
注目の
新型ステップワゴンに乗ってきました。
グレードは売れ筋になるであろうG・Lパッケージ、ボディカラーはプレミアムヒダマリアイボリー・パールです。
暗くなってから携帯カメラで撮ったので、写真がブレてて申し訳ないです。
○だった点
・3列目シートの収納
新型ステップワゴンの特徴のひとつが、3列目シートの収納方法です。折りたたんで床下に収納することができ、その上収納状態でも床面が低くかつフラットです。その上操作方法も簡単で軽いので、主婦など女性の方でも簡単に扱えると思います。
ノア/ヴォクシーなどは3列目シートがサイドに跳ね上げ式ですが、これだとサイドウインドウを塞いで死角が増えてしまいますが、ステップワゴンの方式は視界の良さと荷室スペースの確保を両立させていて素晴らしいですね。
・室内空間の拡大
先代RG型は個性的な外観デザインだった反面室内空間が犠牲にされており、特に2列目・3列目の足元空間や3列目の頭上空間などは決して広いとはいえませんでしたが、新型は文句なしクラス最大級の広さです。
・視界のよさ
最近の車はミニバンであってもとかくウエストラインが高くて側窓が小さく、かつピラーが太いため視界が悪い車が多い中、新型ステップワゴンは非常に窓が大きくて視界が良好です。窓面積だけでなく、ウインドウ下端部が低くて車の直近の死角が少なく運転していて安心感があります。
最近はバックモニターやサイドブラインドモニター、パークアシストなど視界を確保して運転を補助する装置が装備されることが多いですが、車を運転する上で大事なのはドライバーによる直接目視での確認のしやすさであり、これをきちんと確保していることはファミリーカーとして非常に重要なことです。
・サイドビューサポートミラー
上記の視界のよさにも関連するのですが、新型ステップワゴンの特徴的な装備「サイドビューサポートミラー」は非常に有効です。
これは左側ドアミラー本体の付け根付近に前向きのミラーがあり、それに映し出された像を今度は室内左Aピラー下端に設置された別のミラーで映し出すというものです。原理は合わせ鏡を利用した非常に単純なものですが、左前輪付近のかなり広範囲が映し出されており、像のゆがみも少ないです。
最近のミニバンやSUVには車の左前輪付近や直前の死角を減らすためのキノコ型ミラーが装備されているものが多いですが、これは不恰好な上、映し出す範囲が小さくかつゆがみが多いため、何が映っているのか、どこが映っているのかさっぱりわからないものがほとんどでした。
新型ステップワゴンのサイドビューサポートミラーは単純な仕掛けですが、このようなコロンブスの卵的なユニークな装備が出てくるところがホンダらしいなと思います。
・5ナンバーサイズを堅持したこと
先代に比べボディサイズが拡大しましたが、依然として全長4.7m未満、全幅1.7m未満の5ナンバー枠内に収まるボディサイズを堅持しています。日本国内で使用するに当たってはやはり5ナンバーサイズであることは重要でしょう。
もう少し頑張ってほしい点
・無個性で何かに似ているスタイル
好き嫌いは別として、個性的だった先代RG系から一転して箱型の角ばったスタイルになりましたが、正直日産セレナを意識しすぎだと思います。ボディサイズの外枠が決まっていて、なおかつ室内空間を確保したらどうしても似てしまうのでしょうが、そこを似せないようにするのがデザイナーの腕だと思うんですが…
・3列目シートの座り心地が悪い!
3列目シートは床下収納を意識しすぎて座り心地が悪いです。ヘッドレストがあるとはいえ背もたれの高さは極端に低いですし、座面の前後長も不足しています。またクッションが平板でサポート性は皆無です。ハッキリ言ってこのシートは軽自動車の後席以下で、非常用シートでしかありません。せっかく空間を広くして快適性を向上させたのに、シートがそれ台無しにしている気がします。
・3列目シートが分割格納できない
3列目シートが床下収納できるのはいいのですが、その反面ノア/ヴォクシーのような左右分割収納ができず、一体型となってしまいます。乗車人数に合わせた柔軟な対応ができにくいのは残念です。
・乗車定員分の3点式シートベルト&ヘッドレストがない
標準モデル最高グレードのLi、スパーダの最高グレードZi以外は2・3列目中央席のヘッドレストがなく、2・3列目中央席の3点式シートベルトに至っては、全グレード設定がありません。こんな常識以前の装備をケチるというのはホンダの良識を疑いますね。
・モデルチェンジの間隔が短い
以前の日本車はほぼ4年周期でフルモデルチェンジしていましたが、ここ最近は伸びる傾向にあります。ところがステップワゴンは2代目・3代目とも依然としてほぼ4年周期でモデルチェンジをしています。下記の総評で詳述しますが、2・3代目とも商品企画的にミスがあったのでモデルチェンジを早めているのだと思いますが、旧モデルの陳腐化が早まってしまうのであまり感じのいいものではないですね。
総評
初代ステップワゴンといえば、FFセダンベースの走行性の高さと、低床による乗降性のよさ、スクエアでスタイリッシュな外観デザインで大人気だったのは記憶に新しいところです。
初代ステップワゴンはそれまでに存在したバネットセレナやタウンエースノアなど、運転席の下にエンジンがあり後輪駆動という、いわばトラックの延長線上にあった「ワゴン車」を完全に過去のものとし、「ミニバン」というジャンルを確立させた名車でした。
ところがキープコンセプトで登場した2代目は、当時主流になりつつあった両側スライドドアが設定されないという時流の読み違いをやってしまったり、3代目RG型は走りとスタイルを重視するあまり、室内空間がライバルよりも狭かったり…とミスが続いてしまいました。
それを挽回するためかなり早いタイミングでモデルチェンジし4代目に生まれ変わりましたが、今度は実用性はともかく、ライバル他車をあまりにも意識しすぎたスタイルとなってしまいました。ホンダの車ならもう少しオリジナリティが欲しかったですね。
それからこの車、2・3列目シートの中央のヘッドレストや3点式シートベルトが備わらない、VSAが売れ筋グレードでもオプションなど、安全性に対する志の低さが目立ちます。
まあミニバンの安全性については、メーカーがいくら安全装備を充実させても、子供にチャイルドシートもさせずに放し飼い、後席乗員がシートベルトをしない人が多いと言う現状ではメーカーもやる気がなくなってしまうのでしょう。
われわれ自動車ユーザーは「メーカーが…」「行政が…」「警察が…」云々と言う前に、やるべきことをやらなければいけませんね。
話が横道にそれましたが、新型ステップワゴンという車、売れ筋のミドルクラス5ナンバーミニバンであり、実用性は十分高く取り回し性も良好なので、そこそこ売れるでしょう。ただし、セレナ、ノア/ヴォクシーに対して明確なアドバンテージがあるわけではないので、初代のような爆発的人気とはならないでしょう。
初代ステップワゴンは単に室内空間が広いから、角ばってるから人気があったというわけでなく、まったく新しい生活を感じさせる何かを持っていたから、ユーザーがそこに可能性というか夢を感じて売れていたのだと思います。
その点をメーカーのホンダが認識できていない現状、ステップワゴンの苦戦はまだまだ続くのではないかという気がします。
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