トヨタの整流フィンに関する特許を読む②
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
![](/images/icon_difficult_on.svg) 初級 |
作業時間 |
30分以内 |
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整流フィンの形状について。
今回の設置場所は図1のようにリアタイヤより後ろ側、リアアンダーカバー〜リアディフューザーに該当する部分になります。
この特許内には他の部分への使用の記載はない(後述するように、車両後端に装着しての実証実験しかしていない)ので、リア限定のフィンなのかもしれません。
図2(a)はフィン部分の下面視、図2(b)は側面視です。
整流フィン本体+垂直補助翼×2で構成されており、これが本特許における「第1の実施形態」とされています。
整流フィン本体(図の10)の形状は、「その1」で推奨されていたフィンとは少し形が違います。
(以下の用語については「その1」をご参照ください)
本項の整流フィンは、「第1〜3の傾斜部」は有していますが、「変曲点」を欠いており、「稜線」に相当する部分は平坦になっています。
その1では変曲点で気流剥離を抑制し、稜線で気流を増速させていましたが、このフィンは気流の安定性に主眼をおいているということなんでしょうか?
サイズは、10a部分の前後方向の長さと幅の比が10:1〜1:5、10aの幅に関しては車幅の1〜50%に設定すると良いそうです。
ということは、前後に長くても真四角でも良いし、かなり幅広でも良いってことですかね。
フィンの厚みと長さの比は1:10〜2:5程度が良いようです。
整流フィン本体の両脇にある11・12が本特許のキモである垂直補助翼です。
矩形の板で、後端がフィン本体の最大厚み部分に一致するように設置されています。
図では前端がフィン本体の前端に一致していますが、これより前方側に配置しても良いそうです。
サイズは、高さと長さの比が1:1〜1:4、補助翼同士の間隔は5mm〜100mmが良いそうです。
…だとすると、もし車幅の50%の本体にしたらどうなるんでしょう?本体との間隔がそのくらいであれば良いのだろうか。。
図2に書き込まれている「風の流れ」の通り、フィン本体および補助翼によって周囲の気流はフィン本体に引き寄せられます。
結果として車両後部の気流が安定し、車両安定性の向上および空気抵抗の軽減という効果が得られます。
3
続いて水平補助翼を加えた実施形態について。
図4は「第1の実施形態」から、垂直補助翼(図の21a・21b)を上下方向に長くし(フィン本体より背を高くし)、垂直補助翼を繋ぐように水平補助翼(図の21c)を加えています。
これが「第2の実施形態」とされています。
分かりやすいように正面視の図を書き加えましたが、垂直補助翼×2と水平補助翼でコの字型を形成しています。
…何だか、WRXの純正リアウィングを逆さまにしたような感じですね笑
側面視に書き込まれている風の流れのように、水平補助翼によってさらに効果的に気流をフィン本体へ引き寄せられます。
図5は「第2の実施形態」から、水平補助翼を中央で半割するように変更されており、「第3の実施形態」とされています。
正面視ではそれぞれの垂直補助翼と水平補助翼がL字型を形成しています。
この形状でも、基本的には「第2の実施形態」と同様の効果が得られるようです。
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図6が「第4の実施形態」で、水平補助翼がないバージョンです。
「第1の実施形態」とは、垂直補助翼の断面が矩形ではなく翼型になっている点が異なっています。
図6は側面視しかなく、この側面視が非常に分かりにくかったので、下面視を付け足してみました。
というかこの側面視、翼状断面の水平補助翼が付いているような描き方ですよね…分かりにくい笑
下面視の垂直補助翼2枚のうち、上側は外側が平坦で内側が翼状、下側は両側とも翼状で内側がより膨らんでいます。
側面視の書き方からは上側の構造っぽいですが、本文には「この翼型構造は、内側の膨らみが外側よりも大きい構成となっている」と記載されており、下側の形状が想起されます。
最も効果がありそうに感じるのは外側が翼状で内側が平坦(上側の逆)のような気がするのですが…流体力学に詳しい方教えて下さい笑
いずれにせよ、翼状断面とすることでよりいっそう左右から中心への気流引き寄せ効果を得られるようです。
また、「第2の実施形態」および「第3の実施形態」における垂直補助翼・水平補助翼をこの翼型構造にしても良いそうです。
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続いて実証実験。
実験はケース1〜5まで、5つの形態を比較して行います。
図7がケース1。
整流フィン本体が下面視で涙滴形状、側面視で矩形状をなしており、両側に垂直補助翼を備えています。
図8がケース2。
整流フィン本体が下面視で矩形状、側面視で丸みを帯びた下に凸の台形状をなしており、補助翼はありません。
図9がケース3。
整流フィン本体が下面視で矩形状、側面視で涙滴型を半割した形状をなしており、補助翼はありません。
ケース4は「第1の実施形態」。
ケース5は「第3の実施形態」。
以上の5つで比較していきます。
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ここからのグラフはここにアップした画像だと破線が潰れて見にくいので、興味のある方はぜひ原本で見てみてください。
図10は整流フィンなしおよびケース1〜ケース4における、ヨーレートゲインの比較結果です。
それぞれの条件で同一のスラローム走行を複数回繰り返し、操舵角度(MA)とヨーレートの比の周波数特性をグラフにしてあります(難しい!!)。
ちなみにヨーレートとは、
「ヨー角の変化する速さをいう。
クルマの重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度である。
横加速度とともに旋回運動を定義し、解析するための基本パラメーターとして広く使われる。
操縦感覚からはヨー角がコースとの位置関係をみるうえで重要であるのに対し、ヨーレートは変化速度のため敏感に感じるとともに進路の予見性のためにより重視される。
したがって、進路追従にあたって、クルマの挙動に対する信頼感を確保するうえでもスムーズな変化が求められる。
レートジャイロで、比較的簡単に計測でき、積分してヨー角にも変換される。
言葉としてヨー角速度もよく使われる。」
出典は自動車用語辞典『大車林』です。
このグラフでは、ケース1とケース4が他に比べてフラットな周波数特性を示しており、特に低周波領域ではケース4がフラットになっています。
フラットに近いほど操舵に対する車両応答の線形性が向上、すなわちドライバーの狙い通りに車両を制御しやすくなるため、「第1の実施形態」の構造で操縦性が向上するという結果になります。
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図11は整流フィンなしおよびケース1〜ケース4における、重心の上下Gに対する車両後部の上下Gの振幅比を示したグラフです。
つまり車両の重心と車両後部の揺れの差を示しており、この差が小さいほど乗り心地が良いというわけです。
それぞれの条件で同一コースを複数回走行し、双方の上下Gの比の周波数特性をグラフにしてあります。
このグラフではケース4が明らかに他と比較してフラットであり、乗り心地が良いことが示唆されます。
ケース1およびケース2は0.3Hz付近で特性の悪化があり、ケース3は1・2に比べて0.3Hz付近の特性がフラットになっています。
垂直補助翼がなくても、部分的には乗り心地を向上させる効果が得られるようですね。
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