話題の新型ハイブリッドカー、ホンダCR-Zの試乗に行って参りました。
CR-Zと言えば、初代インサイト以来久々となるMTの設定があるハイブリッドカーとして話題になっていますね。
また、往年の名車CR-Xを意識したコンセプトと言うことでも話題を呼んでいます。
発表されてから少し時間が経ったこともあり、ホンダのHPから検索すると、展示車・試乗車ともかなり多くの店舗に行き渡っているようです。
しかしながら、話題のMT車は展示車・試乗車ともに極めて少なく、酷いところだと県下の展示車・試乗車双方ともCVT車しか無いという県もあるようです。
愛知県では展示車では数店舗、試乗車では1店舗のみがMT車となっています。
その唯一のMT試乗車があるのが
ホンダカーズ小牧 弥生店。
一宮の自宅からですと10km弱、車で20分程度の距離ですので、こちらの店舗さんにお邪魔してMT車の試乗と相成りました。
当日はあいにくの雨。
車を来客用駐車場に停めると、ピットの片隅にCR-Zの展示車があります。
展示車はαのCVT。カラーはプレミアムホワイトパール。
実車を間近に見ると、想像よりもボリューム感があるな、と言う印象です。
もっと小ぢんまりとしているかと思っていたのですが、意外に大きい感じがします。
多分全高がほぼ1.4mとこの類の車としては比較的高めであるためかもしれません。
それより、この喰いつかれそうなフロントマスクのデザイン。
スポーツタイプの車なのである程度の迫力が必要なのはわかりますが、ちょっと品が無さ過ぎる感じ。
最近のホンダのデザインって、こんなフロントマスクが多くて醜悪化の一途をたどっている感じがします。昔のサイバーCR-Xはもっとシンプルで品のいいデザインだったんだけどなぁ。
室内に目をやると、ホールド性に優れていそうなフロントシートは比較的低くセットされ、スポーツタイプであることを主張しています。
また、注目のリアシートはやはりかなり狭いですね。昔の特に初代バラードCR-Xなどに比べれば広いですが、それでもとても実用に耐える広さではありません。
何せカタログにもリアシート狭いからちゃんとしたポジションでシートベルト装着できん人は座るな、って書いてあるぐらいですからねぇ。
その代わり、トランクは意外と広めです。充分に実用的。
やはり実質2シーターですね、この車は。
そうやって展示車を見ているうちに、試乗車が戻ってきたので試乗をさせてもらうことに。
試乗車はクリスタルブラックパールのαで、6MT車です。
当日は比較的強い雨が降っていることもあり、試乗車についてはほとんど写真を撮れませんでした(展示車も展示スペースが狭いのと営業マンと商談しながら見ている人がいてあまり写真撮れず)。
試乗車で唯一撮った画像がこれ。MT車のメーターパネルです。
特徴的なのはタコメーターの中心にあるデジタル表示のスピードメーター。昔の初代シティターボが同一レイアウトでしたが、CR-Zはスピードメーターを虚像表示の遠視点式としているため、写真で見るよりも実際にはかなり見やすいメーターです。
また、左側にバッテリー残量表示とモーターのアシスト状態、右側に燃料計と瞬間燃費計というレイアウトになっていて、左が電気系で右がエンジン系というエリア分けができているのも好印象です。
なお、左下はCVT車だとシフトポジションインジゲーターなのですが、MT車は燃費重視のシフトチェンジを促すシフトタイミングモニターが付きます。
また、画像ではアイドリング状態の為ブルーですが、インサイトと同じく色による燃費のコーチング機能がつき、アンビエントメーター(スピードメーター周りの光のリング)が好燃費だとグリーン、燃費が悪くなってくるとブルーに変化します。
さて、助手席にホンダカーズのスタッフが同乗して早速試乗を開始しますが、走り出しは普通のMT車感覚で乗り出したこともあり、いたって普通のMT車の感覚。
カタログでは「2リッター並の動力性能」とありますが、ギアリングがハイギアード気味なこともあり、ごく普通の走り方ではそこまでのトルク感ではなく、せいぜい1.8リッタークラスの感覚でしょうか?
