
ベラルーシを巡る情勢が不穏です。
昨年の大統領選以降、独裁者ルカシェンコ大統領が色々話題を提供してくれています。
直近ではベラルーシから移民・難民がポーランドに押し寄せているというニュースが伝えられています。
ポーランド、ベラルーシ国境で移民流入を阻止 双方が非難の応酬 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/59216297
ルカシェンコ大統領の圧政から逃れようとする人々がポーランドに押し寄せているのかと思いきや、ちょっと事情が異なるようです。
シリアやイラクなどのアラブ系難民がベラルーシ経由でポーランド・EU圏内に流入しようとしているとの事です。
シリアやイラクの隣国であるトルコは、これらの国籍を持つ者のベラルーシへの航空機への搭乗を禁止する措置を取りました。
トルコ、ベラルーシ便にシリア人らの搭乗禁止 欧州移民問題に対応 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/europa-migrants-belarus-nato-idJPKBN2HX2AW
昨年の大統領選以降EUはベラルーシに種々の制裁を課してますが、それに対するルカシェンコ大統領による報復と受け止められているようです。
ベラルーシ、EUに難民使った「ハイブリッド攻撃」 緊張高まるポーランド国境 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20211110-2MXEUP2AN5JQNJZ65WM6FGKHVE/
EUはベラルーシへの制裁を強化する構えを見せていますが、それに対してベラルーシはロシアからベラルーシ領内を経由してEU圏内に送られている石油や天然ガスのパイプラインを「人質」に取って抵抗する構えを見せています。
EU難民問題で制裁強化へ ベラルーシ、ガス停止警告: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB115VC0R11C21A1000000/
事の発端は昨年の大統領選でした。
ベラルーシ大統領6選、反政権派は結果認めず抗議デモ続く | ロイター
https://jp.reuters.com/article/belarus-election-idJPKCN2560M2
ベラルーシは旧ソビエト連邦の白ロシア・ソビエト社会主義共和国で、ソ連崩壊にともない1991年に独立しました。現在のアレクサンドル・グリゴリエヴィッチ・ルカシェンコは1994 年から大統領を勤めていて、昨年の大統領選での勝利で6選となりました。
元々憲法では3選を禁止されていましたが、2004年にその条項を撤廃する改憲を行ない独裁体制を築いています。
昨年の選挙では反体制派のスベトラーナ・チハノフスカヤ氏が西側メディアにも取り上げられ善戦したものの、公表された得票率は約10%でした。チハノスカヤ氏は選挙後リトアニアに出国した旨伝えられています。
バルト三国やウクライナといった他の旧ソビエト連邦諸国がロシアとは敵対してEU・NATOへと組み込まれていく中、親露的なベラルーシのルカシェンコ政権はロシア・プーチン政権にとって地政学的に重要であり、ルカシェンコ政権はそれを逆手に取ってロシアに対しても強気の外交姿勢を見せています。
昨年の大統領選前、ベラルーシ経由でアフリカに向かう途中だったロシアの民間軍事会社の傭兵を拘束してプーチンと裏取引するなどの豪腕ぶりを見せました。
ロシア民間軍事会社「傭兵」を拘束ベラルーシ「クーデター事件」の真相 | デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/08041230/?all=1
今年5月には、反体制派ジャーナリストが搭乗したアテネ発リトアニアのビリニュス行きの民間航空機がベラルーシ領空に入ったところで、ベラルーシ空軍機に強制着陸させられて反体制派ジャーナリストを拘束してしまうなんていうトンデモ事件まで発生しています。
ベラルーシ、民間機を強制着陸 搭乗の反体制派拘束 欧米、一斉に非難 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20210524-2JMFOG3RGZM4VDY4IUQA6ACRNE/
先の東京五輪でベラルーシの陸上競技代表であるクリスチナ・チマノウスカヤ選手がポーランドに亡命するという事件が発生しました。
WEB特集 ベラルーシ五輪選手 “スピード亡命”の舞台裏 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210809/k10013185171000.html
五輪でベラルーシ選手がメダルをなかなか獲得できていなかった状況に業を煮やしたルカシェンコ大統領が現場の選手起用にまで介入し、それに異を唱えたチマノウスカヤ選手が本国に「強制送還」される事となって身の危険を感じ、亡命を求めたとも伝えられています。
ベラルーシのルカシェンコ政権の圧政を逃れて亡命を求める人々は後を絶たず、それらの人々を支援するネットワークがウクライナをはじめ世界中に存在すると言われています。
8月にウクライナでそのような活動を行なっていた人が不審死したというニュースまで伝わっています。
亡命ベラルーシ人グループのリーダー ウクライナで消息不明後、遺体で発見 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/58066539
ソ連崩壊後既に30年以上が経過した現在でも、共産主義の幻影とも言えるこのような恐ろしい現実があります。
日本国の近隣・東アジアにも似たような国家が存在しますが、冷戦の残り香というか「新冷戦」とでも言うべきでしょうか?
嘆かわしい限りです。
事態の推移を見守りたいと思います。
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2021/11/16 09:45:30