現在の愛車を乗り潰そうと考えている私にとって、電装系ましてや車の中枢とも言えるECUを弄ることなど考えてもみなかった。
みなさまのレビューを拝見させていただく限り、リスクを伴う作業のようにも見受けられ、また高額なことも一因だった。
吸排気系→スロコン装着→ボディー補強→ブレーキ強化→ボディー補強と改良を積み重ねてきたものの、その度確実に微増を繰り返す車重に、もはやスロコンによる補正では解決しない事態になってしまっていた。
求めたのは費用対効果と耐久性であり、年甲斐もなくかっ飛ぶ走りよりも、排気量に見合った低速域から淀みなく沸き上がるトルクから繋がり、中高速域まで吹け上がるNAらしい上質なフィーリングであった。
欲を言えば燃費も改善させたいが、スバルの5ATは4ATのそれよりギア比がクロスしており、特に5速目は4ATの4速目よりローギヤードなためそもそも燃費には不利なのだが...
さて、肝心なのはどこのメーカーのチューンドECUが優れているのかだが、EJ20ターボに対応するものは多々あれど、残念ながらEZ30に対応しているものは殆どない現状である。
最右翼はオリエントワークスのようだが、さすがにそこまで遠征する気にもならず、またネットで出回っている吊しのものはリスキーだと思われるので却下。
そんな中で目に留まった聞き慣れないショップ...『ECU.com』。都内なので近くもあり、またスバルフェアと題して破格のプライスだったので、気付けば電話をかけ翌日にはショップへ向かっていたという始末...(苦笑)
みんカラを徘徊すると、コペンとデリカD5のユーザーが多いようだが、ポルシェやフェラーリなどの高級外車まで手掛け、ユーザーからは概ね高い評価を得ているようだ。
肝心なEZ30の前例はないようだが、「リスクはないんですか? また車検は問題ないんですか?」と電話で尋ねると社長に一笑に伏されてしまい、思い切ってショップを訪問すると、およそ車のチューニングショップとは思えないすっきりした店構えに正直驚いた。
店内には簡単な工具が並んだ棚とバッテリーチャージャーがぽつんと置かれているだけ。
待ち時間を過ごすためのソファーの脇に、社長の作業デスクが置かれモニターが並び、それはまさにソフト屋さんといった印象であった。
作業依頼書兼同意書(!?)にビビりながらも、改善要望点と必要事項を記入する。
改善要望は三点だけ。
●出足のとろさ(現状はスロコンにて対処)
●登坂路でのパワーダウン及びキックダウン現象
●高速巡航時の燃費の悪さ
なんだか病院に初診でかかるときみたいな感じがしなくもないのだが...
主治医はノーマルデータを吸い出してからデスクに向かい、気難しい顔で1時間ほど、モニターを眺めてはキーを叩き、またモニターを眺め...という作業を繰り返していたが、突然「そっかぁ! こいつのクセが解ったぞ~!!」と吠えた(笑)後は、まるで好きなおもちゃを弄る子供のように楽しそうにキーボードを叩いていく。
仕上がった(?)ECUを車両に装着するやいなや、運転席に乗り込んだ社長はショップを飛び出して行った。これまでに聞いたことのない快音を奏でるエキゾーストノートと共に...
30分ほどで戻ってきたアウトバックは、スポーツカーと見紛うほどのアイドリング音である。
「ちょっとやり過ぎたかなぁ...」と社長。
「ディチューンするんですか?」との私の問いに、「しないよ~(笑)」と返す社長。
「でも、ちょっとオートマが弱ってるね~」との社長の言葉に、この日は同ショップのもう一つの売りである『オートマコート』もプラスして施工していただいた。
ATの繋がりもスムーズになり、シフトチェンジの際のメリハリが出るので同時施工をお勧めしたい。
ボンネットを開けるとガレージに焦げた匂いが立ち込めた。
「どこか配線が燃えてない?」と居合わせた一同騒然となったが、後日ディーラーで確認したところスリーラスター(防錆剤)を塗布した車両は熱を帯びるとこのような匂いを発するとのことで安心した。
「ちょっと乗ってきてごらん。 最初の10分は回転上げないでね。それ過ぎたらどれだけ回してもいいから♪」と社長に言われるまま、(都内のどこでそんなに飛ばすんだ?)と内心思いながら試走に出掛ける。
まずはスロコンを外しているのに、車がスッと出ることに感動!
しかも電気的に仕掛けられたような”炸裂する”という獰猛な加速ではない。
右足の動きにエンジンがリニアに反応する様は、まさにNAエンジンの真骨頂と言えるもので、封印されていたEZ30Rの潜在性能を実にうまく引き出すことに成功している。
10分が経ち、アクセルをラフに踏み込むと凄まじい快音を轟かせて加速していく。
Touch-BRAINのモニターを見ると、点火時期を早め燃料を大幅に削っていることは一目瞭然だ。
しかしどれだけ気持ちいいんだろう...
ここまで低中速トルクを稼ぎ出し、上までスムーズに回るようにチューニングしたのに、燃費は悪化するのかと思ったがむしろ多少改善されたほどだ。
市販のEZ30用スポーツECUは皆無に等しいが、わずか1時間で特性を解析し磨き上げるとは恐るべきチューナーである。
ショップに戻ると「どうだった?」と社長にんまり。
「もはや別物ですね!(笑) でも、燃料削り過ぎじゃ...」と感想を述べると、「大丈夫! もともと濃すぎるくらいだからこれで丁度いいの」と社長のノウハウを聞かされ安心した。
ECUチューンと言えばリミッターカットが挙げられるが、これまた当然の如く施工内容に含まれるが、オジサンはまだここまで回せていない...(苦笑)
一瞬で80km/hまで吹け上がるトルクフルで滑らかなフィーリングを得られただけでも大満足なのだから。
尚、オプションで『クルーズカット』も施工していただいたが、帰り道の高速走行で試したものの、残念ながらこの段階ではクルコンのリミッター解除は完成しておらず、その旨を社長に告げると翌日には「謎は解けたからいつでもおいで」とのこと。
翌週お邪魔して再施工していただいたが、見事にクルコン設定速度は無制限になった。
アウトバックにおいてクルコンの設定上限速度はメーター読みで110km/h(実速105km/h)であるが、これをカットする訳だから、たとえ僅か+αであっても長距離高速移動時にはかなりのストレス軽減に繋がる。
ちなみにユーザー側の希望によるリセッティングは無料とのこと。
車好きな敏腕社長がセッティングすることで新たな魅力を発揮する愛車に、これまた車好きな拘りユーザーには魅力的な工賃はきっと満足のいくものと信じている。
最後に「これ、本当に前期型? ボディー剛性がハンパなくしっかりしてていいじゃん♪」と社長からお褒めの言葉をいただいたことを付け加えておきたい。