
福島県のいわき市美術館で開催されている、企画展『日本の巨大ロボット群像 ―巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現―』(HP→
■)を見てきました。トップ画像を見て気付く方もいるかもしれませんが、行ったのは8/10。連休開始の頃のあいにくの雨の日。いつものように、すぐブログアップできない人間です。
当ブログを読んでいただいてる方々には説明不要かと思いますが、よしつきは3度の飯よりロボが好き!(イヤ飯も好きですが…^^;)というヲタクなので、こういう企画が近く(自宅から下道で1時間半程度。全然近いよね!)で開催されてるのなら、行くしかないでしょ!ってモンです。
巨大ロボットモノの元祖は、御存知・鉄人28号。
意外かもしれませんが、アニメが放映される前に実写で放映されていたのです。鉄人は中に人が入るスーツで表現されていて、実は人間と大差ない大きさで巨大ではなかったようです。1960年(オサーンが生まれるだいぶ前!)ですから、原作マンガの鉄人の再現度は低く、なんというか不格好でした(←言葉を選べ)。後で知りましたが、スポンサーが日立製作所だったそうで、第1話は茨城県日立市でもロケが行われた模様!
その後は御存知、白黒アニメから始まって、何度もリメイクを繰り返し巨大ロボットの元祖の地位は揺るがない人気を博すのです(画像ナシ。普通に撮り忘れ←ヲイコラ)。
鉄人28号が巨大ロボットの元祖なら、人が乗って操縦するロボットの元祖は、これまた御存知・マジンガーZ。

コクピット部分が単独の飛行メカで、それが合体して戦闘準備完了とか、弱点を補うオプションユニットや戦力強化のための改造とか、そしてさらなる強力な敵の出現に主人公メカの交代(番組も変わって『グレートマジンガー』となってますが続きものとして描かれてます)等々、今でも普通にロボットアニメでやってるコトを、1970年代のアニメですでにやってるという先見性。間違いなく巨大ロボットモノのエポックメイキングな作品です。
合体ロボの元祖はゲッターロボ。

3つのマシンが順番を変えて合体すると、容姿も得意な戦術も違う3通りのロボットになるという奇想天外さ! 今となってはその合体に大いなる疑問がついてまわりますが、マジンガーZといい、ゲッターロボといい、原作の永井豪氏はホンットに天才!!

ただ…同じマシンが3機合体してるのに、ロボットになるとなぜ重量が変わるのか?(^_^;)
まぁおおらかな時代だったってコトで。
合体に無理があるゲッターロボに対して、合体に無理はないロボットが『超電磁ロボ コン・バトラーV』!

巨大ロボットの全高や重量などのスペックって、当時知らされてないし(多分明確に決めてなかったんだと思う)知ろうとも思わなかったけれども、コン・バトラーVのだけはみんな知っている。♪しんちょ~57メートル、たいじゅ~550トン(今考えたら、身長も体重も人のそれを表す言葉で、ロボットのものではないですよね)というエンディングテーマが有名ですが、やはり♪ブイブイブイ!ビクトリー!!の歌い出しは強烈に脳裏に焼き付いてますね。
コン・バトラーVといえば、オサーンが子供の頃は、夏休みになると毎日再放送をしていたものですが、夏休み期間中に最終回まで放送されず、クライマックスを前に強制終了してしまうという年中行事があったモンです(『無敵超人ザンボット3』も似たようなコトやってたなぁ)。再放送がぱったりなくなっちゃったのは、コン・バトラーVの敵のロボットが「ど○い獣」なんて名前だったためなんですかねぇ?
それまでの巨大ロボットは現代の科学の粋の結晶だったのですが、『勇者ライディーン』のライディーンは古代帝国製というのが目新しいところ。

ライディーンは飛行形態「ゴッドバード」に変形して体当たりするのが必殺技となりますが、このゴッドバードへの変形が割りと無理のない変形で(もちろん、今となってはやはり無理はあるんですが…^^;)姿がガラッと変わるのが衝撃的でした。
今回の企画展に描き下ろされた、宮武一貴氏の巨大イラスト。

