トヨタの新型アクアが発表されましたね。イメージは現行車両と一緒の感じですが、ハイブリッドシステム関係は色々改良されているようですね。基本的にはヤリスハイブリッドと一緒のエンジン、モーターですがバッテリーが違います。
ヤリスハイブリッドはプリウスと同等のリチウムイオンバッテリーですが、アクアはニッケル水素電池で改良型のようです。集電体をバイポーラ電極にした事によってセル毎の電流の取り出しが不要で全セル内での直列の通電が可能になったため従来型に比べてセル当り出力で約1.5倍、コンパクト化により同じスペース内に1.4倍のセルを搭載した結果、約2倍の高出力を実現しているそうです。
この結果容量は5.0Ahとなり、Bグレードが搭載するリチウムイオン電池の容量4.3Ahを超える値となっており、容量エネルギー密度がリチウムイオン電池の740Wh/Lに対し、バイポーラ型ニッケル水素電池では1000Wh/Lと約35%向上したため大電流が流しやすく、アクセル操作への応答性が向上するとともに、低速からパワフルでスムースな加速が可能になったようです。
実際に試乗してみなければ分かりませんが、トヨタ方式のハイブリッドシステムで電気的CVTだといわゆる「ラバーバンドフィーリング」と言われるアクセル応答の鈍さが改善されてよりEV的なドライバビリティになっているのかもしれませんね。ヤリスハイブリッドと乗り比べてみたいです。
おまけにニッケル水素電池の方がリチウムイオン電池にくらべて金属資源的には有利なはずで、そういう意味でも地球環境に優しいバッテリーなのかもしれませんね。
ところでこの新型バッテリーは新型アクアのZ、G、Xグレードに搭載されていますが、なぜか一番廉価版のBグレードは従来型のリチウムイオンバッテリーです。多分このグレードはレンタカーや営業車向けの剥ぎ取り仕様でカタログで燃費を謳うためのものだと思われますが、どうしてこうした装備の差別化をするのか本当に疑問です。トヨタの発表を鵜呑みにすればBグレードは旧型の電池でドライバビリティに劣るでしょうから、いくら安くても購入はおすすめしません。
内装やボディカラー、エンジンなどの装備が差別化されるのならともかく、車両構造の基本的なところで差別化をする車はあまり信用出来ませんね。そういう意味ではVWのゴルフなんかもグレードによってリアサスがTBAだったりマルチリンクだったりしますし、ボンネットの開閉も何十年も前の車のようなつっかえ棒方式に後退したので、どこで手抜きしているか分からず、信用おけないですね(爆)。量販車種の宿命でしょうか。
それはさておき(笑)、こうした地道な努力でバッテリーの改良をするのは良い事ですね。残念ながら今回の新型ニッケル水素電池の重量エネルギー密度は非公開ですが、従来のリチウムイオン電池に比べて軽量化も出来るようなら、ちょっとしたブレークスルーかもしれませんね。リチウムは供給(リチウムの埋蔵量はチリ、オーストラリア、中国、アルゼンチンに偏っていて、この4カ国で9割超となる。精製では中国依存度がさらに高まる)やリサイクル性、安全性(発火性の高さ)でも問題が多いですから、全固体電池(これもリチウムなため、供給やリサイクルの問題は一緒)に比べてもアドバンテージがあるかもしれません。
ところで、このような地道な努力を行っても純EV化するとバッテリーの重量は相当なものになってしまいます。この克服には全固体電池の実用化でかなりの改善がみられるようですがそれでも現行の液系リチウムイオンバッテリー重量エネルギー密度が理論的限界値の250Wh/kgなのに対しても300~400Wh/kg程度のようです。
そうすると、EVのバッテリーが全固体電池に置き換わっても重量は半分未満にはならない訳で、航続距離の事を考えると依然としてEVに占めるバッテリーの重量はかなりのものになると思われます。
EVへの置き換えへはリチウムの供給問題、電力の供給問題もありますが、明らかに看過されているのは車両の重量増しが環境に与える影響です。
時々指摘させていただいていますが、「道路に与えるダメージは軸重の4乗に比例する」といったデータがあります。おまけに、橋脚や高速道路などの効果の床版に与えるダメージは軸重の12乗に比例する!!」ようです。
例えば過積載のトラックが通行するだけで、上の図のようなダメージが道路に加わる訳です。基準の2倍の過積載は考えにくいでしょうが、道路に与えるダメージが4000倍!!というのはとんでもない話ですね。ダンプの通る国道がすぐボコボコになる訳です。1台の過積載のダンプが通るだけで、一般の自動車の数万台〜数十万台分のダメージを与えている訳です。
これは一般車両のEV化による重量増しにもそのまま当てはまると思われます。現行のEVで最も軽いHONDA eやプジョーのE208でも車重は1500Kgで、これ以上大きなサイズのEVやSUVタイプのEVでは1800Kg以上、2t超えも当たり前です。1500Kg未満のEVなどはカーボンボディを使用したBMWのi3や、そもそも車体サイズが小さいスマートやトゥインゴ、FIAT500のEVしかありません。
仮に軽自動車をEV化しても車重は1000Kg程度まで跳ね上がってしまうでしょう。そうすると、国産の全車種をEV化したら、軽自動車クラスで1000Kg、コンパクトカーでも1500Kg、もう少し大きな車なら2000Kgになってしまう訳です。そう考えると、全車種EV化によって単純計算でも
道路のダメージは少なく見積もって10倍、多ければ100倍になります
多分全車種EV化されたら2040年頃の道路は補修が間に合わず、あちこちでボコボコになっているのではないでしょうか(爆)。この補修費用は誰が払うのですか?受益者負担なら自動車に乗る人、大型車両に乗る人の負担でしょう。そういう意味では重量税というのは正当性がありますね。現行よりもっと重量区分を細分化して、重量がかさむ車両には飛躍的に重い税金をかけるべきでしょう。1t未満の車の重量税なんてタダでもよいくらいです。
EV化のメリットばかり声高に宣伝している記事も多いですが、道路環境そのものも考えた議論をして欲しいですね。
ブログ一覧 |
くるま | 日記
Posted at
2021/07/20 12:13:59