
当初2025年から施行される予定だった、いわゆる
ユーロ7規制は数年先延ばしになりましたが、現時点では
2028年からの施行が濃厚と言われています。欧州製EVが苦戦しているため、再延長の可能性も無くはありませんが、現時点でのロードマップとしては、2028年がデッドリミットとなります。ユーロ7となれば、排ガス規制はもちろんのこと、騒音規制やブレーキダスト規制も
かなり厳しくなります。
先日アップデートされた992.2はいわゆる
Lambda1オペレーションへの対応をすべく、様々な対策を講じています。例えば、992.2素カレラですが、
Lambda1では「すべてのエンジン動作ポイントで使用される、燃料と空気の完全なバランスが取れたエンジン設計」が要求されます。これを達成するのは容易ではありません。低ブースト時はまだ良いのですが、高ブースト時の燃焼室温度は、点火タイミングを意図的に劇的に遅らせなければならないポイントまで上昇します。つまり
Lambda1を達成するには、
本来のエンジン性能を出し切れないのです。苦肉の策として、992.2素カレラではタービンとインタークーラーを992.1カレラGTS用の
大型の物に変更しています。パワーダウンを回避するためには、「より多くの空気と、より冷却化した空気を内燃室内に取り込む必要があったから」です。ここに992.1→992.2で
僅か9psしかパワーアップ出来なかった理由があります(もちろんSとの差別化というマーケティング的な要因もゼロではないでしょうか)。本来であれば、ECUマッピングの変更と大型タービン、大型インタークーラーまで投入すれば3
0~50㎰アップは容易かったハズです。
次に問題なのが
騒音規制です。国に拠って色々差はありますが、日本は基本的に欧州と足並みをそろえています。来年から施行されるのがいわゆる
騒音規制フェーズ3と呼ばれるモノです。排ガス規制も絡みますが、現在ポルシェの多くの車両では三元触媒に加えて、直噴エンジンから排出されるPMを減らすために、
GPF(ガソリン・パーティキュレート・フィルター)が装着されています。年式によってあったり無かったりですが、今後の規制強化を考えると992.2以降は全車装着がデフォルトになるものと思われます。結果、騒音規制対策にもなるので、992.2では今まで一つだったGPFが二つに増えています。ちなみに私のカレラT(MY2024)にはGPFが装着されていませんので、遮音材が無い事と相まって個人的には水冷カレラ系随一の快音だと思っています。YouTubeの動画を観る限り、音に限って言うと992.1に軍配が上がると思います。これも時代の流れなので仕方ないとはいえ、
残念ですね。296で見られるような
サウンドエンハンサーの装着も検討していただきたいモノです(スピーカーから音を出すのはちょっと抵抗があります)。
最後に
ブレーキダスト、タイヤダスト規制。欧州の「環境への配慮」はこんなところにまで
いちゃもん口を出す事に余念がありませんw。なんとダストに加え、ロードノイズにまで言及していますから、ね。ブレーキダストやタイヤダストを一定量以下にすべし、という内容がユーロ7規制の中に盛り込まれています。これまでは、パフォーマンスタイヤやパフォーマンスブレーキはコンパウンドが相対的に柔らかいため、ダスト量も多い、というのが常識でした。しかしながら、今後はこうした従来のパフォーマンスを維持しつつ、ダストを軽減するという
相反するミッションを成し遂げなければなりません。タイヤメーカーもブレーキメーカーも大変ですよ、ほんと。まあ簡単にまとめてしまうと、ユーロ7の言いたいことは
「パワー出すな、音出すな、ダスト出すな」とこういう事ですよね?つまりは
スポーツカーは死ね、ということだと私は思います。ポルシェは涙ぐましい開発力と企業努力で何とか911を存続させようとしていますが、
規制で雁字搦めになっていく未来が容易に想像出来ます。次期994辺りは
正念場になりそうです。
Posted at 2024/06/03 14:21:01 | |
トラックバック(0) |
ポルシェ全般 | クルマ