
このブログは、あくまでも登場する個性的な車個々に対する主観です。
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350psのポルシェは官能的だったが、力強さが足りなかった。
477psのRC-Fは力強かったが、色気が足りなかった。
そこで今回は、BMW M3を試乗させてもらった。
試乗させて欲しい旨を伝えてから暫く経っていたが、やっとメール連絡が来たのだ。
「うちの車なのに、あちこち貸し出してなかなか戻ってこないんですよ」
ディーラーに行くと、営業マンはそう言った。
「では早速まいりましょうか」
招かれるままエレベーターに乗り、ドアが開いた。
薄暗い立体駐車場の中に、普通の3や5シリーズ、i3などの試乗車が並ぶ。
その中で、営業マンがリモコンキーを押したらしい唯一のM3が、今では定番となったLEDのスモールライトを点す。車体は薄めのブルー。M3のみに適用される、なかなか個性的な色だ。
営業マンは先に立ち、運転席のドアを開けながら「駐車場は私が運転します」
俺は革張りの助手席に収まる。営業マンは運転席に乗り込んで、STARTボタンを押した。
M3が、荒ぶる声をあげる。だが俺は、想いとは違う音色に違和感を覚える。その違和感を残したまま、車は立体駐車場のスロープを降りる。傾斜と平面との組合せで出来た下り坂、一瞬鼻先から「ザッ」と音がする。前面から来る空気をダウンフォースに変えるため、やはりあごは低い。
そのままディーラーの裏路地に出て、道幅が広くなったところで運転席を譲ってもらう。
輝度が薄めのマットな液晶に表示されたオドメーターは、9000km弱を示している。
『このくらい走っていれば、思い切り回しても文句は言われまい』
ほぼ新車だったポルシェを振り返り、内心そう思いながら試乗コースに出る。案の定、目的地は直線とUターンを行う、出島のような工業地帯だ。ただ、水温が思うほど上がっていないのが気になった。いくら試乗車とはいえ、暖気もできないままにぶん回すのはかわいそうだ。
まずは直線を防波堤までゆっくり走り、少し速めのUターンで車体剛性を見る。まぁ、それまでの道のりで、粗方のことは分かっていたのだが。。。
エッジの利いたインテリアからもうかがえる全体の硬さは、緩いオートマに慣れた身に「硬派」を思い出させる。俺は、まだ温まっていないエンジンに気を使いながら、Uターンを終えるあたりからアクセルを開けた。
エンジン音に違和感を残したまま、レブは上がる。だが、ボリュームだけが大きなエンジンは、思いの外トルク感を伝えてこない。水温が上がりかけているのを確認し、『次は全開だな』と思っていると、横から声が飛んできた。
「あそこの信号を、右にお願いします」
営業マンの言葉に、『あれって、ディーラーに戻る道じゃないか?』と思いながらも、営業マンの指示に従った。
試乗後、店内にて営業マンが聞いた。
「ゆうきさん、正直に言って、どうでしたか?」
「期待外れでした」
「本当に正直ですねぇ! 横から伺って、そんな気はしていましたが。。。」
「RC-Fは速かったけど、いくらでも走ってください、踏んでくださいっていう営業マンの言葉に反して、色気なくって2往復でやめたんですよ。あれより50psほど少ないけど、それ以上にトルクが無いように感じ、ポルシェより80psも多いのに、それほどの違いは感じなかったんですよね」
パワーウエイトレシオが2を切る車の感覚がどうしても残ってしまい、どれに乗っても満足できないのかもしれない。
そのあと営業マンは数々の質問を重ねてきたが、ルックスはBMW、色気はポルシェ、速さはレクサスの順位のまま購入の勢いにまでには到底至らなかった。
試乗後の話で聞いたところ、今のM3は直6・3Lのターボらしい。頭の中は以前乗ったV8・4Lと思い込んでいた。道理でフィーリングが違うはずだ。冒頭の違和感の正体が分かった。
いずれにしても、
M熱は、冷めた。。。
Posted at 2015/12/26 22:53:54 | |
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