
ロータリーエンジン(以下、RE)は、メタリングオイルポンプ(以下、メタポン)によってエンジンオイルがローターハウジング内へ供給されています。これは、エンジン内部の潤滑性を高め、アペックスシールやサイドシール、コーナーシールなどのシール類の油膜切れを防ぎ保護する役割です。
レシプロエンジンと比べるとREのエンジンオイルの消費量が多いのはこれが原因です。
■前期/後期のメタリング・オイルポンプの違い
RX-8後期型は、
メタポンによるオイル供給用のノズルの数が1ローターハウジング当たり2本から3本に増設され、メタポン自体も機械式から電磁式に変更され細かく制御できるようになりました。これがマツダのエンジニアが自信を持って世に送り出した
「電磁式メタリング・オイルポンプ(E-MOP)」でして、前期型の機械式メタポンと比べると、
シール性・潤滑性・耐久性が大幅に向上し、オイル消費量は大幅に低減されるようになり、大幅改良されました。
逆に言うと、メーカーがここまで大幅に仕様を変えざるを得なかったのが前期型のメタポン。後期型のE-MOPと比べると
オイルジェットの数が1本少ない前期型では、メタポンからのオイル供給の絶対量が足りない事をメーカーも認めたという事になります。
メタポンからのオイル供給量が足りないとどうなるか。
高回転高負荷の走行が続いて高温になった時にシール類が潤滑不良に陥り、それがサイドハウジングにダメージを与えてコンプレッション低下の原因となります。
■サイド排気&NA-RE(自然吸気のロータリーエンジン)の宿命
排ガス規制をクリアする為に高圧縮NA&サイド排気として生まれた最新のロータリーエンジン「RENESIS」、それは高温の排ガスによりシール類とサイドハウジングも高温になり油膜切れを起こしやすいエンジン。そして、NA-REな故、街乗りでもある程度上まで回さないとトルク不足により走りづらく、他のRE車と比べても常用回転数が高いエンジンでもあります。これらが8のサイドハウジングの寿命が他のRE車よりも短い主な原因です。
サイド排気をやめてペリ排気に戻せばサイド排気が抱える上記の問題点は解決できますが、当然今の環境基準を満たす事はできませんし、何よりマツダが苦労して生み出したRENESISの技術を否定し、ロータリーエンジンの未来をも否定する事になります。
■後期型のE-MOPを前期型に移植できる?
では前期型8で高回転時の潤滑不良の問題をどうするか。対策された後期型のE-MOPに交換したいところですが、
構造も制御方法もまるで違うので互換性は全くありません。ショートエンジンごと移植しようとしても、後期型はメタポンにオイルを供給するオイルパンの位置が変わってオイルラインも異なりますので移植は不可能です。それに、E-MOPを制御するプログラムも前期型のコンピュータには入っていません。
■エンジン内部の潤滑性を高める他のアプローチ
結局、前期型は前期型のメタポンをそのまま使うしか手がありません。コンピュータチューニングにより各マップのメタポン側のエンジンオイル供給量を変更して増やす事はできますが、最大吐出量についてはメタポン自身のキャパの問題もあってこれ以上変更できません。
そもそもメタポンはエンジン内部にエンジンオイルを直接供給する事でガスシール潤滑を行っているパーツなのだから、同じくエンジン内部に入るガソリン燃料にオイルを混ぜて潤滑性を高めてエンジンの保護をしようというのが
「ミクスチャーオイル」という考え方です。
■ミクスチャーオイルの条件
ガソリンに混合するオイルは何でも良いわけではなく、普通のエンジンオイルを入れるのはNGです。
・容易に低温ガソリンとも混ざる相溶性に優れている
・燃焼による不純物堆積物が無く、エンジン清浄性に優れている
・燃焼による大気放出を配慮した良い生分解性を有している
これらの条件を満たす必要があり、それがミクスチャーオイルというわけです。昔は2サイクルオイルを混ぜていたようですが、燃料フィルターが詰まってしまうオイルもあったようなので、今は専用品であるミクスチャーオイルの方が良いでしょう。また、オイルの種類だけでなく、希釈率を守る事も重要です。
■今回購入したミクスチャーオイル
ミクスチャーオイルは複数のアフターパーツメーカーから販売されていますが、今回私が購入したミクスチャーオイルは、
DO.ENGINEERING(ドゥーエンジニアリング)
ロータリーエンジン専用ガソリン添加オイル X-RS(1L)
セール価格:\3,150円(送料別)
http://www.do-eng.jp/item/10005-77101/
ガソリン満タン時に一缶使い切りのミクスチャーオイルも多いのですが、これは1L缶で量が多く、
ガソリン10Lに対し30~40ccの比率で混合して使用するため、1L缶で何度も使えるコストパフォーマンスの高さに惹かれました。もっと惹かれたのは、
「ル・マン24時間レースに優勝した787Bにも使用された添加剤と同等の性能」という商品説明の一文であった事を否定しません。
■サーキット走行でエンジンを壊したくない人に
明日の1/11(土)は、鈴鹿サーキット 国際レーシングコースで
「第15回鈴鹿チャレンジクラブグランプリ・タイムアタック大会」が開催され、それにエントリーしています。同コースは国内のサーキット場の中で全開率が最も高いハイスピードコース。その分、前期型の8では高回転高負荷の走行が続いた事による潤滑不良が発生しやすいコースです。
載せ替えたばかりのニューエンジンを早速壊したくないので、エンジン保護の為に今回購入したミクスチャーオイルを入れる予定でして、当日一緒に鈴鹿を走る仲間にも提供致します。
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Posted at
2014/01/10 00:00:00