日本の、ひいては世界のロボットアニメになくてはならない存在、メカデザイナー・イラストレーターの宮武一貴氏。

インタビュー動画も放映されたましたが、機械の持つパワーに魅せられたという原体験がこれまでのキャリアを形作ったと言えるそう。
全く関係ないけど、ランカ・リー似のキャラが描かれたTシャツが気になって気になって(^_^;)
その宮武氏が率いるスタジオぬえが挿絵を描いたコトで有名な、ロバート・A・ハインライン作の小説『宇宙の戦士』。

機動歩兵と名付けられたそれは、人が動力付きの装甲服を着る感じのシロモノで、パワードスーツとも言われ、巨大でもロボットでもないので今企画展ではちょっと異質な存在。

とは言え、御存知のようにその後の『機動戦士ガンダム』に出てくるモビルスーツの概念に絶大な影響を与えたコトで、なくてはならない存在ゆえの展示なのでしょう。

バイザーの所から顔を出して、君も機動歩兵だ!って感じの体験展示なんですが、踏み台はあっても低くて小学生には背が足りず、大人がやろうとすると踏み台が邪魔でうまく顔が出せないという、なんとも残念な仕様…(ToT)
そして、それまでの巨大ロボットとは一線を画す『機動戦士ガンダム』の登場。
何が一線を画したのか、今さら説明する必要もないと思うので割愛しますが、ちょっとマンネリ感が漂っていたであろう巨大ロボットの分野に差す強烈な光であったであろうコトは間違いありません。そしてその光はいまだ輝き続けています。

主役メカ・ガンダムのデザイン変遷。最初は後に言うガンキャノンであったという割りと有名な事実。当時のスポンサーである玩具メーカーの横やりがあったと思われる画があったりして紆余曲折を経て、なんとかかんとかみんなが知るガンダムになっていく工程が面白い。

床には実物大のガンダムのイラスト。スマートフォンのカメラでは画角に収まらないのがもどかしい。
ガンダムの登場以後、巨大ロボットはリアル指向に舵を切り、巨大というほど巨大でもなくなっていった。マジンガーZは全高18mで(見た感じ、それよりあるとオサーンは確信しているのだけれど、公式ではあくまで18m)、奇しくもガンダムと同じなのだが、人間が戦闘用に人型ロボットを運用すると考えた時、それ以上だと問題があるというコトなのだろう(ガンダム以降だと『伝説巨神イデオン』のイデオンが100m超。古代文明人によって建造されていて、無限エネルギーという不可思議な力を原動力に動いている、どちらかというとライディーンに近いロボットで、「リアル」ロボットというには遠い存在)。
人型ロボットが、人が操縦する戦闘兵器として戦争で使わるための理屈を模索して、「リアル」さに肉付けしていった時代とも言えるでしょう。

『太陽の牙 ダグラム』に登場するコンバットアーマーは、それまでの巨大ロボットのヒーロー性ともいうべき顔を排し、防弾ガラスで覆われたコクピットが頭部にありました。これも兵器としての「リアル」を追求したひとつの答えでしょう。

ウォーカーマシンと言われるメカを、タイヤなどの車輪を使う文化がない世界において、日常の移動手段や建機として使うのが『戦闘メカ ザブングル』の世界。他のリアルロボット系と違って、用途に応じてサイズがまちまちなのがウォーカーマシンの特徴の一つ。

バックに描かれた緑色の物体は、主人公が乗り込む戦闘用ウォーカーマシンのウォーカー・ギャリアの足首周辺。コチラはガンダムとかとほぼ同じくらいのサイズ感なのに対して、赤やカーキ色で塗られたウォーカーマシンは、一人乗りのほぼ移動手段に使われるコトが多いレッグタイプ。ウォーカーマシンでは最小のモノで、操縦者は我々の世界だとバイクのように身をさらしたまま操縦する。
ウォーカーマシンの特徴としてもっとも顕著なのが、多くの機種が人型ではないというコト。手足は点いているが人間のプロポーションではない。それはすなわち機能に特化しているから。腕の代わりにクレーンが付いていたり、掘削用のドリルが付いていたり、腕には人間の手のような5本指ではなく、物を掴めればいいだけのツメがついていたり、働くためのロボットとしての「リアル」を追求した答えがウォーカーマシンなのです。
兵器としてとことん追求したのが、『装甲騎兵ボトムズ』のアーマードトルーパー。

