
新型コロナCOVID-19のワクチン接種の効果が4-5ヶ月で減弱し始める事からブースター接種を始めた国がイスラエルをはじめいくつかあります。
米国でもバイデン大統領がブースター接種を開始する旨表明したと報じられ、FDAの幹部の一部はこの政策に反対し辞職したと伝えられています。
ワクチン主導の米FDA幹部2人、突然の辞任 ブースター接種承認の判断控え
https://www.cnn.co.jp/usa/35176042.html
ワクチン需給が逼迫し貧困国でワクチン接種できなくなる人々が出てくる事を懸念し、WHOはテドロス局長を筆頭にブースター接種する国々を批判するコメントを出している事はこのブログでも紹介しました。
「無能なのは誰?…Who is the incompetent one?… WHO is incompetent」
https://minkara.carview.co.jp/smart/userid/3311343/blog/45277002/
FDAを辞職したKrause氏を筆頭著者としWHOのSwaminathan氏等と連名でブースター接種を批判する寄稿が14日、英国の医学雑誌Lancetにオンライン掲載されました。
Considerations in boosting COVID-19 vaccine immune responses - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673621020468
実はこの件についてロイターが「13日に掲載された」と報じていたのですが、どこを検索しても該当する論文を見つけられず「ガセか…?」と思っていたところ、日本時間の14日午後になって上記リンクに掲載されました。
コロナワクチン追加接種は不要、WHOと米FDAの科学者が論文発表 | Reuters
https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKBN2G91RP
早速ざっと読んでみたのですが、大した内容はありません。
これまでに伝えられているように、感染、発症に対する予防効果は若干減弱が認められるものの重症化・死亡リスクに対する予防効果は依然有効であり、現時点ではブースター接種にワクチンを供給するより未接種者に供給すべきであるとする話でした。
いくつかの論文のデータをまとめてグラフにして表示してますが、その統計処理法その他のmethodの記載もなく、ワクチン接種からの期間を「Early」と「Later」の2群に分けているにもかかわらず、その具体的期間についての記載もない、およそ「科学論文」の体をなしていない「エッセイ」に近い寄稿です(冒頭画像のD)。
ロイターの報道では「論文」と報じられていますが、こんなのは「論文」とは言いません。一般の医療者がこんな投稿をしようとしても「ブログでやれ!」と一蹴される内容です。
とりあえずFDAを辞めて、米国のブースター接種が始まる前に一言言いたかったんでしょうが、とても「科学者」が取るべき態度とは言えず、またこんな「寄稿」を掲載したLancetもどうかしていると思います。
このブログで何回か書きましたが、2回のワクチン接種で終生免疫を獲得出来ると考えている医師や科学者は世界のどこにもいません。
一定期間で免疫が減弱し、コロナ禍が終息するまで定期的な接種が必要になるということは最初から分かっていた話です。
問題はブースター接種をするかどうかではなくいつするべきなのかという議論であり、これはワクチンの供給体制とは無関係に科学的、医学的に論じられなければならない話です。
ブースター接種の時期が医学的にいつが最善であるのかという問題とは別にワクチンの需給の問題も考慮して、結果としていつブースター接種を実施するのかというのは政治家が決める問題です。
「ブースター接種をする必然性を示すエビデンスがない」等としてますが、プラセボを使った二重盲検試験をしなければエビデンスは示せません。
今のコロナ禍でそんな臨床試験が倫理的に許されるのか?甚だ疑問です。
ワクチンを地球上でどのように配分していくのかを考えるWHOと、自国民の利益を最大限に考える為政者とでは意見が対立するのはやむを得ませんが、ブースター接種の至適時期を医学的に探る責務を負っている医師や科学者はそれらとはまた独立した立場で論じるべきです。
未確認情報ですが、日本でも医療従事者や高齢者など先行してワクチン接種を済ませた人々に対するブースター接種が来月下旬あたりから開始されるという話もあります。解散総選挙などの政治日程の影響を受けることなく適切な時期にブースター接種が開始される事を切に望みます。
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2021/09/14 19:49:04