ただ、当日は雨が強かったこともあってあまりアクセルを踏み込めず、モーターアシストも限定的でしたので、もう少し強力にアシストされる状況では印象が変わるかもしれません。
なお、クラッチは軽めで半クラッチもわかりやすく、シフトレバーはショートストロークでカチカチ決まる気持ちの良いもの。「ついでの設定」のMTではなく、「本気の設定」のMTだということが操作性からも判ります。
さて、モーターアシスト付MT車であるということを実感できたのは、そんな普通の走り方よりも、低回転域で走行したときでした。
例えば6速で50km/h、1300rpmなんていう状況で巡航していたとします。この領域だと低速トルク不足の車だと既にこの状態で巡航に問題が出ますが、ここから加速しようものなら大抵の車はブルブルとエンジンが振動して苦しそうに加速するのが普通です。FF車だとスナッチが酷い状態になりますか。
ところが、CR-Zはほとんど振動することも無く、事も無げにスルスルと加速してくれます。これはちょっとした驚きです。既存のMT車とは違う、CR-Zならではの世界観があります。
よくよくチェックしてみればシフトダウンする時も、普通のMT車と比べ多少回転が合っていなくてもほとんどショックが無く、これもモーターアシストの効能なのかもしれません。
エンジン直結型のホンダIMAは走行時必ずエンジンが回転しますので、発進時にモーターのみを使って半クラを不用にする、なんていう芸当はできませんが、それでも充分に新しい世界観を見せてくれている感じがしました。
私はこれまでホンダIMAの体験はインサイトだけ(レンタカーのGグレード、当然CVT車)でしたが、CVTのインサイトではプリウスに対しあまりにも魅力の無い走行フィーリングにガッカリしたものですが、CR-Zに乗ってIMAはむしろMTと組み合わせることで個性を発揮できるシステムだと実感しましたよ。
なので、個人的にはインサイトにもMT車を設定すべきと感じました。確かに売れないとは思いますが、しかしプリウスに対しインサイトを積極的に選ぶ動機になると思いますよ。THSはシステム自体がCVTの役割を果たすので、MT車は設定できませんし。なので、むしろIMAにCVTを組み合わせるのは得策ではない印象です。
そう言えばCR-Zのαは250万円クラスと決して安くはありません。プリウスの上級グレード・Gの標準仕様とほぼ同じ価格ですね。
しかし、安さ勝負のインサイトに対し、CR-Zは販売価格を高くすることができたためか、各部の仕立てを見ると質感が高く、装備も充実していてむしろCR-Zの方がインサイトよりも割安感のある印象です。
αでしたらコンライトやクルーズコントロールなども付いていますし、ソフトパッド処理のインパネなども含め、250万円クラスの仕立てとしては上々どころかむしろ質感の良い部類に入るのではないでしょうか?
アイドリングストップ時のことを考えてか、通常のホンダ車に比べて遮音性も高く、250万円クラスの車としてここも高レベルな部類に入ると思います。
そう言えばサスペンションも想像するより硬くなく、結構乗り心地は良かったですし、そもそも低重心なディメンションなので俊敏な動き自体はそれでもスポイルされている感じはありませんでした。
悪天候の中でわずかな時間での試乗でしたが、インサイトに対しては厳しい印象しか持たなかった私でも、CR-ZのMT車はかなりの好印象を抱きました。
もし環境が許せば欲しいとすら思えるホンダ車と言うのはこれが初めてです。いや、本当に良い車だと思いましたよ。
「スポーツタイプだから」という言い訳がリアシートスペースの狭さ以外にほとんど無く、大人の観察眼に耐える質感で仕立ててきたことに敬意を表します。
そして、ハイブリッド車として、またMT車として新しい価値観を提供できていることが何より素晴らしい。
CR-Zのプラットフォームはフィットと言うより欧州シビックベースと言った方が良さそうですが、同じ6MTスポーツのシビックタイプRユーロを買うくらいなら、断然CR-Zの方がいいと断言できます。タイプRなら刺激の強いセダンタイプRを買った方がいいですよ。古典的だけど。
そんなわけで、CR-Zはとても好印象な車でした。
でも、CVT車だったらこんなに印象は良くなかっただろうな、と思っています。
今回の試乗でIMAはMTと組み合わせると断然印象が良くなることに気付きましたが、CVTではCR-Zの魅力は大きくスポイルされてしまいそうです。
そういう意味では、CR-Zの購入を検討されていらっしゃる方は、是非ともMT車を購入していただきたいというのが率直な印象です。
私はインサイトで抱いたIMAに対するネガな印象をかなり改善できましたよ。
どこかのレンタカー会社がCR-ZのMT車を導入してくれたら1日借りて乗り回してみたいな~w