
'70年代初頭、ガルフ・オイル社のスポンサードを受けたJWAチームのポルシェが、サーキットを席巻していました。
そうした史実とは別に、ガルフブルーをまとったマシンの強さを、世間の人達に決定的に印象付けた作品があります。
スティーブ・マックイーン主演の映画、『栄光のル・マン』です。
先日のブログを書くにあたり、久々にDVDを引っ張り出しちゃいました (^ ^;
オールド・レースファンのみなさまには先刻ご承知のことばかりかと存じますが...
トリビア小ネタ満載の美味しい作品、この機会にご紹介させてください。
まだご覧になったことのない方に予めお断りしておきますが、相当なポルシェ○鹿もしくは重度のフェラーリ馬△でないと、“意味不明” かも知れません (苦笑
なんたって、登場人物はほとんどセリフをしゃべらない (^ ^;
表情と、眼差しと、あとはマシンの咆哮がすべてを語る、そんなタイプの映画です。
Steve McQueen/Le MANS
物語の舞台は'70年のル・マン。
主人公のアメリカ人レーサー・デラニー (マックイーン)、ライバルのフェラーリ512Sの男・ストーラー、デラニーと絡んだクラッシュで一年前に夫を亡くしたリサ...
登場人物たちの心のアヤを微妙に織り交ぜながら、レーサーとその家族、チーム、運営スタッフ、観客らサーキットを取り巻く人々の24時間が、ドキュメンタリータッチで描き出されます。
1970年6月13日に開催されたル・マン24時間でクランクイン。
サルテサーキット各所にカメラを設置したほか、マックイーンが所有するポルシェ908/02にも三台のカメラを仕込んでレースにエントリー。
この時撮影された貴重な実戦レース映像と、その後五ヶ月にわたりトップレーサーと実車を使用して撮影された白熱のバトル走行やリアルなクラッシュシーンが、巧みに編集されています。
これが相当よくできていて、どこまで実戦でどこが後撮りかを区別するのは難易度大 (^ ^;
でも...
レース序盤はポールポジションの白いポルシェ917LH (ザルツブルクの25号車) を、主人公の水色のポルシェ917K (JWAガルフの20号車) が猛追するという実際の展開に沿ったシナリオなのですが、よっく見ると、時々赤いフルフェイスのヘルメットが映ってますネ !
スイス国旗の赤いヘルメットは、ワークス・ポルシェのエース、ジョー・シフェール* のトレードマーク。
マックイーンは映画化にあたり、ポルシェのエースカーであるシフェール/レッドマン組の20号車を、主人公デラニーが駆る車両に設定しました。
*
シフェール御本人は、映画開始16分前後にチョイ顔見せで登場しています。
レーシングスーツのデザインも、HEUERのワッペン等シフェールのものをモチーフにしています。
しかっし ! デラニー役のマックイーンが劇中で着用しているのは紺メタのジェットヘル。
相方の俳優も白いジェットヘルだし...赤はNGでしょ (苦笑
21号車に乗るチームメイトのリッター役には、実戦でペドロ・ロドリゲスが使っているものを忠実にコピーした銀のヘルメットを被せているのに...マックイーン、ぬかったな ニヤリ
ま、マニア的には、こうした細かい突っ込み処を見つけるのも愉しいですけどね (笑
それに赤ヘルの20号車が映っていれば、そこは確実にシフェールの貴重な実戦映像なわけですし (^ ^b
この映画の撮影中、シフェールはマックイーンと親交を深め、レーサーとしての演技指導をしたりもしたようです。
また自らのスポンサーHEUER社** のクロノグラフを劇中で使用するよう勧め、これが縁でマックイーンは同社のイメージキャラクターに。
画像は撮影中のひとコマですが、ホントに愉しそうですね (^ ^
シフェールが抱えているのは、件のリッター役が被っていたロドリゲス仕様のヘルメット。
とすると、後撮り時に21号車のスタント・ドライバーやってたのもシフェールだったの !?
**
現TAG HEUER社。スイスの高級時計メーカーで、スイス人であるシフェールのレース活動を支援していました。
ほかにも注意して観ていると、カメラカーの908/02がフェラーリ軍団にぶち抜かれる瞬間を場内カメラが捉えていて、笑いを誘います。
真に迫ったオーバーテイクシーンは、こうして撮影されていたんですね (^ ^;
また脇役として数台のポルシェ911が出演しているのですが...
そのうちの45号車と66号車、これ、911Rじゃないすかっ !?
当時の資料を調べてもRはエントリーしていない (同車番はいずれも911Sでした) のでこのシーンは後撮りと思われますが、モノホンの911Rのレーシング走行を見る機会なんてなかなかないし、これまた超稀少な映像といえますネ b(^◇^
この時代のレース映像、いろいろ残っているものの、画質の点で難があるものがほとんど。
その点この作品は、レーサーでもあるマックイーンが拘りぬいたレースの “リアリティ” が70mmフィルムに鮮烈に焼き付けられていて、その迫力とディテール描写の美しさには只々感動するばかりです。
フィクションではありますが、'70年代のレースシーンを現代に伝える貴重な映像資料として、ゼヒ家庭に一本ご常備を。
観るたびに新しい発見があると思います (^_-)-☆
ご覧になる時は、もちろんリモコン片手にコマ送りでね (笑