2010年01月14日
ワイドトレッドスペーサの材質などに関する考察
ワイドトレッドスペーサに大事な特性は,①強度(本体およびボルト)と②ハブセンターからのズレの無さです.
①が不足だと,走行中に割れてホイールごと飛んでいってしまうかもしれません.
②が不足だと,走行中に異常振動が起こり,最終的には走行中にハブごとホイールが飛んでいってしまうかもしれません.
●本体
まず,ワイトレ本体に使われている金属材料は以下の三つに大別できるようです.
・炭素鋼
・ジュラルミン
・アルミ合金
といっても,ジュラルミンは,高強度アルミ合金の別称なので,結局は炭素鋼かアルミ合金かの二種類に分けられるということになります.
機械的性質を列挙してみると,
・炭素鋼(S45C): 引っ張り強度 570 N/mm^2,降伏点 345 N/mm^2,硬度 198,比重 7.8 g/cm^3
・ジュラルミン(A2017): 引っ張り強度 360 N/mm^2,降伏点 275 N/mm^2,硬度 105,比重 2.8 g/cm^3
・アルミ合金(A6063): 引っ張り強度 148 N/mm^2,降伏点 145 N/mm^2,硬度 60,比重 2.7 g/cm^3
となります.つまり,比重を見ると,普通のアルミ合金が同じ体積なら一番軽いけど,強度を見ると最も不足していることがわかります.
また,鉄の強度はアルミ合金に比べて格段に高く,ジュラルミン製のワイドトレッドスペーサを主力製品としているメーカでも,薄いモデル(15mm厚未満)については炭素鋼を採用していることが納得できます.
ただし,鉄の比重はアルミ合金の倍以上もあって,15mm厚以上の製品だとバネ下重量が増えすぎることになる理由で,高級品には主にジュラルミンが多用されているということであり,一方で厚みがあればジュラルミンでも十分な機械的強度を持つということも指し示しています.
さて,普通のアルミ合金ならジュラルミンに強度が遠く及ばないことを示しました.
つまり,これが,「普通のアルミ合金で作られた安物は,割れやすいから止めておけ」ということの根拠になっています.
しかし,普通のアルミ合金でも,熱処理を施すことで高強度に仕上げることができます.
材質記号では,A6061-T6というものです.
機械的性質は,
・アルミ合金(A6061-T6): 引っ張り強度 320 N/mm^2,降伏点 280 N/mm^2,硬度 105,比重 2.7 g/cm^3
となります.
上記のA2017ジュラルミンのデータと比較してみてください.
強度(引っ張り強度および降伏点)が,ジュラルミンに肉薄する特性に向上していることがわかります.
硬度もジュラルミンと同等になっていますね.
これは主に,アルミ合金を焼き入れ後に加工し,その後焼き戻すという,T6処理という工程を経ていることに因ります.
材料組成は,比重に変化がないので,普通のアルミ合金として示したA6061と,A6063ではほとんど変わらないと思います.
同じアルミニウム-マグネシウム-シリコン系合金ですしね.
しかし,オクでこのA6061-T6が用いられた製品とジュラルミン製の製品の価格調査を行うと,ジュラルミン製が2倍くらいの値段でした.
ジュラルミン製が2枚1セットで¥1万~¥2万くらいで,T6製が同じく二枚で¥5千~¥1万くらいです.
●ボルト
ボルトには加わる応力が大きいので,鉄が主流ですね.
アルミはまず使われません.
鉄の中でもクロムモリブデン鋼の強度が高いのは有名な話です.
データを示すと,
・クロモリ鋼(SCM435): 引っ張り強度 932 N/mm^2,降伏点 785 N/mm^2,硬度 300,比重 7.9 g/cm^3
となり,先に示した炭素鋼よりもさらに高強度であることがわかります.
つまり,ボルトの部分には強大な応力が加わるので,炭素鋼とか焼き入れ鋼ではなくて,クロモリ鋼が用いられたものが良いようです.
