
素人インプレ~マツダロードスター
車名・型式・価格帯
マツダ ロードスター・ND・ 249~314万円
ミッション・駆動方式
6MT 2WD FR
エンジン型式・馬力・トルク
P5-VP 131ps/7000rpm 15.3kg/4800rpm
10年という長きにわたって生産されたNCロードスターもついにモデルチェンジです。
アンダーパワーだけど軽量でキビキビ走る
ライトウェイトの王道、という原点回帰を目指したその最低重量はNCロードスターと比較して実に
100kgもの軽量化を行ってきました。(初期NC最軽量モデル=
1090kg)
ここ最近絶好調のマツダ、
事実上のフラッグシップともいえるロードスター、その出来はどうでしょうか!NCロードスターオーナーの自分の視点でNDロードスターを見てみます。
スタイリング
まず所見の印象は・・・
思っていたよりデカッ!
正直、もっとギュッとした感じかと思っていたら、結構抑揚があるデザインで
大きく見えます。
って諸元みてみれば
全長で-8.0cm、全高で-1.0cmだけど、
全幅は+1.5cm。つまりよりワイド&ローになっているから、むしろ
大きく見える方が自然だよなぁ。
実際にボンネットラインの両端などはNCロードスターよりもグッと高いし起伏が激しい分、迫力あるからなおさら。さらに比較対象が膨張色であるホワイトと収縮色であるダークグリーンなので、それはより顕著になってる。
※ちなみに自分のロードスターは
2.5~3.0cm車高を下げているので、全高は差し引きNDロードスターから-2.0cmです。
しかししみじみ外見を見てみると、NCロードスターがどれだけ
定型文的な”ロードスター”だったかが解る。NDロードスターにデザイン的な共通点、ほぼ無し。一見したスタイリングで言うとNBロードスターが一番近いんだろうけど、過去のロードスターとNDロードスターで一番デザイン的に違うのは上部の絞り込み。トランクにしてもボンネットにしてもカドを大きく落としたようなデザインは今までに無いもの。
しかしこのフロント、とくにフェンダーからボンネットのデザインはホント思い切ってるなぁと。ボンネットセンターのラインが決まってからフェンダーを持ち上げたんじゃないかというくらい、強烈。ただ正直
ちょっと過剰かなぁ、と思う。
テールランプのデザインは好き。フロントのゴテッとしたところよりもこういう
サラッと、しかし凝ったデザインの方が好きかな。
インテリア
デミオ同様、最新のマツダインテリア。ドア上部は
ボディ同色とか解ってる感がハンパない。
しかし惜しむべきは
イエローやオレンジや水色などのポップなカラーやダークグリーンなどのシックなカラーが無い。なんで?コレは本当に疑問。イメージカラーの
ソウルレッド、ハッキリ言ってもう
飽きたよ・・・
さらに内装色も全然面白みが無い。
クルマの遊び心ってのは内装にこそ出るものだし、オープンカーであるなら、内装も外装同様のもの。それこそデミオの方が内装の遊び心は大きいよ。
さらにメーター。
伝統の5眼メーターじゃないのはともかく、油圧計が無い。あのぴょこぴょこ動く油圧メーターがなんとも
無駄で面白かったのに。なんというか、スゴく
無機質なメーター回りになってしまった。
確かに、NCロードスターのラグジュアリーな感じからスポーティ感はかなり増したとは思うけど、遊び心という部分では大きく欠けていると思う。年次変更の際にはポップなボディカラーに選べる内装色、そしてギミック重視の装備も載せてきて欲しいなぁ、と思う。
エンジンかけた時にブォーーンとか、そんなんどうでもいいから。
あとよく言われる”右寄りなペダル配置のNCロードスター”と比べたペダル配置ですが・・・確かにNCロードスターに比べて、中央に寄っているとは思います。が、オルガンペダルだからかは解りませんが、そこまで劇的に変わったかというと・・・「あ、ちょっと違うなぁ。うん、
これはこれでフツーに自然に乗れるなぁ」くらいにしか差は感じませんでした。NCロードスターに慣れきっているから、もうその右寄りペダル配置に違和感自体感じてないんですよねぇ・・・
