H56Aカップリングファンをオーバーホールする編
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
  中級 |
作業時間 |
3時間以内 |
1
ご無沙汰しております。前回の整備手帳からかなり時間が経過してしまい気付けばもう秋ですね~。
今回は長々とやってきた水温上昇の原因である滑ってしまったカップリングファンを分解して清掃した後、新しいシリコンオイルを再充填してカップリングファンを再び蘇らせます。
ん?カップリングを蘇らせる?とお思いの方もいらっしゃるとは思いますが。
実はカップリング機能の滑りトラブルの大半は内部に充填してあるシリコンオイルの劣化or減少によって引き起こされます。
逆に言えば新しいシリコンオイルを再充填してやれば本来のカップリング機能が復活しますね~ん。
欧米ではカップリングのオーバーホールはごく当たり前のように行われてるので自分も試してみます。
あ!そうそう、三菱系のディーラーではカップリングのオーバーホールは行ってませんよ。
バカ高いアッセンブリー交換が前提でカップリングの補修部品すら出してない情けない現状ではお話になりません。
まぁ己の会社が作り出した部品すら無知な三菱系ディーラーサービスなんぞはアテにせずサクサクっとオーバーホールしちゃいましょう。
まず最初はカップリングとファンの分離です。
10㎜ボルト3点で固定されてるだけなので別に何も問題ないように見えますが
問題はカップリングのボディ部とボルトの間隔が近すぎる為に厚みのあるメガネレンチやボックスレンチでは入らない場合があります。
自分の場合は外周の肉厚が薄いボックスレンチで無理なく外しましたが‥
このボルトに使われてる材質はかなり柔らかいのでスパナ等を使うとかなりの確率でナメるので注意ですよ。
2
ファンとカップリングを分離したなら今度はオーバーホール最大の難関だと思われるカップリングボディ本体を固定している3ヶ所ある+ネジを取り外しにかかります。
このネジは大変ナメやすく‥みんカラメンバーさんの中でもこの工程で涙を飲んだて人がチラホラ‥。
その為にナメた時のリカバリー用にショックドライバー&インパクトドライバーをサブで用意し万全の体制で挑みました!
で、作業に入るその前に‥
浸透性潤滑剤(今回使ったのは工業用ペネトン)をネジにシューっと一吹き。
吹いたら一時間程放置。
さて!
作業開始!
まずは一本目!
頼むからナメるなよぉぉ~!
ん?
んん~?
ありゃ?
何の苦もなくクルクルと回りますぅ~!
残り2本も同じくクルクルと…(爆)
チョッピリ物足りなさを感じつつ最大の難関をクリア。
かなり構えてたけどインパクトなんて要らんかったー(嬉)!
今回の勝因は回す前に軽く衝撃を与えてから&潤滑スプレーをした後にしばらく放置させた事とこのネジが貫通式の為にネジ穴裏側からも潤滑剤をスプレー出来るので油の浸透性が良かったと思われます。
それと一般的な♯2番ドライバーを使わずネジ穴サイズに合った♯3番ドライバーを使った事が主な勝因かいな??
外したネジを検証してもロックタイト等の緩み止め防止剤は塗布されてませんでした。
まぁともかく‥
ゆきちおさん、サンバー3号さん、貴方達の無念を晴らしたぜ!
3
ネジを緩めたら後は各部品を分離する工程へ移行しまーす。
外は地獄のような暑さだったので室内でのんびり分解~。
ここからはみんカラ初登場パジェロミニカップリング内部でございます。
さて、バラすだけでは面白くないのでコイツを検証してみます。
まずカップリングボディ内部は大きく分けて3つに分類します。
まず、バイメタルが張り付いてる前部。
この裏側にはシリコンオイルの待機室があります。
2つ目はカップリングボディ後部シャフト軸側です。
こちらにはファン空転時に回転を支えるベアリングと駆動軸ロック室があります。
3つ目がカップリングボディ前部と後部の間にある仕切り板です。
この板で待機室とロック室は間仕切られてあります。
板にはロック室突入用の扉が付いておりバイメタルの反応に連動したボタンがこの扉を開閉させます。
面白いのはこの扉からはシリコンオイルは突入しか出来ず逆流はしません。
じゃあ、どうやってシリコンオイルは待機室に戻ってくるのか?