それまでの巨大ロボットは戦闘兵器として扱われても、主人公が乗るロボットは常に同じモノで最終回を迎える(『戦闘メカ ザブングル』で初の主人公メカの交代劇があって、それ以降主人公メカは途中で代わるというのがトレンドになりましたが)のがセオリーでしたが、『装甲騎兵ボトムズ』の主人公は決まった愛機を持たず、乗っていたアーマードトルーパーが壊れたら新しいモノに次々と乗り換える。さらに主人公が乗るのは常に、これと言った特別なモノではなくごく普通の量産型。このアーマードトルーパーも、全高は4mほどで巨大なロボットではなく、生身の兵士が持つ銃火器ですら条件付きで撃破可能というシロモノ。

一人の操縦者に与えられる最低限の武装で、量産し数を揃えて戦争するという思想で生み出されたアーマードトルーパーは、一人のヒーローが乗る絶対的な強さを持つスーパーロボットではなく、あくまで兵器としてのリアルさを極めた。そんなところに心惹かれたロボットヲタクは数知れず。いまだにガンダム、マクロスに次ぐ人気のロボットモノと言えるのではないでしょうか。

このストイックなまでのロボットの設定に、スポンサーは最後まで渋っていたそう。イラストは大河原邦男氏による企画用デザイン。その前にあるのが、大河原氏がスポンサーにギミック説明のために手作りした模型(貴重品!)。手前が放送当時売られていた玩具。
『メガゾーン23』に登場するガーランドは、バイク形態から人型ロボットに変形する。

バイクとは言え、コンパクトカー並みの全長(^o^) ロボット形態では全高4m弱でアーマードトルーパーと同じサイズ感。人型ロボットに変形するバイクとしては、これでも最小の大きさというコトなのだろう。ちなみに『メガゾーン23』には、主人公が乗るガーランドに敵対する勢力が使うハーガンというロボットがあるのだが、これはバイクが変形するのはコクピット周辺で、手足は付随するトラックに積まれている。トラックの荷台にバイク形態のハーガンが乗り込み、変形しつつ手足を接続させるという仕組み。だからハーガンのバイク形態は、割りと常識的な大きさ。例の山梨の後輩は、コチラの方が「リアル」で好きと言っていたのを思い出した。

それにしてもコクピットが狭い! アーマードトルーパーもそうだが、全高4mというのは、人が乗るロボットとしては最小限の大きさなのだろう。
『ガサラキ』に出てくるタクティカルアーマーや、『コードギアス』シリーズのナイトメアフレームも4m級でした(とは言え、ナイトメアフレームはその大きさで空も自由に飛べるし、大出力ビーム砲も撃つし、小さいけれどスーパーロボットと言っても差し支えない気がする…^^;)。

『ルパン三世』第2シリーズ最終話「さらば愛しきルパンよ」に出てくるラムダも4m級だそうです。小柄な小山田真希嬢も操縦時は窮屈そうでしたね。
「リアル」なロボットにするための理屈に視聴者が疲れてくると、「リアル」ロボットは下火になってきてしまいます。
小難しい理屈より、巨大ロボが暴れまわる爽快感が際立った『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』のジャイアントロボ。

往年の特撮番組がまさかのアニメ化!?と驚いたものでしたが、フタを開けてみるとロボが暴れまわるよりも、横山光輝作品に登場する様々なキャラクターが敵味方に分かれ、人対人の闘いの方が面白い作品になってました(^o^) まぁそこも細かい理屈は抜きにして、ただ単に楽しめる話作りが話題になりましたね。

展示の場所がミョ~に可笑しい感じのジャイアントロボ(^o^)
戦うサラリーマンが自然災害から人々を守る物語、『地球防衛企業ダイ・ガード』 個人的に大好きだったんだけど、イマイチ認知度が低い。そんなアニメが展示されていて嬉しい!

