新型ランドクルーザープラドに乗ってみました。
試乗車のグレードは2.7Lの豪華装備グレードのTX“Lパッケージ”(4速オートマチック)、ボディカラーはホワイトパールクリスタルシャインです。
○だった点
・ボディサイズの割りに取り回しが良い
全長4,760mm、全幅1,885mmの大柄なサイズですが、角張ったデザインや比較的アップライトな運転姿勢を取れることにより車両感覚が掴みやすいです。
それにサイズの割りにはハンドルがよく切れて最小回転半径が小さいので、思いの外取り回し性は良好です。
・乗用車的な滑らかな乗り味
プラドクラスの大型四輪駆動車といえば、脚と上屋がバラバラのゆらゆらした動きをしたり、バネ下重量の大きさ故、ギャップで強い突き上げがあったりと、常に車重やマスの大きさを感じさせられましたが、プラドの街乗りはきわめて快適な乗り心地です。
・使い勝手のいいサードシート&荷室
サードシートは床下収納式となっていますが、これによってフラットな床面が実現できています。またサードシートをサイドに跳ね上げると窓を塞いでしまい死角になってしまうのですが、床下収納だとそれがありません。
(ただしその分床面がやや高く、女性や小柄な人、重量物の積み降ろしはやや難儀しそうです。)
もう少し頑張ってほしい点
・ディーゼルエンジンが欲しい
先代に引き続きガソリンエンジンのみのラインナップです。ひと昔前に比べ大排気量ガソリンエンジンの燃費は飛躍的に向上しましたが、それでも燃費や燃料費の面からディーゼルエンジンが有利ですし、こういった四輪駆動車にとっては泥ねい路走行等での極低速トルクの太いディーゼルは欠かせないのではないかと思うのですが…
・エンジンパワーがもう少し欲しい!
ガソリンエンジンは2.7Lの2TR-FE型と4Lの1GR-FE型の二種類ですが、今回試乗した2.7Lはもう少しエンジンパワーが欲しいです。平坦路なら問題ないのですが、7~8%程度の勾配だと途端に苦しげになります。
私は仕事でよく同じ2TR-FEエンジンを搭載したハイエースバン(スーパーロング・ワイド・ハイルーフ)に乗ります。
ハイエース…車重:2,170kg、エンジンパワー:150PS、パワーウエイトレシオ:14.47kg/PS
プラド…車重:2,090kg、エンジンパワー:163PS、パワーウエイトレシオ:12.82kg/PS
…ですが、ハイエースよりもなんだかドン臭いです。
おそらくよりもこの2.7Lが販売の主力になると思われますが、このエンジンパワーではとても高級SUVとは言えませんね。
ちなみに形式こそハイエースと同じですが、エンジンフィールはプラドの方が遥かに洗練されています。
・先代までに比べて掴みづらい車両感覚
先代120系、先々代90系は四輪駆動車らしいアップライトなドライビングポジションと高い全高により、街乗りでも車両感覚が掴みやすかったのですが、新型はウエストラインが高くて側方の死角が大きいです。
試乗車にはサンルーフが装着されていたのですが、そのせいもあって室内高が低く、側方の死角を補おうとシート座面高を上げると私の身長(175cm)では頭上に握りこぶし縦一個分程度しかなくなります。
余談ですが、新型プラドは先代まで兄弟車として存在したハイラックスサーフを吸収する形となりましたが、歴代ハイラックスサーフの四輪駆動車としては問題のあるドライビングポジション(乗用車的に脚を前に投げ出して座るポジションのため、車の直近の様子が見えにくく、サイドウインドウの天地が低いので、さらに見づらい)をそのまま真似をしているのかと思ってしまいます。このようなポジションしか取れないのは、四輪駆動車としていかがなものかと思います。
・今時4速オートマチック
4Lは5速ですが、2.7Lは今時4速オートマチックです。上記のとおりエンジンパワーが厳しく、登り坂ではキックダウンを多用せざるを得ないのですが、そういう状況でもシフトショックが大きく、キックダウンしていきなり騒音が大きくなります。
シフトダウン時のショックはほとんどなくスムーズなのですが、やはりパワーのないエンジンだからこそ多段化して限られたエンジンパワーを有効に使うべきだと思います。
総評
ここ最近の環境意識の高まりの中、プラドのような大型四輪駆動車を発売するのはいかがなものかという意見がトヨタ社内でもあったようですが、需要があるものを生産するのが自動車メーカーの仕事であり、そもそもプラドは世界中で年間15万台以上が販売されているそうで、これをなくしてしまうのはちょっと問題があるでしょう。
新型は先代までに比べ、オンロードでの快適性は劇的に向上しています。四輪駆動車とはいえ、プラドは荒地に乗り入れることを想定した本格四駆ではなく、SUV的色合いの強い車なので、オンでの快適性にますます軸足を移さざるを得ないのでしょう。
短時間での試乗のためオフでの性能は試すことはできませんでしたが、正直本格四駆としての性能は期待しないほうがいいのでしょう。
それにしても、本文でも書いたのですが、四駆らしからぬドライビングポジションはちょっといただけません。
先代までは兄弟車としてハイラックスサーフという車が存在しましたが、このサーフという車、基本的にボンネットピックアップをベースとしたアメリカ偏重の車でした。それ故四駆としてはかなり乗用車的な周囲の状況を掴みづらいポジションで、道路や駐車場の広い北米なら許されても、日本国内で使うにはいかがなものかという車でした。
今回そのサーフが日本国内ではなくなり、プラドに吸収される形となりましたが、問題のあるドライビングポジションまで引き継ぐ必要はなかったのではないかと思います。
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