答えは仕切り板の外周にある小さな回収穴から遠心力を使って連れ戻されます。
この回収穴には開閉機能は付いておらず絶えずシリコンオイルを回収してやろうと目論んでますが‥(笑)
悲しいかな‥回収穴より突入用の扉の方が広い為にバイメタル反応中に開かれた突入扉から入ったシリコンオイルは回収穴に少しずつ戻され続けながらもまたすぐにロック室に突入し続け己の仕事をし続けます。
冷えて突入扉が閉まると仕事を終えたシリコンオイル達は遠心力を使って回収穴から待機室へショボショボ戻って来る‥。
う~ん‥この部品の中で一生懸命動き回るシリコンオイルを想像すると何となく健気で可愛らしい!
コイツは母性本能をくすぐるタイプやね!
知れば知る程カップリングファンが好きになってきますよ。
4
こちらが駆動軸とロック室側。
中心部付近にある部屋が突入扉から流れ込んだシリコンオイルが溜まる場所(ロック室)です。
この部屋の中でシリコンオイル達は己の粘度を利用し駆動軸に絡みつきます。
駆動軸にシリコンオイルが一定量絡みつくとその粘度の高さからスリップ状態からロック状態に移行するのがおおまかな仕組み。
ご存じの通り回転してるカップリング内には絶えず遠心力が働いてるので力及ばず駆動軸から離れたシリコンオイルはその外周にあるスリット状に伸びた溝から遠心力で外側へ放り出され回収穴へと運ばれます。
な~るほど!
開けてみて初めて分かる仕組みですな。
が、しかーし!
これはあくまでバイメタルが反応して突入扉を開けてこそこのシステムが稼働しますやん。
では‥エンジン回転数に左右されずカップリングを絶妙にスリップさせる機能はどこにあるのじゃ???
う~ん‥書籍やネットで調べてみてもイマイチ解らぬ‥。
ここからは完全にたまキチの想像でしかなのですが‥エンジン回転数が上がると遠心力も上がる=駆動軸に絡みつくシリコンオイルが上がった遠心力に耐えきれず駆動軸から離れてしまうのでは?と仮定してみました。
ハッキリした答えはまた調べます‥。
この部分の検証中には何故か某泥棒アニメのエンディング曲が頭の中でグルグル回る‥
あしぃ~もとにぃ~からみつくぅ~♪
5
こちらがバイメタルの付いた待機室と突入扉が付いた間仕切り板です。
待機室の真ん中にある凸ヘソみたいなのがこの外側にあるバイメタルと連動して突入扉を開けるボタンの役割を担ってます。
念の為にこの凸がスムーズに動くかチェックしましょうね。
この待機室から外側へ伸びる一本の溝があります。
この溝が回収されてきたシリコンオイル達が戻ってくる帰宅通路になってます。
お次は間仕切り板ですがコイツは待機室とロック室を仕切ってると同時に板バネ状の突入扉を装備してます。
前回の整備手帳でバイメタルはカップリング側へ反ると記述しましたが実際はラジエター側へ反ります。(間違ってスミマセン)
バイメタルが冷えてる時はバイメタルが外側から凸ヘソを抑えつけてる為に内部の凸も同じくこの板バネを抑えつけてるので突入扉は閉じてます。
熱を帯びてバイメタルが反ると凸を抑えつける力が弱まり今度は突入扉の板バネが凸を押し返し始めて突入扉が開く仕組みです。
この間仕切り板の下側に小さな穴がありますがコイツが回収穴です。
この穴からシリコンオイルはあの細い溝を通り待機室に戻ります。
突入扉と回収穴とを比較するとその大きさは歴然としてるので開閉機能を持たない回収穴が頑張ってシリコンオイルを回収しても突入扉が開いてる状態では同容量は回収できません。
外周側へ放り出された可哀想なシリコンオイルは回収穴で情けなく戻りまた懲りずに突入扉からロック室へ突入~!
