
OHVから4気筒ナナハンまで様々と乗り継いで来た50年、辿り着くべくして王道のカブ様C90に行き着いたというのが正直な感想です。
HONDAスーパーカブの誕生から変遷を共にしてきた世代ですので、1億台が世界160数か国で活躍する凄さが白髪になってわかるようになりました。
かつて左手におかもちを持った寿司屋、ひときわ大きな前カゴの新聞配達、荷台左右にカチャカチャと瓶の音のする牛乳配達の帆布製袋、リアの荷台には出前品運搬装置の付いた蕎麦屋、クリーニング屋の大きな布袋、ラッパを吹きながらやって来る豆腐屋の水を張った木箱、鉄箱の銀行員や保険外交員にお馴染みの郵政カブと、経済成長日本を支えた昭和の時代の街を走る仕事人の風景はカブが相棒でした。
ハーレーであれビーエムであれ、バイクはそのユーザーの夢と物語の詰まったどれも拘りの1台であり、その人の人生を支えた走る道具であったことに違いはありません。
一方でカブは、26インチ自転車並み1,800mmの短い全長、80kgと軽量、左手操作なしの遠心クラッチペダル、雨風を凌ぐレッグシールド、比類なく頑丈なリアキャリア、多少の雪ならば両足をペタリと着いて走れる低いシート、17インチの細い大径タイヤがもたらす路地での旋回性能、ブレーキングでも車体を水平に保つ前輪ダウンリンクサスペンション、1ℓのガソリンで50km以上走る経済性の唯一無比の原動機付革命児だった訳で、まさしく猛獣の小僧Cubとは素晴らしい命名です。
2サイクルエンジンのYAMAHAメイトやSUZUKIバーディーが同形高出力の二番煎じで挑みましたが、メンテナンスフリー4サイクルエンジンのカブの牙城を崩すことはできませんでした。
今やカブはクロスにハンターとディスクブレーキやセル始動にLED灯火と時代とユーザーの趣向にシフトされて、いつしか通勤やレジャーユースの使途に用いられるバイクに変遷して今なお活躍しています。
その中で20年前のC90 HA02型カブ様は、発進停止の繰り返しと省エネを両立特化して、キャブレター吸気が発生する太いトルクでポトポトと低回転で回るアイドリングからギャーと叫ぶかのように高速度走行ができる傑作エンジンを有する最後のオールマイティーモデルです。
「ちょっとそこまで…。」の私の相棒のカブ様は、夜間には乗らないので柔らく穏やかな光を放つ昔ながらの電球灯火は全てそのままにして、お買い物輸送機の使命を果たす中型の純正前カゴと18ℓ灯油ポリタンクまで収納してしまう純正リアボックス、冬季だけは風防・グリップヒーター・ハンドルカバーだけ架装して純正の姿をそのまま保持してやりたいと思います。
上下スーツ姿や作務衣でも、葬儀に乗り付けても、山ほど段ボール箱を積んでいても、何の違和感を醸し出さないカブはまさしくスーパーバイク、猛獣の小僧と控えめに出発した筈が世界を魅了した大人のバイクだとカブ様を眺めるのであります。
C90カブ様は17年振り我が家に戻って来まして、この夏のお化粧直しでかなり綺麗な姿に戻りました。
Posted at 2024/08/29 11:20:47 | |
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