
永遠の0
さて、今年一番楽しみにしていた映画です。
以下ネタバレなのでよろしくお願いいたします。
基本的な内容は
原作小説のダイジェスト。よくドラマとかを再編集して劇場版にするあの感じはやはりあります。ラスト、おじいちゃんが「それぞれの人にそれぞれの物語が~」という、その物語の掘り起しは、そりゃまぁ
2時間じゃ無理ですが。
ただ
「これは」というシーンはほぼすべて押さえられていたので、原作好きにも満足感は高いです。
個人的には、
井崎さんの証言の時に孫が同席しているのと、その
井崎さんのお葬式のシーンがあって欲しかったな、と思いました。
そして役者さんが、これまた見事。岡田准一さんをはじめ、
誰もが本当に素晴らしい。演技がアレで現実に引き戻される事は皆無でした。
『坂の上の雲』以来ですわ、この”スッキリ感”。
アニメに例えると『ジャイアントロボ~地球が静止する日』みたいな、
見ているだけで気持ちいい、というレベル。
最後、特攻する宮部の表情。あのいくつもの気持ちが交錯して、最後はあれですか、
娘の清子をお風呂に入れた、あのひとときを思い出しての表情でしょうか。
この映画、
クライマックスに向けて泣けるシーンを持ってくる作りじゃないんですよね。
戦争という非日常と、今に日常、当時の日常を交互に描いて、見る人それぞれの泣けるシーンってのがあります。
だから、宮部の最後の表情も、
それぞれの人のとらえ方で変わる、とも思います。
自分とか上に書いたとおり、原作には無い一度家に帰るところの、娘を風呂に入れてそこでうんちされて、
狼狽して家族で笑う、あのシーン。
あそこが一番泣けました。
自分も娘が今2ヶ月、(映画の中の娘清子は半年ほどかな)風呂に入れる時、同じような体験がありますし、
それは日常ですし、そして明日も同じ事があるものと思っています。
違うんですよね、あの当時の、彼らにとっては。
「そういう物語が、あの時代に生きた人の数だけあった」という下りは、ここで生きてきます。あの戦争を戦った人達は、特攻隊で散っていった人達は、
みんな、普通の人だった。
劇中にも自爆テロや狂信者のごとく特攻隊を解釈するシーンがありますが、そうではない、
あくまで、普通の人々が、自分の幸せを背中に背負い、それでもなお、いやさそれだからこそ、国の未来を真剣に考えた、というのがそこにある意味です。
その彼らから、
家族との幸せも、国の未来を支えるという役割も、奪ったのが、戦争である、という。『永遠の0』のもっとも言いたい事は、そこにあります。
もちろんテロリストと言われるものにも立場によって様々なパターンがありますが、少なくとも、
自分よりも弱い相手を盾や人質にし要求や自己表現をするものとは特攻隊は違う、というのは日本人はもちろん、世界中の誰にも理解してもらいたい事である、と思います。
あと景浦。もうみんな大好き、景浦。
映画化でも一番存在感ありました。
自分原作で一番好きなシーンは
ほとんど全部、この景浦関連です。
最後エンジン不調で脱落する時の慟哭しながらの
「宮部さんすいません」にしても、「特攻隊は無駄だった」と言った次の瞬間「無駄なんかじゃなかった」という
意味と本音の交錯とか、「宮部すら使い捨てる日本なんか潰れちまえ」という
感情とか、
別れ際にグッと健太郎を抱きしめるシーンとか。
んで小説、マンガ、映画とみてきて、思ったのが、
百田尚樹さん=景浦なんだな
という事。
Twitterとか見てても、ご本人のキャラはなんとなく。その
百田尚樹さん本人が自分がその時代にいたら、として作ったキャラクターが景浦なのではないかと。
能力があり、感情を表に出し、なおかつ、自分の力の及ばなさに歯がゆい思いをしつつ、だけどそれを飲み込んでて、かといって何か人助けをしても名乗らない・・・
なんというか、こういう人ですよね。
原作の武田が
”理性的な事実としての反論”だとしたら、景浦が
”感情的な怒りの反論”、なんですね。
前者はマスコミなどへの、後者は政府や軍や戦争に対しての。
ちなみにこの『永遠の0』に対して、右翼的だの戦争賛美だの特攻隊賛美だの、そういう感想や評価をする人がいたら、
まず間違いなく、中身を見ていませんか、内容が読めていません。
零戦という飛行機は出てきます。美しく、高性能
”だった”機体として描かれています。現実以上でも以下でも、ないです。物語としては、その
絶大な航続距離の弊害と、最後の機体の取り替えの時の型式の違いの意味くらい、でしょう。
そして右翼的だの戦争賛美という意見には、
もう辟易すらします。こういうレッテルを貼りたがる人は、まず
「日本軍・日本人は鬼畜で人殺しであった」という偏った、大きくねじ曲がった
架空の前提が放り込まれるので、それから外れる話は、もうなんだろうと、
こういう表現しか出来ないんでしょう。
こういう
明らかに中身を見ていない間違った評価に惑わされる事なく、多くの人に観てもらいたいな、と思います。
まぁこんな
思想的な雑音は無視して映画として、良いです。
ちなみに一番イイと思ったのが若い頃の景浦役の
新井浩文さん。彼の迫真っぷりは素晴らしいの一言。
原作以上に荒ぶっていた彼の、ラストシーンの、
ほんの一瞬写る「宮部さんすいません」は不意打ちに近くて、もう。ってwikiみたら『モテキ』の島田役の人か!全然印象違うわ。
宮部久蔵・岡田准一さんとの鹿屋基地でのやりとりもスゴかった。
あの時の宮部と景浦の表情、会話と感情の高ぶり。宮部のかきむしるような胸の内の吐露と、それを聞く今しがた現場を見た景浦の絞る出すような、でもそこから続かない言葉・・・二人とも、ホント役者さんってスゲー!って思いました。
あと、松乃。
井上真央さん、すんません、
あんなに可愛いのは反則です。
そりゃ俺がヤクザだったら囲うわ!と非常に
下品な事を心の底から思いました。
なるほど、
「惚れてまうやろーー!」ってコレの事ですな。
しかしふとここまで考えてきて、大体この手の映画だと、飛行機や軍艦の
「CGの出来」について、とか思うんですが、これがまったく思いつかなかった。
あまりに素晴らしく良く出来ていると、「自然すぎて」話題にならないんですね。
多分、
空母赤城を史上もっとも見事に描いた作品なのですが、あくまで、これは
零戦も含めて、いい意味で”脇役”、なんですね。
『永遠の0』、間違いなく、今年ナンバーワンの映画です。
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Posted at
2013/12/23 09:19:44