最近
WEB CGにアルピナD3Sのインプレ記事が載りました。
以前の記事や紙の雑誌版の本家CAR GRAPHICでの記事がかなり残念な印象でしたので今回もあまり期待していませんでしたが、期待にそぐわず残念な記事でした(爆)。
今に始まった事では無いですが、アルピナの試乗記と言ってもその半分近くはまずアルピナの説明に始まり、その出自やメーカーとしての説明に費やされ、その次にはベース車両の説明と違いの説明になり、肝心の車両も外観や内装の説明になるため、本当のインプレッションの分量としては全体の1/3〜1/4くらい、というパターンが結構多いです。
今回の記事もそんな感じで、肝心のインプレッションに関する部分はほんの数行、という風に思えました。ほとんどモデル発表時の詳細紹介に近い印象です。
人にもよるのかもしれませんが、アルピナという車は都内のニコルのショールームに出掛けないかぎりそうそう試乗の機会もありませんし、日常ではお目にかからないスーパーカーに近い存在(生産台数はフェラーリやランボルギーニやポルシェの1/10以下)です。
しかし、性格付けとしては本家BMWの(超?)高性能版といった車なので、一体どんな車なのか興味を持たれる方も多いと思います。なおかつ、単なる高性能なだけでなくアルピナとしての味付けという面の違いも知りたいところではないでしょうか。
多分アルピナが真骨頂を発揮するのは200Km/h以上の高速クルージングなのかもしれませんが(そのためか、最高速は「最高巡航速度」として表記されています)、日本ではもちろんそんな走行は不可能なのである程度日常的な範囲での違いも記事にしていただきたいところですね。
本当かどうか分かりませんがアルピナは製造時に「公差ゼロ」を目指して非常に丁寧な組み立てをしており、例えばタイヤにしても本家BMWとは違い単一メーカー(以前はミシュラン、最近はピレリ)のほぼ専用タイヤで念入りなセッティングをしているので、動力性能は他の車種と大差なくても乗り心地などの足回りの反応やステアリングの手応えなどに違いが出て来る?ようです。
その辺りを本家BMWとの違いとして指摘出来るのは普段から色々な車を試乗しているジャーナリスト諸氏の才覚だと思うのですが、そこまで突っ込んだ記事は少ないですね。
そして、D5S、D3Sに関しては(X3-M40d、X5、740dはありますが)どちらも日本に導入されていない直列6気筒ディーゼルなので、4気筒ディーゼルやガソリンモデルとの違いが知りたいところです。
直列6気筒ガソリンを搭載したB3に関しては日独両国で「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した事もあり、どの記事を読んでも評価は絶賛に近いものが多いですが、これは純粋にパフォーマンスも優れている上にアルピナならではの美点もあり、なおかつ本家BMWのM3/M4のデビュー前だった事から当然かもしれません。
しかし、ほぼ同じ車体に直列6気筒ディーゼルを搭載したD3Sに関しては、あまり高評価を得られていない印象があります。やはりディーゼルよりもガソリンが好みのジャーナリストが多いという事でしょうか。
実際の違いと言えば、確かにディーゼルエンジンの上に48Vマイルドハイブリッドシステムも搭載されているのでガソリンのB3より当然重いのですが、その差は予想より小さくて50Kgです。両車とも車重が1800Kg以上あるので(セダン同士の比較だとB3は1840Kg、D3Sは1890Kg)大差無いとも言えます。

パワーは462ps対355psなので大差がありますが、トルクは700Nm対730Nm(プラスBSGのアシストが加わるので実質800Nm?)なのでD3Sが同等以上です。B58エンジン搭載のM340ixDriveと比較すると、パワーは20psほど低いですが、トルクは230Nm以上と大差があります。
実際にB3とD3Sを同じ条件の山道で試乗してみたところ、さすがにB3の方がパワフルですが、その差は1割くらい?といった印象でした。それよりはフィーリングの違いの方が大きい気がします。
ガソリンのB3の方が低回転でややトルクが細い(それでも性能曲線では400Nmくらいありますが)ため、実際にワインディングなどで有効な加速やレスポンスを得ようとすると、2500〜3000回転以上をキープしたいところですが、そのレンジだと本当に気持ち良い吹け上がりと加速です。またスポーツモードにすると回転落ちの時のエンジンブレーキも有効に効くのでまるで自然吸気のようなフィーリングで楽しく走れます。ジャーナリスト諸氏の高評価もうなずけます。
