
1月3日にプロトタイプが発表されたメルセデスベンツの新型EVの「EQXX」ですが、現状では最も優れたEVかもしれませんね。
詳細なスペックはまだ発表されていませんが(市販時に変更あり?)、断片的なデータだけでも結構画期的な気がします。
一番の利点は「満充電で航続距離1000㎞」でなおかつ「車重1750㎏」というポイントでしょうか。
現行のEVのほとんどは航続距離が400㎞強で、実際にはほぼ400㎞と考えて良いでしょう。普段の走行にはこれで十分かもしれませんが、ちょっと遠出をしようと思ったら必ず1回の充電は必要でしょう。
テスラやポルシェのタイカン、メルセデスベンツのEQSなどでは600㎞以上の航続距離を誇っているモデルもありますが、その代わりに巨大なバッテリーを搭載する事になり、車重は2500㎏前後です。また、この大容量のバッテリーを充電するために高電圧の専用充電器が必要だったり、通常充電だと非常に時間がかかったり(先日見かけたテスラのモデルSでは30分の充電で10%しか増えていませんでした)するために、走行途中の充電には支障が出そうです。
EQXXのバッテリーや充電環境についてはまだ詳細不明ですが、EQSと同等の100kWhのバッテリーなのでやはり大容量です。しかし航続距離が1000㎞なら一旦満充電にしておけば目的地に到着するまで充電は不要と思われます。
また、注目すべきポイントと考えられるのは「100㎞当たり10kWh以下」というエネルギー消費量で、これは1kWh当たり6マイル(約10㎞)以上の電費なので短時間の充電でもそれなりの走行距離が稼げる可能性がありますね。これは自社で設計した新システムによりバッテリーからホイールまでの伝達効率が95%という性能も貢献していそうです。
そして、もう1つの凄い性能と思われるのが車重1750㎏です。絶対的に見れば重いとも言えますが、EVとしてはかなり軽い部類です。純内燃機関の車両と比較してもDセグメントのSUVとほぼ同等ですから、現状ではコンパクトカーやコンパクトSUVを除いた他車より軽いと言って差し支えないでしょう。

おまけにEQXXのサイズは広報写真からの推測の計算では全長5019mm、全幅は1892mmですからサイズとしてはほぼSクラスや7シリーズの大きさです。そう考えると純内燃機関でも2000㎏超えになっているので300㎏前後の軽量化ですし、EVである事を考慮すると従来型から500㎏の軽量化と言ってよいでしょう。
この数値を実現するためにバッテリーはEQSのものと比べて30%軽量化されており(それでも495㎏!)、その他にもマグネシウムホイールや、アルミ製のブレーキディスクなど気合の入った装備ですね。タイヤも超低転がり抵抗のものだそうで、BMWのi3のオロジックのような専用開発品かもしれません。
ただ2800mmのホイールベースはサイズが同等のプレミアムセダン陣と比較すると400mm前後短いです。その分はリアオーバーハングを延長して空力性能の向上に充てており(ボディ後半の絞り込みはかなりのものでマクラーレンのスピードテールや初代インサイト並みです)、他の色々な工夫も相まってCD値はなんと0.17という優秀さです。
その分リアシートの居住性にややしわ寄せが来ている気もしますが、EVはセンタートンネルが無く床もフラットなので4人乗車なら必要十分かもしれません。
車体が大きく空力的には有利な大型セダンでもCD値は0.2くらいですので、0.17という数値はEQXXのボディ形状でなくては実現不能かもしれません。もちろん、車高の高いSUVタイプの車両には全く実現不可能な数値ですね。
こうした諸々の要素の積み重ねで満充電での航続距離1000㎞を実現しているのだと思いますが、出力自体は150kW(204馬力)と普通?です。でも車重と空力を考えると市街地でも高速道路でも十分以上の走りをするのでしょうか。EVはバッテリーの搭載の構造から低重心ですので、コーナリングも楽しいと思います。
逆にこれ以上の出力を出そうとすると、モーターなどの駆動系を強化する結果として更なるバッテリーの容量を必要として重量増しになり、走行抵抗なども増えるため、敢えて見切っているのかもしれませんね。
そういう意味では航続距離1000㎞を目指すための真摯な方法論が徹底されている印象があり、BMWの最初のEVであるi3の成り立ちにも通じる志の高さを感じてメルセデスベンツの真面目な取り組みを見せられた感じです。
全固体電池が実用化されればバッテリーに関してはもっと改善されるのでしょうが、現状での最適解とも言うべき出来映えだと思います。ただ、かなりのコストも掛かっているのでしょうね。
個人的な願望としては、全長は4800mm、全幅は1850mmにしてもらって航続距離は800㎞くらいにしてもらえば(そうすればバッテリーだけで更に100㎏軽量化!)、価格がいくらでも今すぐ買います(爆)。
二酸化炭素排出削減への手段としてのEV化を否定する気はありませんが、SUV化や安易なバッテリー拡大などによってある程度の居住性と速さ、航続距離を兼ねたEVはほぼ2t超えになっています。以前だったらロールスロイスやベントレー、マイバッハなどの超大型サルーンのレベルです。何度も力説していますが、道路へのダメージは軸重の四乗に比例しますから、これらの車両が従来の内燃機関の1.3倍の車重だとすると道路に与えるダメージは2.9倍ですし、軽自動車(800㎏と計算して)比べるとなんと39倍です。エコでも何でもありませんね。この負担は当然EV購入者がすべきでしょうし、安易な優遇税制による削減だけではなく、重量税のように公平に徴収すべきでしょう。そういう意味では、メルセデスベンツがEQXXによって技術の力で安易なEVの肥大化に楔を打ち込んだのは諸手を挙げて大歓迎ですね。
Posted at 2022/01/11 07:46:41 | |
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