いつも楽しみにしている
こちらの雑誌ですが、次号はなんとHONDAのNRの特集です。デビューが1979年なのでもう40年たつのですね。
当時のGP500は2ストロークのレーシングマシンの全盛期で、HONDAは4ストロークのエンジンでこれに対抗するために考えたのが、吸排気バルブを4本づつ配置して吸気効率を上げた上に高回転で回す、という手段(苦肉の策?)でした。このためピストンは(楕円ではなく)長円形になり、支えるコンロッドも2本、プラグも2本になっています。良く「レギュレーションではV8が駄目なので連結しただけ」という見方のありますが、同じ排気量でV8にするよりバルブ面積は長円ピストンの方が広いです。
同じ排気量の通常エンジンと比較する(NR750 vs RVF750です)とピストン形状やバルブの違いが良く分かりますね。
このエンジンがデビューした瞬間に4輪のF1のレギュレーションが改定されて「楕円ピストン使用は駄目!」となりました。500ccで135馬力でしたから当時のF1の3000ccに単純換算すると810馬力!(当時フォードDFVが480馬力、フェラーリ12気筒が500馬力ちょっとだったようです)なので、これでは勝負になりません。
実際のレーシングマシンのNRはエンジンが凄いだけでは無く、モノコック構造でサイドラジエーターのボディに世界初の倒立フロントフォークなど、新機軸の塊でしたが、実戦の場ではエンジンの簡単な整備にもフレームからエンジンを降ろさなければならなかったり、など整備性や信頼性の低さもあって目立った成績は残せませんでしたが、フレディー・スペンサーが乗ったところ一時5位を走行(お約束でエンジンを回し過ぎてリタイヤになりました)したり、全日本のレースでは1回優勝もあり、そこそこのパフォーマンスは発揮したようです。
1982年に500ccでは撤退しましたが、その後750ccのプロトタイプマシンとしてル・マン24時間耐久に参戦しました。ジャーナリスト2名(根本健氏、ジルベール・ロイ氏)にプロライダー(マルコム・キャンベル氏)1名の運転でも、予選2位、本戦でもマイナートラブルでリタイヤするまで2位走行だったので性能も安定したようです。その後はオーストラリアのスワンシリーズに参戦しており、1000ccのマシンを相手に1回優勝しています。
このマシンも逸話があり、初めての試作車は鈴鹿の裏ストレートで当時のワークスマシンのNSR500をぶっちぎってしまったとか、リムスピン(ホイールスピンではなく、ハイパワーのためにホイールとタイヤがずれてスピンしてしまう!)のために出力を落としたとか、レース後の試乗会では6速ミッションの6速が5速ギアで実際には5速だったのに試乗のジャーナリストが誰も気付かなかったとか、色々あるようです。
その後1992年になって市販車としてデビューしました。エンジンはもちろん特別製ですが、タンクとシートカウルが一体のカーボンの外装やプロジェクターヘッドライト、マグネシウムホイールなど、こちらも新機軸のてんこ盛りで、520万円の高価格ながら原価割れ、との噂もありました。
透視図で見ても格好良いですね。メカ好きの心をくすぐります。
さすがにピストンとシリンダーは長円形だと機械加工が出来ないため(レーシングマシンのパーツは手作業での加工だったようです)、「正規楕円包絡線形状」という形状でNC加工が可能な設計にしてあります。(オーナーさん経由だと)購入可能でしたので、オブジェとして持っていても良かったかも。
実際に乗せていただいた事がありますが、バイクとしては低回転の3000回転から太いトルクで、一気に15000回転までストレス無く吹け上がる感覚は正に異次元で、自然吸気エンジンとしては最高の感触でした。
現在の技術で1000ccくらいにしてこんな感じで出してもらえれば欲しいですね。当時は750ccとしてはやや重めな乾燥重量223Kgでしたが、現在ならもっと軽く作れてとてつもない性能と味わいになると思います。エンジン製作が難しければ、普通の円ピストンでV5でもOKです(爆)。
今回の雑誌は前編、後編でレース編と技術解説編に分かれるようですが他の回でもあるような「今だから話せる…」なんて新事実の記事も載りそうで楽しみです。両方買いたいですが、残念な事に電子版では発行していないのですね。最近「1冊買ったら1冊捨ててね」との厳しいお達しがあるので(爆)、電子版なら気兼ねなくコレクション出来るのですが(涙)。4輪の「
GP Car Story」は電子版もあるので是非お願いしたいです。
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バイク | 日記
Posted at
2019/07/30 12:47:19