
「A Sports Car Like No Other.(比類なきスポーツカー)」。RX-8という車にピッタリのキャッチフレーズだと思います。フリースタイルドア(観音開きのドア)を採用し、大人4人乗車でき、MTとATを選択できて、ファミリーカーとしてもスポーツカーとしても使える懐の深さがあり、9,000rpmまでスムーズに回る2ローターNAのロータリーエンジンを搭載したスポーツカー。REの部分を除いても、こんなコンセプトの車は世界中どこを探しても他にありませんし、残念ながら今後世に出てくることもないでしょう。
■唯一無二であるが故に
8オーナーの場合、次に乗る車の選択に苦悩される方がとても多いと聞いています。なぜなら、上記のように8と同じコンセプトの車が存在しないからです。既に8は生産終了していますから、新車の8を購入することもできません。永遠に8を乗り続けるのは現実的にかなり難しいですし、家庭内の事情や突然の事故やエンジンブローが原因で8を降りざるを得ないケースもあります。近未来に車を買い替える予定が無くとも、次の車の候補を考えておくべきかと思います。そんな中候補に挙げた車の一つとして「AudiTT」がありました。
■AudiTTの主要諸元
AudiTTは最近3世代目が発売されたばかりで、FFモデル、オープンカーモデル、AWD(4WD)のquattro(クアトロ)、SグレードのTTSがあります。quattroモデルの主要諸元はこちら。
全長(mm) 4,180
全幅(mm) 1,830
全高(mm) 1,380
ホイールベース(mm) 2,505
総排気量(cc) 1,984
車両重量:1,370kg
エンジン種類:直列4気筒DOHC インタークーラー付ターボチャージャー
最高出力:[ネット]169kW(230PS)/4,500-6,200rpm
最大トルク:[ネット] 370Nm(37.7kgm)/1,600-4,300rpm
駆動方式:quattro (フルタイム4WD)
トランスミッション:6速 Sトロニックトランスミッション
ステアリング位置:右
Audi TTS Coupeの方はハイブーストモデルで、パワーやトルクなどが違います。
最高出力:[ネット] 210kW(286PS)/5,300-6,200rpm
最大トルク:[ネット] 380Nm(38.8kgm)/1,800-5,200rpm
車両重量:1,410kg
ちなみに8のボディサイズはこちら。
全長(mm) 4,435
全幅(mm) 1,770
全高(mm) 1,340
ホイールベース(mm) 2,700
車両重量:1,310kg
■ファーストコンタクト
Web上であれこれ情報を仕入れても実車を直接見ないことには話にならないと思い、コンタクトを取ってAudiのDラーへ。実写を目にして思った事は、上品で優雅な佇まいを身に纏う大人のスポーツクーペという印象でした。3代目AudiTTの特徴である液晶ディスプレイを採用したバーチャルディスプレイのメーターや地図は見やすく、視点移動が少なくて済むのがGOODです。ディスプレイに表示されたスピードメーターもなかなかカッコいい。ディスプレイ中央にアナログタコメータ+デジタルスピード表示のレイアウトはTTSではないと選択できないのが残念。
AudiTTは乗車定員4名(ロードスターモデルは2名)となっていますが実際に後部座席に座ってみたところ、ルーフのガラスに頭ぶつけるし狭いし大人が座るのには無理があります。まさにエマージェンシーシートという感じですが、それでも手荷物は置けるスペースがあるのは良いです。その点、8は後部座席にも大人が座れるスペースが確保されているので優秀ですし、フリースタイルドア(観音ドア)のおかけで、運転席(助手席)を開けたらそのまま後ろのドアを開けて手荷物を後部座席に放り投げる事が出来るのがとても便利で重宝しています。
■実走インプレッション
まずは街乗りインプレッションから。ステアリングにチルト&テレスコピック機構があり、ドライビングポジションが合わせやすいです。これは、AudiのエントリーモデルのA1にも採用されており、この点は国産の車も見習って欲しいです。2Lターボモデルなので、低回転領域からでもアクセルを踏めばグイグイ加速します。パワーもトルクも十分。デュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)である「Sトロニック」は特に違和感はなかったのですが、マニュアルモードでシフトノブを手前に引いてシフトダウン、奥に押してシフトアップは感覚的に逆で駄目なのと、マニュアルトランスミッションモデルが無いのが非常に残念。死角は8より多くて最初の運転の際に怖く感じたのと、ブレーキペダルのストロークが短くて初期制動力がちょっと強めなのが気になりました。後者はコントロール重視のブレーキパッドに交換したら解決されるのだろうか?
