改善はするのでしょうが(以前乗っていたNA、NBともエキマニ、マフラーを交換して、フィーリングが激変しました。)、もう少しノーマル状態でのフィーリングの向上、サウンドのチューニングは行ってもよいのではないでしょうか。
排気音については実用車そのものといった全く高揚感のない音です。これについては、軽自動車ながら官能性を演出しようとする努力をしているダイハツコペンの圧勝です。
また、エンジンパワーも必要十分ではあるのですが、ホンダS2000が2Lで250馬力であったことを考えると、ロードスターの2L170馬力は物足りない気がします。「ロードスターは馬力を云々する車ではない」という意見もあると思いますが、NB末期にはターボが登場したり、NCでの排気量アップなど、パワー志向も垣間見えます。パワーを求めていくのか、それとも小排気量のよく回る楽しいエンジンを積むのか、メーカーには方向性をもっと明確にしていただきたいです。
・シートの出来が悪い
これも悪い方に相変わらずですが、シート自体の出来が悪く、すぐに腰やお尻が痛くなります。この車のオーナーは比較的年齢の高い方も多いはずですが、このシートに座ることが苦痛ではないのでしょうか。
あと、ポジションもやや高く、サポート性も悪いです。
NA、NBに乗っていたときは、どちらもブリッドのフルバケにしていたのですが、これの方がはるかに疲れにくかったです。
・RHTのトップのガタつき?
個体差かもしれませんが、試乗車のRHTは大きめのギャップを乗り越えたときに軋み音がしていました。これから走行距離を重ねて車体がヤレていったときに、ソフトトップよりRHTの方が軋み音や雨漏りが発生しやすいのではないかという懸念があります。(私はサーキット走行もする予定なので、買うとすればRHTではなくあえてソフトトップ+ロールバーにするつもりです。)
・ブレーキペダルとアクセルペダルの段差が大きい
NA、NBよりもアクセルペダルとブレーキペダルの間の段差が大きく、ブレーキをかなり強く踏み込んだときでもまだアクセルペダルが奥にあり、ヒールアンドトーがやりにくいです。ドライビングが楽しい車なのですから、こういう部分の詰めをもう少ししていただきたいものです。
・テレスコピックが欲しい
NBでも感じていたことですが、ペダルを適切なポジションに合わせるとステアリングが近すぎます。チルトだけでなく、テレスコピックも欲しいです。
・NR-Aに6速MTを
豪華装備は不要かつタイヤ、ホイール、足回り等は交換する予定なので、グレードはNR-Aにしたいと考えていましたが、NR-Aには6速MTがなく、やむなくRSをターゲットとしました。NR-Aに6速MTを設定するか、性能を据え置いて装備を簡略化したグレードを設定していただきたいです。
・ディーラー・セールスがダメ
これはロードスターそのものの問題ではないのですが、マツダは車そのものがよくてもディーラーが悪いです。正直私の地元のマツダディーラーでまともなセールスに当たったことがありません。
商品知識や言葉遣い、態度などトヨタのセールスに比べると数段下で、正直値引きに頼った売り方しかできないのかと思ってしまいます。
ロードスターは趣味の車なのですから、別にマニア的な知識を持っている必要はありませんが、RSにATの設定がないことぐらいは知っておいていただきたかったです。(笑)
あと、今回商談したセールスに商談した際、RSにNR-A用のロールバーを納車時に装着することができるか、工賃、部品代がいくらか連絡をくれと頼んであるのですが、いまだに連絡が来ません。
いくらメーカーがロードスターに心血を注いで作っても、営業がこの程度ではがっかりです。
総評
と、なんのかんの言ってきましたが、やっぱりロードスターは相変わらず楽しいです。ただ、現在の自分のライフスタイルに照らすと、ハイオク仕様になってしまってガソリン代がかかること、ついついいじりたくなって(というか、いじらざるを得ない部分がある)あとでお金がかかりそうなことを考えると、今回はロードスター購入は見送りかも。
じいさんになったときの楽しみに取っておくかな。
欲しい度:☆☆☆☆☆☆☆★★★
楽しい度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
買える度:☆☆☆☆☆☆★★★★
維持費 :☆☆☆☆☆☆★★★★