AUDIのコンパクトSUVのQ3に直列5気筒のRSモデルが追加される、というニュースを見たのでAUDIのディーラーさんに出掛けてみました。
もちろんお目当てのRSQ3は置いてなかったので(爆)、取りあえずQ3とQ3スポーツバックを眺めてきました。基本的にはほとんど同じサイズで、Q3スポーツバックの方がリアの傾斜は大きくてクーペスタイルなため、リアシートに座るとQ3よりも頭上空間がやや狭い感じでしたが、それでもメルセデスのCLAやBMWのグランクーペよりは広々していたので許容範囲という感じでした。
RSモデルについてお話を聞いてきましたが、カタログモデルではあるものの生産台数はかなり限られているようで、日本に入ってくるのは200台前後みたいでした。一番早い納期でも年末以降のようで、自分で好みのオプションなどを選ぶと半年以上先になるようです。
そうするとまず5気筒の試乗は出来ないようでしたが、念のためにRS3のお話を伺ったところ、今年になって復活版が日本に導入されていたのですが、こちらもほとんど売れてしまって日本には数台しか残っていない、との事でした。
代わりに、お店には試乗車としてS3のスポーツバックがあったので乗らせていただきました。こちらは4気筒でしたが290ps/380Nmと十分高性能です。
乗り込んでみるとAUDI独特のセンターにカーナビ画面があるメーターです。BMWのものより高精細で使い勝手が良さそうです。エンジンをかけると予想より静かで全然問題ありません。
乗り心地はそこそこ引き締まっている感じですが特にショックも無く、BMWのG20型320iより快適です。試乗コースは上り坂でしたが、スポーツモードで踏み込んでみると結構な加速で、他社の同じグレード(CLA、2シリーズグランクーペ)と比べても遜色無い加速でした。
こちらの車も充分以上に楽しく、これでも良いかな、と思ったのですがS3は丁度モデルチェンジの末期に当たっているらしく、新規受注が出来ないようでした。
お話だけは色々伺って帰ったところ、担当さんから「浜松にRS3の試乗車がありますので持ってきます」との嬉しいオファー!があり、もう一度後日出掛けてみました。

試乗車は豊橋ナンバーでグリーンのお車でした。乗り込んでみるとS3よりはバケットに近い感じのシートでしたがナッパレザー張りで高級です。
エンジンを掛けるとアイドリングからかなり大きめの音がしますが、それでも予想したほどの爆音ではありませんでした。
発進してみると音に比べてそれほどレスポンスが鋭いというほどでもありませんでしたが、近くの伊豆縦貫道に入ってスポーツモードにするとやはり本領発揮です。
3000回転くらいまではややおとなしめですが、そこからは吹け上がりが速くて排気音もかなりのものです。ただ、雑味が無くて澄んだ音で、4気筒というよりはほとんど6気筒のような綺麗なサウンドでV6エンジンより好感が持てました。昨今流行の人工的な色づけも無く良い音です。色々設定が変えられましたが、コンフォートよりダイナミックの方がやや音量が大きい?気もしましたが音質は綺麗でこちらが好みでした。
試乗車にはオプションのRSダンピングコントロールサスペンションが装着されており、S3より硬めのはずなのに角が取れた感じの乗り心地でした。

ただ、ブレーキの効きが非常に良く、カックンブレーキではないものの効き始めも結構鋭いので、市街地では微妙に気を遣いました。サーキットなどの高速走行ではきっとこれで丁度良い効きなのかもしれません。
音量は結構大きめでしたが、素晴らしいエンジンの吹け上がりとパワー、比較的コンパクトで軽い車体で非常に楽しい車でした。
結構本気で欲しいと思いましたが、事前に復活を待っていたファンが多かったらしく、あっという間にほとんど売り切れて現在残っているのは試乗車と一緒のグリーンが2台、とのお話でした。さすがにこの出で立ちで爆音だと人目をはばかってしまいそうなので涙を飲んで諦めました。独り身の時でしたら即購入していたかもしれません。

ところが、新型のRSQ3に搭載されるのはRS3と同じではなくて新型のエンジンで、クランクケースのアルミ化をはじめオイルパンがマグネシウム合金製になるなど26Kgもダイエットした上にパワーも現行の340ps/450Nmから400ps/480Nmまで上がっているようです。
海外の試乗記ではそれほど爆音でも無さそうなので、RSQ3のスポーツバックでも十分楽しくて実用的かな、と思いました。

ちなみにこのAUDIの5気筒エンジンはインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの部門賞を9年連続受賞しているエンジンでライバル無しの状態です。5気筒というと「4気筒よりはパワーがあるけれど、直6には敵わない」という折衷案的なイメージを持たれる方が多いと思いますが、実は隠れたもの凄い長所があります。

こちらは「Motor Fan Illustrated」誌からの転載ですが、実は良く「完全バランス」と言われる直列6気筒でもピストン、コンロッドの往復運動によるトルク変動(慣性トルク)はアクセルのオンオフに関わらず生じています。ところが、直列5気筒はそれがほとんど生じないのです。

その結果、アクセルの開け閉めに関わらず綺麗な回転をするためどの回転域でもアクセルに忠実なエンジンの回り方になるようです。図で一目瞭然だと思いますが、通常の直4(フラットプレーン)、直6の実際のトルク変動(ピンクの線)が結構ギザギザ(筒内圧トルク発生に対して実質トルクが乖離している)なのに対して直5は非常に綺麗です。
バイクの例ですと、ヤマハのMoto GPマシンのYZR-M1と市販車のYZF-R1は直列4気筒では一般的なフラットプレーンのクランク構造ではなくクロスプレーンのクランク構造にする事で、スロットルの開け閉めに忠実にエンジンが反応するという特徴があります。Moto GPに参戦したカワサキの直4レーサーも同様のクランク構造を持っていました(スズキはどうなのでしょう)。図でもクロスプレーンの直4はトルク変動がかなり抑えられているのが分かると思います。
確かに、RS3も色々な回転からのアクセルの開け閉めに対して非常に綺麗にエンジンが反応していた印象がありました。横置きエンジンとしては別格だと思いました。もしこれが縦置きだったらもっと絶品のエンジンかもしれません。新型RSQ3は期待大ですね。
Posted at 2020/11/26 12:42:47 | |
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