■サーキットインプレッション
街乗りでは明らかにパフォーマンスを持て余すので、走行ステージをサーキットに移します。場所は鈴鹿サーキット 国際レーシングコース。ドノーマルのままサーキット走行時のパフォーマンスを探ります。最終コーナー立ち上がりでアクセル全開。TTSの286PS、38.8kgmの大パワー&大トルクが炸裂して身体がシートに押しつけられる加速を初体験。スピードメーターはあっという間に180km/hを超えました。びっくりしたけどドッカンターボではなかったので、恐怖心はそれほどでもありませんでした。7,000rpmがレブリミットみたいなのでそこまで回そうかと思ったのですが、6,000rpmで自動シフトアップでした。8で9,000rpmまで回している事を考えると物足りないな。
1,2コーナーに進入。AWD(4WD)は基本アンダーステアという話は聞きますが、TTはAWD(4WD)にして結構曲がります。でも8ほどではない。S字セクションでは重量物が遠心力で外に引っ張られる感じがして、8みたいなひらひらと舞うようなコーナリングはできないと感じました。TTSは8よりも100kg重たいのですが、それがS字の切り返しで顕著に出ました。
AWD(4WD)でFR車と同じ走り方をしたのも原因の一つだとは思いますが、特にS字2個め、逆バンクでインにつくのが難しく、8と同じラインをトレースする事は難しかった。8でS字セクションを全開で走ると凄くエクスタシーを感じますが、TTでは感じることは難しいでしょう。TTSであっても、コーナリング速度は8の方が絶対的に速い。ESP機能(8でいうDSC)をONで走りましたが恐らく今回の走りでは介入した感じが全然なくて、電子制御デバイスの介入による失速感や走りづらさはありませんでした。また、車の剛性感やquattroシステムによるスタビリティの高さも感じる事ができました。
■AudiTTまとめ
今後投入が検討されているTT RSは別ですが、このTT/TTSはサーキットをガンガン走ってタイムを削る楽しみ方をする車ではなく、スポーツカーというよりはプレミアムクーペなクルマ。子供が手を離れて資産に余裕があるジェントルマンが乗るイメージ。あのエレガントなフォルムに魅了されたのであれば、所有感や満足感が高いと納得できると思います。
走りの方は高パフォーマンスかつスタビリティが高いのですが、運転の操作のバランスがデバイス寄りでドライバーが運転しているぞという気持ちにあまりならない。いわゆる人馬一体感が高くなく、運転していて楽しい・最高というテンションまで上がりませんでした。トランスミッションがATしか選べないのも原因の一つでしょう。AudiTTの車の性格と私がクルマに求めているベクトル方向がちょっと違うかなと思いました。
■車両価格
今まで避けてきた話題を最後に持ってきました。TT クーペ 2.0 TFSI クワトロで589万円、TTS クーペ 2.0 TFSI クワトロで768万円。DラーでTTクーペ クワトロの見積もりを頂きましたが、支払総額金額は650万を超え、Sローン組むと700万を超えました。私のお給料では背伸びしても到底手が届かない金額帯です(汗
ただ、TTクーペは出たばかりでリセールバリューが期待できるので、残価設定ローンのAudi Sローンを3年で組むとなるほどという金額になりますが、その場合でも結構無理しないといけないし、3年後の時点で車を手放す・Audiの他の車に乗り換える・残価を一括で支払う事という選択を強いられます。外車は新車で買って保証がある間のみ乗って次の車に乗り換えた方がお得という話を聞きますが、好きな車を長く乗りたいと思う私の気持ち的には抵抗があります。
以上の事から、生活などいろいろ犠牲にしてまでTTを買いたいという気持ちにはなりませんでした。今回のイベントでTTは良い車だと言うのは認識できましたが、車両金額的に私の身の丈に合っていない車だと思いました。
最後に街乗りで試乗したTTはFFモデル、鈴鹿サーキットでの運転はAudiのイベントであることを付け加えておきます。次回は鈴鹿サーキットで開催されたAudiのイベントについてレポートしたいと思います。
Posted at 2015/11/13 23:59:59 | |
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