もう‥関西のオッチャンは涙なくしてカップリングはバラせませ~ん(爆)
6
検証はこれくらいにして本題であるオーバーホールの作業に戻ります。
蘇らせる為の新しいシリコンオイルには前回のパーツレビューで紹介したトヨタ製シリコンオイル(品番08816-03001)を使います。
容量は18ml.で750円前後です。
今回は念の為に二本用意しました。
シリコンオイル封入は工程的には単純ですが一番の問題は三菱から何のデータも得られない為に《カップリング内のシリコンオイルの封入量が分からない事》でした。
調べるとハチロククラスでこのチューブ1本。
ランクルクラスでチューブ2本使用するとの事でした。
う~ん‥ハチロククラスと大差ないとは思うけど‥
アホはアホなりに下らない実験をしてから悩もうと決めて作業開始。
まず、受け皿となる容器を用意します。カップリング内部にある古いシリコンオイルをパーツクリーナーを使いカップリング内部から洗い流します。
この際、受け皿の上で流し終えたパーツクリーナーの液体を全て回収しパーツクリーナーが気化したら残ったシリコンオイルの残量からカップリング内の封入量を割り出そうとしたのですが・・・
悲しいかな…シリコンオイルと混ざったパーツクリーナーは全然気化しませーん!(〒_〒)
仕方がないのでハチロククラスの分量を目安に作業を進めます。
7
それではシリコンオイル投入開始!
前記の検証の時に説明したようにシリコンオイルは待機室とロック室を往来してナンボなので両方共にシリコンオイルを満杯に補充してしまうとシリコンオイルは行き場を失い常時ロックしてしまうので絶対に×。
(ネットで検索してみると両方満杯にしてしまう失敗談がすごく多い)
自分の場合はとりあえず待機室を満杯にしてみます。
う~ん‥かなり固いっす‥。
シリコンオイルは粘度が高くドロドロしてるのでなかなかチューブから出てきませんよ(-o-;)
待機室を満杯にした時点で18mlチューブ内のシリコンオイル残量は5mlでした。
それからロック室にもシリコンオイルを少し入れておきます。
これで17.5ml程度は入れました。
後日談になりますが封入量は一本を一滴も残さずしっかり入れて下さい。
チューブ内壁に留まるシリコンオイルも相当量あるので注意です。
シリコンオイルの充填を終えれば各部品を元のように組み上げます。
待機室と間仕切り板には○溝が掘ってあり合わさる位置が決まってるので注意しながら合体させていきます。この時に各部品からシリコンオイルが流れ出ないかと構える必要はありません。
シリコンオイルは短時間ならひっくり返しても暫く留まってる位にドロドロなのであまり神経質にならなくてもOK
この際、間に挟むゴムパッキンは著しい割れや亀裂が無い限り再使用でも個人的には大丈夫だと思います。
自分のカップリングもファンの内壁にシリコンオイルが飛び散ったと思われる痕跡がありましたが‥これは粘度が失われた状態のオイルがパッキンを介し少量だけ滲み出たと思われます。
でも‥粘度が正常なら古いパッキンでも大丈夫でしょう。よじれないようにパッキン溝に収めたら部品を合体させてネジを締めつければカップリングファンオーバーホールは完了です(^O^)/。
8
最後に組み上がったカップリングをガスコンロで火炙りの刑に処します(笑)。
理由は熱を加えられたバイメタルがどんなアクションを起こすのか実際この目で観たいから(^O^)
はい!これは単なる遠回りです。
でも、ただ漫然と修理に没頭するのと違い今まで知らなかった事を知りたい好奇心や遊び心を忘れたら自らが手を汚した意味がないっす。
そんな訳でおバカな実験開始!
カップリングを握り締め強火で鮎の塩焼きばり炙ります。
ん?
意外や少々炙った位では反応しませんの~。
ならばジックリと炙ってやる!
おっ!
少し反り始めたぞ!
がしかし‥反りに比例して我が輩の手もチョッピリあぢぃ気が‥
バイメタルが元気良く反応し始める時には(反り幅1.5㎜程度)既にカップリング全体に熱が伝わりメチャクチャ熱い!
ってか、素手でカップリング火あぶりの刑はマズかった!
あまりの熱さに耐えきれずカップリングをおもいっきり隣のシンクに投げ捨てたのは飼い主にあるまじき行為‥(-.-;)
でも‥貴重な体験をしたと思えば苦でもないか?(苦笑)
おしまい
次回予告・再起動カップリングで水温駆逐ついでに人間様も冷却編につづく‥。
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