これに対して
D3Sは1500回転辺りから有効なダッシュが得られ、レブリミットの5000回転まで綺麗に回り切るのでM340iと比べるとはっきりとパワフルです。ただし、低回転からパワフルなので盛り上がりに欠ける印象はあり、ガソリンエンジンのようなパワーの盛り上がりを期待するとやや面白味に欠けるかもしれません。また、ガソリンエンジンに比べるとスロットルオフ時のエンジンブレーキが弱い印象があるので、スロットルコントロールでのコーナリングの楽しみはB3に分がある感じです。
どちらのエンジンも実質のパワーバンドは全体の6割(もしくはD3Sがやや広い)ですが、フィーリングが違うので好みの問題になると思います。B3なら3000回転以上でレブリミットまで回し切る走り、D3Sなら2000回転辺りからパワーピークまでのトルクを生かした走りが楽しそうです。
個人的にはB3のスポーツモード走行ではスロットルオフ時に盛大なアフターファイア音が出るので、静かな(音質そのものは直6で気持ち良い)D3Sがアルピナらしくて好みです。
もう一つの大きな違いはある意味普段の使い勝手ですが、やはりディーゼルエンジンはあまり踏み込んでいない巡航状態からの加速は素早いです。全開加速をすると0-100Km/hはB3の3.8秒に対してD3Sは4.6秒で差が付きますが普通に乗っている状態から強めの加速をすると差は付かないどころかD3Sの方が力強い印象です。

古いデータで参考にならないかもしれませんが、ほぼ同じ車重の比較をした時に、ディーゼルエンジンはガソリンに対して0-100Km/h加速は遅いですが中間加速は速くて逆転するケースが多いです。この図ではトルク400Nmの123dカブリオレはパワーでは劣る330iには0-100Km/h加速では劣っていますが、80-120Km/h加速は逆転しています。
面白いかどうかはさておき、やや強めの加速をする時にはB3が2段くらいシフトダウンして回転が上がるのに対し、D3Sはそのままのギアで加速している違いがあります。48Vハイブリッドシステムのアシストも関係しているかもしれません。もちろんB3の加速は320iや320dxDriveよりも力強いですが、加速のストレスの無さではD3Sに軍配が上がりそうです。
コーナリングに関してはB3とD3Sでは基本的に足回りもタイヤも一緒でブレーキにも違いは無いため明確な差は感じませんでした。それよりは標準の19インチホイールとオプションの鍛造20インチホイールの方が差が出るのかもしれません。ただ、スポーツモードではB3の方がステアリングの手応えが重かったような気がします。この辺りはガソリンモデルとディーゼルモデルで微妙に性格付けが変わっているのかもしれませんね。どちらも滑らかなステアリングの手応えはアルピナだな、とは思いました。
こうしたフィーリングや乗り味の違い、ディーゼルモデルの魅力に関して試乗記事で伝えてもらえると、興味のある方にとっては非常に参考になるのではと思いますが、そうした記事が少ないので実際に試乗に出掛けるという事になってしまうと思います。しかし、試乗が出来て実際に頼もうと思っても納車は1年以上先、という状態のようなので悩ましいですね。
ガソリン車が良くて速い方が、という方には文句無しにB3でしょうし、もう少し静かでジェントル、満タンで遠くまで走れるという方にはD3Sかもしれません。比較的コンパクトな車体に直6ディーゼル、という唯一無二の魅力もあります。試乗記だけでは判断が難しい気もしますし、セダンとツーリングでも乗り味が違うので、やっぱり試乗に行くのが正解でしょうか(爆)。
と思ったら、
こちらの雑誌ではアルピナも特集しておりB3とD3Sの比較試乗?もしていました。ライターさんはB3購入を検討しているようでかなり正直なインプレのようですが、それによるとB3とD3Sのフロント回りは微妙に違っており、スタビライザーはB3がアイバッハ製なのに対してD3SはM340dのままらしいです。エンジン重量の差もあり、その結果B3の方がアルピナらしさが出ているとか。確かにD3Sといえどもアルピナとしては一番廉価版なので(爆)、ベースのM340dからモディファイした部分が少ないのかもしれませんね。少し参考になりました。
それでも我が家のミドリーヌ号(ALPINA D3Biturbo)は4気筒ディーゼルですが、標準のE91に比べても滑らかなステアリングの手応えや乗り心地など別格ですので、D3SもM340dと比べれば別格なのかもしれませんね。