
先日登場したマツダの背高ミニバン・ビアンテに乗ってきました。
試乗車は2Lエンジンの上級グレード・20Sで、両側パワースライドドアなどがオプション装備されて約260万円の仕様、ボディカラーはブリリアントブラックです。
3年前に生産を終了したボンゴフレンディ以来、久しぶりのマツダ製背高ミニバンで、この車の登場を待っていたフレンディオーナーも多いそうですね。
フレンディの頃の質実剛健・シンプルさとは打って変わって、歌舞伎の隈取りのような派手なフロントデザインなど、売ることを意識した車となっていますが、フレンディの持っていた道具っぽさが失われたように感じられます。
フレンディが10年近くモデルチェンジされず店晒しになっていた間、他メーカーのミニバンは圧倒的な進化を遂げました。せっかくオートフリートップのようなユニークな装備や、5ナンバーサイズながら最大限の室内空間を確保していたことなど、フレンディで持っていたマツダのミニバンに関するアドバンテージは全くなくなってしまい、結果的にビアンテが他社の後追い的な車になってしまったのは残念です。
最近登場する各社のミニバンは、派手で威圧的な外観デザインに、あれもこれも装備が付いている車が多かったので、マツダのミニバンとしてはそのような車と一線を画した合理的な車を期待したのですが・・・
○だった点
・左右・後方の視界のよさ
左右・後部ウインドウの下端位置が低く、車両直近の見切りが良好で安全性が高いです。最近はクリアランスソナーやカメラを備える車も多いのですが、直接目視による視界がよいことは安全面で非常に重要なことです。
また、窓の面積が大きく見晴らしがよいので、後席に座る子供も喜ぶでしょう。
・しっかりしたハンドリングとボディ剛性感の高さ
プラットホームをアクセラと共通することからも伺える通り、マツダの車らしくハンドリング性能が優れています。背が高いので無理はできませんが、それでもノア/ヴォクシー、セレナのように運転していると単なる作業をしているような気がしてくる、という印象はなく運転を楽しめます。ステアリングは適度に重く、電動ポンプを用いた油圧式パワーステアリングならではの自然なステアフィールです。
背の高さにもかかわらず路面のギャップで煽られるような印象もなく、同乗者にとっても安心感があります。
・室内の静粛性の高さ
一定速で巡航しているときの室内は静かで、不快なこもり音やロードノイズも少なく快適です。このぐらいの静かさなら、前後席での会話にも問題ないでしょう。
・7・8人乗りの選択で迷わないで済む
この車の2列目シートはMPV譲りの、横方向にスライドさせることにより8人乗りベンチシートにも7人乗りキャプテンシートにもなるタイプです。7人or8人乗りが設定されているミニバンはどちらにするか迷う方が多いそうですが、これなら悩まずにすむでしょうね。
特に、今は小さい子供がいてチャイルドシートを2列目に装着するので、キャプテンシート仕様がいいが、大きくなってきたらベンチシート仕様の方がいいという方にはぴったりではないでしょうか。
いまひとつだった点
・フロントの見切りの悪さ
左右・後方の視界はいいのですが、前方はシートリフターを最上まで上げてもボンネットが全く見えず、見切りが非常に悪いです。
その上この車は同クラスの他社に比べボンネットがやや長いので、余計取り回しに気を遣います。
・重さを感じる動力性能
試乗車は2Lエンジン搭載の20Sでした。街中を普通に走っている限りではまずまず軽快な動力性能ですが、7~8%程度の勾配が連続する道だと途端にエンジン回転数が高まり、やや苦しげです。2.3Lエンジンなら元気に走るのかもしれませんが・・・
ノア/ヴォクシーと比べ同等グレード比で約50キロ程度車重が重いことが災いしているのでしょうが、2Lでも軽快に走るノア/ヴォクシーに比べて、動力性能は劣っていますね。
・決まらないドライビングポジション
フロントの見切りの悪さと関連しますが、できるだけ車の直前の視界を得ようと運転席シートリフターを上げていくと、今度はペダルに足が届きにくくなります。(私は身長175センチ)また、シートの前後スライド量やステアリングのチルト&テレスコピック量も不足気味で、ドラポジがしっくりきません。
「まずは低床ありき」で、ドライバーに正しい運転姿勢をとらせようとすることが後回しになっている印象です。
・やや煩雑なシートアレンジ
このクラスのミニバンの多くは3列目シートを折りたたんで、分割してサイドに跳ね上げる方式を採用していますが、ビアンテは3列目シート左右を一体としてスライド量を長くし、座面を跳ね上げることによって2列目シートのスライド量を確保しています。
しかしこの方式は3列目シート上に無駄な空間ができ荷室を広げきることができません。さらに後席シートベルト着用義務化の影響を受け、2列目シートがシートベルトを正しく装着できる位置でしかスライドを固定できず、結果的に室内空間アレンジがかなり制限されます。これならば無理に2列目ロングスライドにこだわる必要はなかったのでは?と感じます。
ノア・ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンとの違いを打ち出すことはできていますが、単に「違うんだ」というアピールに終始して、本当にユーザーの使い勝手を考えていたのか疑問に思います。
・ボディサイズの大きさと室内空間設計のツメの甘さ
CMで「最広(サイコー)」と同クラス最大の室内空間をアピールしていますが、実感としてはノア/ヴォクシー、セレナと大差ありません。この程度の室内空間ならば、なぜボディ外寸を5ナンバーサイズにしなかったのでしょうか?衝突安全のためにボディサイズを拡大したのかもしれませんが、5ナンバーサイズながらJNCAPの衝突テスト結果で前面・側面衝突の数値とも6スターを獲得しているステップワゴンの数値を上回らなければ、何のためのサイズ拡大かということになりそうですね。
室内空間については、2列目シートのスライド量をよく考えないと3列目の足元空間の余裕が少なくなります。フリードのように、3列目の空間を重視しすぎたあまり2列目の余裕がないというよりはいいのですが・・・
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新車試乗記 マツダ編 | 日記
Posted at
2008/07/12 21:13:48