軍から民間警備会社に移管された戦闘用ロボット、ダイ・ガードは3つに分離してトレーラーで運搬し、現地でクレーン、ハンガーなどで組み立てるという昭和のスーパーロボットのような外観とは違い、運用が非常にメンドくさいロボット。のちに改良されて、3つのメカが単独で行動・合体ができるようになるんだけど、当初は無用の長物扱いで、一度の出動でいくら費用がかかるとか、戦闘で損壊した建物などへの補償がどうとか、これまで巨大ロボットモノが見てこなかった、あるいは目をつぶってきた部分に、民間会社なりの悲哀というのをプラスしてぶつかっていった作品でした。
勇者シリーズはあまり触れてこなかったんですが、『勇者王ガオガイガー』は別でした。

敵ロボと戦う時に周辺地域に迷惑が掛からないよう空間を歪めてバトルステージを作り出すとか、合体や強力な武器の使用にいちいち上司の承認を求めるとか、戦闘終了時に基地に帰投したガオガイガーを冷却するとか、ある意味荒唐無稽なスーパーロボットモノにウソとホントのバランスが絶妙なリアリティを加えている。
ちなみに、勇者シリーズでは『勇者特急マイトガイン』は観ていたんですけど、コレは完全にキャラクターデザインの田中敦子さんが描くキャラクター目当てでした(まったくどーでもいい話^^;)。

ありもしないフィクションの機械に、一定のリアリティを持たせる…その取り込みが内部透視図でしょう。

マジンガーZの内部透視図を担当した宮武氏は、空想上のパーツを見せても伝わらないから、誰でも分かるパーツを入れたと話す。それが脚にあるサスペンションとバネだそうです。このパーツがあるだけで歩くことができるメカだと一瞬で伝わると。

ガンダムでも最初の設定から内部透視図は描かれていました。その後「GUNDAM CENTURY」という非公式ムック本に描かれたイラストは、点検用ハッチを開いた状態で、これがロボットにも中身があり、かつそのロボットを運用するのに必要な仕組みだというコトを理解できるモノとなっている。このイラストをガンプラに落とし込んだのが、模型誌ホビージャパン別冊「HOW TO BUILD GUNDAM 2」に掲載された。第1次ガンプラブームの最盛期でした。

永野護氏が『重戦機エルガイム』で見せたヘビーメタルのムーバルフレームは衝撃でした。ロボットの内部骨格をすべてデザインし、動きの説明まで加えている。アニメで描かれるコトなんてないのに! このムーバルフレームは後に放映される『機動戦士Zガンダム』にも、ひいてはそれ以降のガンダムシリーズ全般に影響を与え、さらに後年ガンプラにも当たり前に再現されるコトになります。
永野氏はヘビーメタルなどのメカニックのデザインもやりつつ、キャラクターデザインまでやっていたという二刀流デザイナーなのです。
御存知のように、1986年からアニメ雑誌「月刊ニュータイプ」でマンガ『ファイブスター物語』を執筆を始め、途中休載をはさみながら現在も連載中。ただ2004年以降の長期休載の後、何があったのかは知りませんがロボット(モーターヘッドという)のデザインがガラッと変わってしまい(ゴティックメードという。画像右)、それ以降はオサーンもついていけず…。ただ相変わらず、ロボの内部機構までデザインしてるんだなぁと。
最近のアニメでは、めっきりロボットモノはなくなりました。ガンダムシリーズだけがなんとか続いてるくらい。時代によって視聴者の好みも変わってきますから、無理もないコトなのでしょう。とは言え、巨大ロボット黄金期である1970~80年代、一番アニメにのめり込んでいたオサーンとしては、やはり寂しいモンです。
緻密な設定に基づくリアルなモノでも、理屈なんかふっ飛ばして頭カラッポにして楽しむモノでもいいですから、過去の名作に縛られない新しいロボットモノをもう一度観てみたいものです。
<オマケ>
買うか買わまいか相当悩んで、結局買ったコチラ。
左の書籍版・日本の巨大ロボット群像。右は展示会のパンフレット。
本ブログを書くにあたり、展示会の内容がほぼ全部網羅されていて、大変助かりました。買っておいてよかった(^_^;)