
昨日の続きです。
オイルが酸化するとどのように変化するのか…
写真をご覧下さい。
これはうちの工作機(NC複合自動盤)で、製品を受けるメッシュ状のカゴの下で油受けに使っていたプラスチックの箱です。
斜めにした箱の中、底が見えて当たり前なのですが、酸化したために
この夏、今までに経験したことの無いベタ付きを感じました。
金属の切削加工なのですが、切削油の状態が芳しくありません。
加工し終わった製品を洗浄しても、な~んとなくサッパリしません。
ちなみに、洗浄には灯油を用います。
新油のときは削った面の仕上がりの良さ、刃物の耐久性とも非常に良い感覚でした。
工作機のオイル容量は150ℓです。
この量のオイルが循環しながら切削面に掛けられ続けています。
しかし製品と一緒に僅かながら機外へ出て行くのと、
かなりの温度による蒸発とで少しずつ減少していきます。
製品や切粉(きりこと読みます。金属を削った要らない部分です)に着いた切削油は、
洗濯機で脱水するように絞って、再度工作機へ戻します。
それでも100%戻すことは不可能なので、足りなくなれば新油を足すことになります。
理想は期間を決めて全量交換することが望ましいのですが、
厳しいコストを考えると注ぎ足すばかりです(T_T)
で、年数が経過した切削油の状態が写真のように変化してしまったわけです。
油屋にどうしてこのような状態になるのか、対処法はないのか聞いてみました。
結果…
酸化が原因とのことでした。
オイルが酸化すると硫黄成分が分離し始め、流動しないオイルはゲル状になるんだそうです。
性質が悪いことに70~80°まで上昇すると流動するらしく、
その特性を知らない人はギブアップになるらしい。
150ℓのオイルに対し僅か0.2リットルの酸化防止剤を添加すれば解消されると説明されました。
硫黄が悪戯しているものの、これが必要な要素でもあるのです。
誰でも手にしたことのある輪ゴム。
これでもかっ!てくらいに伸びますよね。
この伸びる特性は硫黄が含まれているからなせるのです。
古くなった輪ゴム・高熱を帯びたことがある輪ゴムって伸びずに切れてしまうでしょう?
それは酸化して硫黄が抜けてしまったからなのです。
エンジンオイルも同じことが言えます。
酸化が進むと本来の粘度が失われ、潤滑に影響が発生します。
カー用品店のオイルコーナーなどに比較写真が置いてありますが、
あれは‘汚れ’じゃなくて‘酸化’した結果なのです。
黒ずんでいるのは熱の影響での焼けや、洗浄成分が働いたが故のものです。
酸化が進んでいなければベトつかずに色が変化するのです。
ついでに…
うちの工作機で使う回転数ってMAX10000rpmに達します。
乗用車のエンジンより高速回転なのです。
この工作機で使うオイル、硬い粘度のを使うと‘かじり’を起すことがあります。
かじり=焼き付き なのです。
冬の寒い季節でもせん断されないオイル、せん断応力の対応範囲が広いオイルじゃないと使い物になりません。
冬だって切削が始まると熱を帯びて軟らかくなります。
それでも油膜切れを起こさないオイルじゃないと仕事になりません。
夏場のクソ暑い季節でも油膜切れを起こさないオイル。
軟らかくてもせん断されないオイル、そんなのもあるんです。
前出のF1のエンジンオイル。
超高回転でも追従させる為には硬いオイルじゃダメなんです。
軟らかくて、それでも潤滑性能を維持しているのですよ。
一般市販の0W-20よりももっと軟らかいオイル、サラダオイルに近いくらいサラサラらしいです。
ストレートでは全開走行・リミットまでを10秒以上持続する事だってあります。
鉱物油と化学合成油。
酸化に対しては化学合成油が圧倒的に強いです。
しかし、だからと言って鉱物油を否定するわけではありません。
短期間で距離を走る方(2~3ヶ月で5000㎞とか)でしたら鉱物油でも酸化の心配をする必要はないでしょう。化学合成油と比べて安い値段は魅力です。
逆に年間で10000㎞に満たないような方こそ100%化学合成油が必要なのです。
まだまだ話したいことはあるのですが、先ずは酸化に対する第一報ということで今宵はここまで。
書きたいことが整理できたら、都度UPしていきたいと思います。
長々とお付合いいただきましてありがとうございました。
>朝陽さん
↓WAKO'Sの4サイクルエンジンオイルのページにポジショニングチャートがあります。
他社は調べたことが無いのでレスポンス重視か耐熱ダレ重視か分かりませんアセアセ( ̄_ ̄ i)タラー
これからもいろいろ調べたいと思ってますm(__)m