あと風の巻き込みは明らかにNCロードスターより
強いです。とくにサイドからの巻き込み。これはミラーの形状からか、ドア内張の形状からか、それともフロントガラスの位置関係からか。ただ
サイドから脇に抜けていくような風はけして不快なものでは無いので、これは全然OK。むしろこの風の入り方は好み。
ステアリングの握り心地などはホント秀逸。しかしそれ以上に
素晴らしいと思ったのは、シート。ハンモック的な包み込むような沈み込むような、そんなシート。コレは本当に素晴らしい。
自分が今まで乗ったクルマの中で一番スゴいかも。ホールド感もあるし、快適でもある。このシート、そこらの社外シートじゃ
全く歯が立たないくらい、良い出来です。
あと驚いたのは・・・小物入れの少なさもそうですが・・・
ウィンドデフレクターが可倒式じゃ無いんですね・・・軽量化なのかコストダウンなのか、このウィンドデフレクターの上げ下げで
風の出し入れの調整とかけっこう出来るんで、ここはちょっと再考してもらいたいなぁ。
あ、幌。
幌の開閉はかな~り軽いタッチで操作出来ます。NCロードスターはちょっと力のある男性じゃないと難しい片手での一瞬での幌閉めも、NDロードスターなら女性でもカンタンに。コレは
ぜひ、積極的にオープンにしていって下さいというマツダの強いメッセージだと思う。
そういやNDロードスターってビニール幌じゃないんですね。
標準でクロス(布)幌、これはスゴい。ビニール幌とクロス幌では見た目の質感以上に、
オープンにする時の利便性が圧倒的に違います。ビニール幌は冬場とかは固くなり、オープンにしづらくなる。このクロス幌を標準採用は上記の幌機構の省力化と合わせ、マツダの
オープンカーへの理解度に直結していると思う。最高、コレはマジでうらやましい!
エンジン・ミッション
※先に書いておくと、自分のNCロードスターは
社外エキマニ+ノーマルマフラー、です。基本、それと比べるのはそもそもオカシイ、とは思いますが、あくまで比較対象は
「自分のNCロードスター」なのでそれを前提に読んで下さい。
さすがにパワー感、というかトルクの差を感じるなぁ。とくに1500~3000rpmの常用域でのマイナスな感じがかなり強い。実際NDロードスターだけに乗れば不足感はないのだろうけど、自分のNCロードスターとの乗り比べだから、ここはホント、差がある。
このトルク感は多分ノーマルのNCロドと比較しても
-100kgの軽量分ではカバー出来てない。さらに言うと、自分のNC1.5ですらそう感じるのだから、NBロードスター以上に出足の良いNC2とかだと
もっとその差を感じるように思う。
フツーに北米仕様の2000ccで良かったんじゃないかなぁ、と。
車重1t切りに固執しすぎたんじゃないかなぁとすら思う。例えばトヨタは86を「200万円を切る」といって宣言したときに、ほぼレースベースみたいなのを199万円で出してきたけど
、こういう思い切りとはちょっと違う、軽量化という数値目標の為にクルマとしての気持ちよさを切っちゃったように感じる。スポーツカーはそこは切るところじゃないだろ、と。
なんてぇか、
2~3年したら2000ccエンジンが搭載されて、んで今NDロードスターの1500ccエンジンを評価している人が手のひらを返して「実はパワー不足を感じていた~」とか言って2000ccエンジンを絶賛・歓迎する風景がものすごく目に浮かぶのは自分だけだろうか。
あとエキゾーストにしても、静粛性が高いのは解るけど、せっかくのスポーツカーらしい
ビート感があまり感じられない。
三気筒のアレでソレなエンジンが増えつつある今こそ
四気筒のあのビート感が心地よいのに。ここは演出が足りなさすぎる。
さらに言うと、風切り音でエキゾーストの盛り上がりがかき消されてしまう。これ、
クローズドにしたときにエキゾーストのセッティングしてやしないか?オープンカーはやっぱりオープンにしたときにもっとも心地よく感じるサウンドにすべきだよなぁ。ってか
むしろクローズドの時は不快ですらあっていいと思う。