これも,「普通の鋼ボルトが使われた安物は止めておけ」ということの根拠になっていますね.
ボルトは,本体に圧入されたものとそうでないものがありますが,どちらでも良いようです.
前者は,取り付け時にボルトがグラグラしないが交換が容易でなく,後者は取り付け時にグラつきがあるものの交換が容易という特徴があります.
●ハブカラー(ハブリング)
これは,どんな高級ワイドトレッドスペーサを買っても必需品のようですね.
ワタシは,これまでのエボⅥ,エボⅢとスタッドレスを履かせる時にはKICS(協栄産業)のワイドトレッドスペーサを使用しており,ハブカラーは使っていませんでしたが,走行時の振動などは感じたことがありませんでしたけどね.
高級スペーサの中には,ハブカラー一体式のものもありますが,とくかく高く,色の選択肢も減ります.
ハブカラーは,単にスペーサのハブセンターを出すためのものと,ホイールのセンターまでも出せるようになっているものがあります.
三菱やトヨタの純正ホイールのようにストレートナットを用いるものは,後者の方が良いですね.
もちろん後者の方が高く,値段は2~3倍です.
今までは,ハブカラーも使わずに,ストレートナットで取り付けていて大変でしたからね.
●まとめ
なんでこんなこと書いたかというと,ワタシが良いワイドトレッドスペーサーを安く買いたいから,調べて忘れないように記録しておきたかったからです(^。^;)
いずれにしても,本体の材質はA6061-T6アルミ合金もしくはA2017ジュラルミン,ボルトはクロモリ鋼,ホイールのセンターまで出せるハブカラーも付ける,という方向で選定したいと思います.
色はできればブルーアルマイトが良いですね~(^^)
(2012.1.27追記)
最近は,ハブカラー一体式のワイトレも随分と安くなりました.
ハブカラー単体は相変わらず強気な値段なので,安いワイトレとハブカラーを別々に買うよりもお得な感じで,より選択肢が増えています.
さらに,ジュラルミンにT6処理が施された材質で,ハブカラーも一体のものが2枚1セットで¥8000くらいで買えるようになってきました.
ジュラルミンをT6処理すると6061のT6よりもさらに強度が上がっていて,引っ張り強度 が400 N/mm^2を越えてきます.
まだ色が金属色のみで青や赤は選べませんが,これも選択肢で有りですね!
それと,金属でも鍛造と鋳造があります.
材質と熱処理に加えて,鍛造であることの確認も必要ですね.
もちろん,ケチらずに高いものを買うなら,ジュラルミンで色付きもありますけど.
(2012.8.19追記)
最近気にしているのがワイトレの外径です.
ホイールがブレーキローターハウジングに接するところの外径よりも小さいスペーサーではダメってことはないですが,デチューンですよね.
私の車は,純正ホイールが160mmもあって困っています.
それに,微調整でワイトレ用の薄いスペーサーを追加するときなんかに外径が違うものをかませるとカッコ悪いですし.
だいたいは社外ホイール対応になっていて,145mmとか150mmとかですが,この通り5mmは差がありますので.
私の社外ホイールは150mm,純正ホイールなんて160 mmありますが,安くてよさげなのはだいたいが145mmです.
(2013.7.1.)
とりあえず,純正ホイール(スタッドレス)用には,外径と材質を重視して,160Φのジュラルミン/クロモリボルト製にしました.160Φは選択肢が狭く,ハブセン一体式までは叶いませんでした.
三菱の純正ホイールは,ハブセン+ストレートナットで付けますので,少々脱着は面倒ですが,ハブリングは入れてますし,ブレはありません.
(2022.9.1.)
10mm厚のワイトレは、スチール製にしましょう。
アルミはトルクレンチで締め付けると変形します。
スチールなので、錆止めを忘れずに。
https://minkara.carview.co.jp/userid/465425/car/393575/7023321/note.aspx
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2010/01/14 21:48:09
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