
久々に復活した、涼たそのインプレブログ。久しぶりなのでちょっと気合い入れて書きました。楽しみにしていた方にはぜひ読んでいただきたいです。
1998年にデビューした、水冷エンジンになったポルシェ911。
今回レンタルしたポルシェ911 カレラ4Sは、その名前の通り4輪駆動の911。
エンジンはもちろん伝統のリアに搭載されている。
1998年にフルモデルチェンジしたポルシェ911は、996型となったがデビューから4年遅れた2002年に後期型に切り替わった。そこで追加されたモデルがカレラ4Sである。同じく同年には911ターボも登場した。
この後期型からはヘッドライトは涙目型にチェンジされており、それまで986型ボクスターと共通だったヘッドライトからは脱却が図られている。
ここでボクスターと911のフロントフェイスに差が生まれたのである。
今回レンタルしたポルシェ911はカレラ4S。
カレラ4はすでに登場していたが、Sが付いたことによりボディ、足回り、ブレーキなど基本的にターボに準ずることになる。
空冷時代の993でもそうだったが、カレラS、カレラ4Sはターボからターボを取り除いた…と言っても差し支えない構成だ。
964以前の名前だと、ターボルックと言うのだろう。
モデルの見分け方も一目瞭然で、このカレラ4Sはリアのエンジンフードの部分に、赤いガーニッシュが追加されている。水冷911になってからは、空冷時代に見られたガーニッシュが消えてしまったので、このガーニッシュの復活により嬉しくなったファンも多いのではないだろうか。

ボクもその一人である。
このカレラ4Sで、空冷時代の伝統のリアセクションが帰ってきたのである。
ボディは4駆用を採用し、5〜40%のトルクが配分される。これによりカレラ2よりもフロントは約50kg重くなる。
また、リアフェンダーもカレラ2とは異なり、左右に約30ミリずつ拡大されている。リアからみるとそのワイドさとセクシーさが共存している。

ナローなカレラ2ボディも良いが、ポルシェと言えばお尻と言われるので、ターボボディのヒップはやはり魅力的だ。
タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ ポルシェ認証 N4を履く。
タイヤサイズは、フロントが225/40ZR18、リアは295/30ZR18。
前回レンタルした、100万kmを走らせる企画のカレラ2とはやはり考え方が違う。これが本来の911らしさを発揮させるタイヤだ。走らせる前から期待が高まる。
内装も通常のカレラ2よりも豪華で、革張りのダッシュボード、ドアの内張りは見た目がいい。ステッチも入っており、目に入ってくるダッシュボードの安っぽさが解消される。
このカレラ4Sはマニュアルだが、GT3とは違いシフトストロークが長い。また、シフトの感触も柔らかく、人によってはかなり好みが分かれると思う。
クラッチを少しずつ上げてくるとそこは3.6リッター。前期型の3.4リッターから200cc拡大され、発進時のトルクが増している。このトルクの太さは空冷時代を感じさせる。アクセルを煽らなくても、ゆっくりとクラッチを上げてくるだけで、スルスルと動き出す。この辺りの感覚が、空冷時代に近い。
この後期型3.6リッターからは、可変バルブタイミング&リフト機構である「バリオカムプラス」が採用された。
最高出力320ps/6800rpm、
最大トルク37.7kgm/4250rpm。
リアエンジンとは言え4駆になった911は、RR特有の強いクセは少々鳴りを潜めた。積極的なフロント荷重を意識しなくても、そのままステアリングを切るだけで、ノーズが入っていく。
フロントには常にトルク配分されていること、フロントセクションが重いということがあり、ノーズは入っていくのに立ち上がりのトラクションとフロントも引っ張っていくという、カレラ2では味わえない立ち上がり加速がある。
言い過ぎかもしれないが、立ち上がりの加速はRRの押し出しとフロント駆動の引っ張りによって、味わったことのない未体験のカパタルト射出を感じる。コーナーで遅れても、立ち上がり加速で帳消しにするというのはこういう感覚なんだろうかと妄想させる。
ステアリング特性はポルシェ特有だ。
ステアリングの切り始めの0.1秒くらいの所の遊びを持たせて、タイヤが向きを変えてクルマが向きを変える結果が出るところの繋ぎまでが、人間の感覚に忠実である。
反応が鋭いマシンもクイックで面白いが、クルマが反応するまでの時間に自然さがあるクルマがポルシェだ。
前にも書いたと思うが、この辺りがポルシェの味の一つであり、エンジニアとテストドライバー、現場の人間が分かっている証拠だろう。
エンジンは前期の200cc増しだが、4000rpmを超えると『クォーン』と深みのある音で鳴きだし、耳から脳を快音が駆け巡る。991時代以後のような作られた演出味と迫力がある音でも、空冷のようなバサバサした音でもないが、とても心地良い澄んだ音がする。迫力や音量の大きさでは、世の中にはもっとすごいクルマはあるが、このカレラ4Sは音の粒が揃った、質が高い音が聴こえてくる。
箕面ドライブウェイを駆けるカレラ4Sは、涼しい顔をして駆け抜けることができる。
ブレーキのタッチも十分なほどにカチッとしており、コーナー手前で確実に減速できる。特にブレーキリリースの感覚が非常に滑らかだ。ゆっくりブレーキを抜くという、人間の高い要求に応えるブレーキ。
写真のホイールは、ターボと同じデザインだが、ターボのホイールは中空になっておりターボの方が軽い。同じ様に見えて、別モノである。そこはご注意ください。やはりターボは別格の扱いをされている。
必要以上に気を使わない、カレラ2よりも約50kg重いフロント。
リアが重い故のトラクションと、フロントも同時に駆動して引っ張る。全てを高いレベルで揃えた911だ。
個人的には、フルバケットシートに変えたい911ではなく、opのスポーツシートで適度に緩やかに。目を三角にして攻め込むクルマではなく、ツーリングしがてらワインディングをサラッと駆け抜けたい。
高速に乗っても安心感は抜群で、フロントのリフトも感じずボディはとても堅牢。ガチっとした感覚は十分に感じられる。長距離移動も全く苦にならない。とにかくどんなに速くてもフラットな乗り心地を感じる。
通勤や趣味、ワインディングも駆け抜けて買い物にも使いたい。何でも一台でこなす、弱点らしい弱点が見当たらない万能なハイレベルスポーツカー。
987ケイマンを買う前に、この996カレラ4Sが欲しかったが、こちらを買っても間違いではなかったと思う。それほど超万能かつ、何もかもが高得点でまとめられたツーリングスポーツカー。
エンジンの音良し、4駆を味方につけたRRのトラクション、カレラ2よりもフロントの荷重を意識しなくてもいいハンドリング、ターボ譲りのタッチもリリースも良いブレーキ。空冷時代のガーニッシュが復活したリアセクション。これらすべてをひとまとめにした超優等生な911。それがカレラ4Sだ。400万円ほどで購入できたのだが、その魅力に気付いたのか最近では一気にタマ数が減ってきた。もう自由に選べるほど残っていない。
乗り味が気になる方はぜひ大阪の箕面市、ポルシェゲートさんでレンタルしてみてほしい。
RRのクセを少し薄めた、走攻守すべてに長けたオールAの911だと個人的には思う。
ここまでいい911だとは思わなかった。前回レンタルした(100万kmを目指す)996カレラ2のティプトロの印象を一気に引き上げた。毎日使う相棒にしたっていい。
それが一番の印象だった。
初めて買う911にもおすすめです。