シフトフィールはNCロードスターのメカメカしさからクリック感重視のタッチに。これはこれで心地よい。さらにギアの切り方がやはりマツダはピシッと決まってて、乗った瞬間から違和感ゼロで操れる。エキゾーストの不満もシフトフィールの心地よさで消えるっちゃあ消えるけど。
足回り
非常にソフト。サスが柔らかいってより、
足全体がスゴく上下に動くって感じ。最初はタイヤの空気圧が低いのではないかと思うくらい、ソフト。とはいえサスが抜けてるようなフワフワと不安定な感じはこれっぽっちもなく、ステアリングを切り込んだらスーっと沈み、同じくらいゆっくり静かに戻ってくる非常に良い足。
最初は違和感すら感じるソフトさだけど、2~3回曲がるとすぐに体が慣れてくる。
ロール感がすごくつかみやすい。狙ったラインにスパッと決めるのが容易。コレなら多分、リアが出てもゆっくり対処出来ると思う。まぁさすがに試乗車でそういう乗り方は出来ないからなぁ。
ちょっとステアリングが軽いのと、キックバックが少ない部分はあるけど、なるほど、一呼吸おいて考えて、この
NDロードスターの狙っている客層を想像すると、これはピッタリなのかなぁ。
ハッキリ、NCロードスターからの乗り換えは狙ってない。
そして、NAロードスターからの乗り換えも狙ってない。
NBロードスターから、と・・・それ以上に圧倒的に多いと思われるNDロードスター購入者層は・・・「昔NA/NBロードスターに乗っていた人」。
そうすると必要とされるのは、グレードでいうなら
スポーティなRSではなく、ラグジュアリーなVS。
一番「そういう人達が帰ってきやすい」のはマイルドで解りやすい、かつ良質な挙動のクルマ。
そう考えるとこのソフトなセッティングもピッタリに感じる。イジってハードにしたい人は自分で勝手に換えるわけだ。ハードにするのはカンタン。逆にソフトにするのはけっこう、さじ加減が難しいし。
ブレーキはカッチリと効く感じはないけど、コントロールしやすそうな感じ。ソフトな足回りとの調和はしっかりしてて、この辺りのバランスの良さは完璧。
総評
クルマとして、オープンカーとして、オモチャとして、自分にはNCロードスターの方がはるかに魅力的。
これは自分だけじゃなく、多くのNCロードスターユーザーが感じることなんじゃないかなぁ、と思う。
そりゃそうだ、NDロードスターのターゲットユーザーは
「NCロードスターを選ぶ人」じゃないのだから。
ハッキリと、上記に書いたとおり「
”元”NA/NBロードスターユーザー」だと思う。
外見こそ新しいマツダデザインだけど、中身は超定型文なロードスター。
いやさまさに
「今の技術で作ったNAロードスター」なんだろうな、と。
それを「大歓迎」という人と、それを「今更」という人と、その考え方によって意見が大きく分かれるクルマだと思うし、両方の意見があっていいとも思う。
そこから追っていくと、
ではあの極端なフロントフェンダーは「ドライバーから見たリトラクタブルヘッドライト」をイメージした隆起であり、柔らかい乗り味は昔の「丸いプアなタイヤ」をイメージしたものであり、エンジンの数字も「イッテンゴリッター」なワケだ。
その視点で見ると、NDロードスターは
ほぼほぼパーフェクトなクルマだと思う。
しかし考えてみたら
すごく幸せな話だよなぁ。
ノーリスクで「あの時に帰れる」クルマを用意してくれるのだから。
しかし逆に考えると、
ロードスターがユーザーと共に年老いていくそれが決定的になった、とも言える。まぁ、それはそれでいいのではないか、とも思う。世の中から要望されればその時は、またロードスター以外のスポーツカー/オープンカーが生まれるだろうし、もしかすると次のNEロードスターは若返りを図ってくるかもしれない。
まぁ長文色々書いてきたけど、
考えてみりゃそんなことどうでもいいんだ。
そんな妄想空想邪推をめぐらすよりも、ただただパッと屋根を開けて、気軽にそこらをプラッと流す、オープンカーは、それでいいんだよ。
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