エンジン編に続く第2弾。私はかねてより、911というスポーツカー最大の魅力はその
シャシー性能、そして
ブレーキ性能にあると感じています。本稿では若干の考察も交えつつ、ポルシェ911のシャシー、ブレーキの魅力に迫りたいと思います。少々
マニアックな内容になると思いますので、興味のある方のみ読み進めていただければ、と思います。
➀シャシー
ポルシェのシャシーは
硬いことで有名です。かつて空冷時代のポルシェは「金庫の中に居るよう」と評され、その後も連綿とこのボディ剛性の高さは最新世代の992まで引き継がれています。997世代まではモノコックの大半がHTSS(高張力鋼)で構成されていましたが、991世代からは兄弟メーカーのAudi技術を取り入れ、
アルミニウムが多用されるようになりました。992世代に至っては、乗員保護に係る部分や、ドアの取り付け部を除く
ボディの大半(70%程度)がアルミ製となっています。自転車乗りの方はご存知かと思いますが、スチール製、アルミ製、クロモリ製など、フレームを構成する金属の種類によって伝わってくる路面からの入力や振動は異なります。HTSSは非常に硬い素材ですが、しなるため、アルミの硬質な感覚とはかなり違います。997までの乗り味が好きな方の中にはHTSSならではの
しなやかな乗り味が好き、という方も少なからずいらっしゃると思います。翻ってアルミボディは
明確に硬質で、とにかく硬いです。ねじり剛性はついに40000NM/°に至り、市販車としては時速400kmを叩き出すブガッティ・ヴェイロンに次ぐ
圧倒的な剛性です。通常のパッシブダンパーではもはや乗り心地を大きく損なうことは想像に難しくありません。
そこで、991世代以降は、PASMに加え積極的な
ボディコントロールメカニズムを導入しています。PTV、PDCCなどなど。私はもともと電子制御系はあまり好きでは無いのですが、ポルシェのそれはかなり完成度が高く、作動しているかどうかドライバーが関知する事は
ほとんど不可能なレベルです。結果、圧倒的なボディ剛性を纏い、ビックリするほど乗り心地も良く、驚異的なコーナリングスピードでコーナーを駆け抜けるモデルへと進化しています。私は空冷時代を含めこれまで6台の911を所有して来ましたが、997世代までは150km/hを超えるような超高速域になると
ちょっと怖いクルマでした。もちろん、911の作法を知っていれば、リアのトラクション性能の恩恵もありどうということは無いのですが、今改めて乗ってみるとちょっと不安を覚えます。故に、996~997の世代はAWDの方が絶対的な安心感は上だと思います。それが991.2くらいから、RRでも物凄くスタビリティが向上し、これはフロントトレッドの拡大と各種電子デバイスの進化によるものだと感じています。992だけ乗っているとその凄さにピンと来ないカモしれませんので、現行オーナーさんはぜひ
過去のモデルと乗り比べていただきたいと思います。
➁ブレーキ
「ポルシェのブレーキは宇宙一」という使い古されたクリシェがありますが、これはもうまったく本当にその通りだと思います。公道での圧倒的なストッピング性能はもちろんのこと、サーキットでの耐フェード性も素晴らしく良いです。高速サーキットを何周連続周回しようがまったくブレーキがタレる事はありません。純正のブレーキでここまで高性能な物を私はポルシェ以外では知りません。とまあスチールブレーキでも十分過ぎるほどですが、PCCBは更に凄い!これまで所有した911 6台の内3台、カイエンGTSも含めるとPCCBは4台で経験していますが、これはもう宇宙一どころか
銀河系一ですw。サーキットでは熱の入れ方を間違えるとクラックするリスクがあるので憚られますが、ストリートユースでは正に最強、最高。タッチ、効き、耐摩耗性、バネ下重量の軽さ、どれを取っても
天下一品、おまけにブレーキダストもほとんど出ません。ローターの耐久性は30万キロとも言われ、クルマの寿命とどちらが長いか、という話です。基本的に私はPCCBが選択出来るのであれば
選択すべしと思っております。キャリパーも黄色でカッコイイですしね♪
ポルシェ911のブレーキは992世代では素モデルとカレラS以上でローター径以外にも
差別化されていて、素カレラはフロント4ポッド、カレラS以上は6ポッドになっています。992.2カレラTはフロントが6ポッドになりましたので、より
ブレーキの効きはシャープになっていると思われます。それにしても、再三言ってますが軽量を謳うカレラTでPCCBが選択出来ないのは非常に残念です。さて、ポルシェのブレーキが利く理由としては、もちろんブレーキ単体の性能もありますが、
RRレイアウトの特性にも依る所が大きいです。即ち、ブレーキをした際に、通常のフロントエンジン車であればノーズがダイブしてリアが浮き、リアの接地感が減るワケですが、911の場合リアにエンジンという最大の重量物があるためリアがまったく浮きません。多少のノーズダイブはありますが、4輪全部が路面に接地しているため、正に路面に4輪で
喰らいつくような制動力を発揮します。FSWの1コーナーは、RR以外の車種で鬼ブレーキをかけると結構怖かったりするのですが、911は超安定、超安心に止まれます。コレを一度味わってしまうと他のクルマのブレーキはすべて怖く感じてしまいます。
スポーツカーの凄味って、実は何馬力出てるかというところではなく、正にこのシャシー性能とブレーキ性能に掛かっていると私は思います。故にカタログスペック上は控えめに見えても、実際に乗ってみると
圧倒的な凄味があるのがポルシェ911の魅力です。はっきり言って
公道では素のカレラでさえ性能の100%なんて絶対に引き出せません。相当腕に自信がある人でも、精々30%程度ではないでしょうか?なので、素カレラを「2000万円もするのに400㎰も出てないじゃん」とdisるのはアホです。ちなみに、ケイマン系も素晴らしいスポーツカーですが、やはり所々に
意図的なデチューンの跡が見て取れるため、私は頑なに911派です。同時所有出来るなら全然アリだと思いますが、どちらか一方しか所有出来ないのであれば私は断然911ですね。この辺は多分に好みの問題もありますし、ケイマン系の軽快感が好き♪という方がいらっしゃるのも全然理解できますので、対立を煽る気はさらさらありません。でも、「走りの質」という事に限って言えば、やはり「ポルシェのヒエルラキー通り」というのが私の20年のポルシェ歴での結論です。
~内外装編につづく~
Posted at 2024/12/14 14:02:09 | |
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