
ほとんど話題に上っていませんが、日産がクルーの生産・販売を8月いっぱいで終了したそうです。
ライバルとなるトヨタコンフォートが昨年8月にLPGエンジンを一新したことでその動向が注目されていましたが、対抗手段を講じることなく、クルーの生産中止による日産の小型タクシー市場からの撤退と言う形になってしまいました。
日産クルーは1993年デビュー。
旧態化していたC32ローレルタクシー(1984年デビュー、一般向けが1989年にC33にモデルチェンジしてからも継続生産)と910ブルーバードタクシー(1979年デビュー、やはり一般向けブルーバードが1983年にFF化された後もFRで継続生産)の小型タクシー2車を統合する形で、日産初のタクシー専用車として発売されました。
よく「国産初のタクシー専用車」という記述が見られますが、実際には1949年のトヨペットSBP型乗用車がタクシー専用車(その後のSD⇒SEY⇒SF⇒マスターRH⇒スーパーRRまで)ですし、高度成長期以後に限定したとしても、1989年に大改良を受けたトヨタコロナタクシー(YT140系後期型)がタクシー専用キャブを採用していますので、「日産初」という表現が正しいです。
タクシー前提設計と言うだけあり、(当時としては)高めの全高に角度を立てたピラー、右に比べ大きい左側後席ドアなど野心的な設計がされていました。
シャシーはC32ローレルタクシーのものを基本的に流用しています。これはコストダウンと信頼性確保の為ですね。
デザイン的にはほぼ同時期デビューのC34ローレルにも通じる垢抜けたデザインで、どこか国産車離れした雰囲気(ちょっとフランス車っぽい?)を漂わせていました。
名称からローレルという名前が消えたとは言え、フロントマスクなどはC34ローレルによく似ており、「ローレルセダン」の雰囲気ももっていました。実際イギリスでは「ローレル」の名称で売っていたらしいですし。
減価償却を早めるのと、日産アッパーミドルカー(ローレル、スカイライン、セフィーロ)が全て3ナンバー化した為に、主に5ナンバー指名買いの官公庁向け需要に答える為、それまでLPGとディーゼルしかなかったクルーにRB20E6気筒SOHCガソリンエンジンを搭載した「クルー・サルーン」も追加されます(画像はそのガソリンエンジンのクルー・サルーン)。
クルーの登場はトヨタにも刺激を与え、トヨタも2年後の95年12月にタクシー専用車「コンフォート」シリーズ(小型枠の「コンフォート」と中型枠の「クラウンコンフォート」)をデビューさせることになります。
タクシーキャブ大手2社がこれで投入車種をタクシーキャブ専用車化した(トヨタがコンフォートシリーズとコロナタクシー、日産がY31セドリックセダンとクルー)ことになり、やはりタクシーを投入していたマツダと三菱はタクシーから撤退することになります(マツダは95年、三菱は2000年で撤退)。
そういうわけで、日本のタクシーキャブ事情に旋風を巻き起こしたクルー。
先発ゆえの悲しさか、コンフォートに比べるとやや中途半端さが否めなかったクルーでしたが、質実剛健の塊であるコンフォートに比べると、デザイン面ではむしろクルーの方が垢抜けていたように思います。
コンフォートの潔さは魅力的なのですが、クルーは90年代前半の日産デザインでも最高傑作といっても過言ではないもので、特にキュッと絞ったテールエンドのデザインは今見ても充分に魅力的です。
名古屋では残念ながらあまりタクシーとして活躍する姿は見れませんでしたが(名古屋は中型が主流の上、小型は最大手のまいにち小型がギャランΣ⇒コンフォートを採用)、乗用のクルー・サルーンはそれなりの数が走っていたように思います。
しかしこれで小型タクシー市場はトヨタの独占市場となるわけですが、それでいいの?日産。
トヨタがタクシーから撤退しないのは、黎明期から国産車を鍛えてくれたのがタクシー業界だからなのですが、日産も事情は同じ。でもフランス人の社長にはそういう浪花節は理解できないのでしょうね。
GT-RやZを作るよりも、よっぽど大切なことだと思うんですけどね。個人的には。
あ~それとも、ティーダラティオかブルーバードシルフィーのLPG車でも出すのかな?
それならいいですけど。
でもラティオのタクシーはありがたみがないよなぁ(笑)
実際走ってるけど。
Posted at 2009/09/07 01:39:37 | |
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