2017年12月21日
諸般の事情によりフィエスタのメモもこれで最後となりそう。時代は動く。庶民は抗うことは出来ずに流れに身を委ねるしかない。
ということで、フィエスタに3年と少々で15,000kmほど乗ってみての感想と気が付いた点をまとめてみる。
前回は主にエンジンについて書いたので、それ以外の点を一回で。
デザイン
当時、新車で購入できるコンパクトカーとしては一番いいデザインだと感じた。
優秀なデザイナーによって考えつくされたフォルムとライン構成で、小さい車なのに寸詰まり感もなく、カッコいいと思う。何やら高級感まで漂うほど。
どこぞのメーカーのコンパクトカーのような安物感やお子様向けの幼稚なギミックもなく、いい大人の感覚にストンと収まる外観だと思う。前席の余裕は十分だし、後席も175cm程度の大人なら問題なく座れる実用性がある。荷室が狭いのはしょうがない。リアシートはフォールドするがフラットにはならない。これも仕方がない。それを求める車ではない。
DCT
DCTが想定する設定にはまっているときはダイレクト感、スムースネスとも良好で、走りに資する部分がある。
パドルがないので、シフトについているスイッチでマニュアル変速をすることになるが、これがさほど使いやすいものではない。そして、変速のレスポンスも良くはない。オートのまま効率的な領域で回転を上げずに運転するのがいいようだ。 合流時に1段下げて加速するといった使い方では有効だが、マニュアルシフトを多用するのは向かない気がする。
市街地走行時や極低速域では乾式DCTの特性とその設定から、思うとおりに走れずに、ギクシャクすることがある。スムースなトルコンATとの比較では今一つと捉えられてしまうが、その分、クイクイッと小気味よい走りが得られるのだから、自分としては許容範囲ではある。
足回り
常識的な走り方+αの範囲では、非常に良くできていると感じた。
乗り心地は思いのほか良かった。柔からめでも堅めでもないが、フワついたところもなく、適度にしなやかで軽快。履き心地の良いスニーカーのよう。
通常の速度でのコーナーは、思い通りのラインで曲がっていくことができる。それがただ単に正確にトレースできるというだけではなく、なぜかキビキビ曲がっていき、運転が好きなドライバーはウキウキとなる。これが、フィエスタの一つの美点。
ただし、極低速でハンドルを切った状態からアクセルを踏み込むと、トルクステアが顕著で、FFであることを強く意識させられる。
さらに、高速道路に乗ると、これも一つの特筆すべき点。
一般の高速道路の流れに乗る程度でのスタビリティはこのクラスのクルマとしては驚くほど高い。二回りぐらい大きい車に乗っている感覚がある。過去に乗ってたPassat(4Motion)、A6 ARQや今乗ってるF11 528の走行感覚からしても、さほど遜色がない。いきなり乗り換えても違和感なく走ることができる。さすが欧州フォードと言ったところか。
足回りの構造や部材にコストがかかっているようには思えないが、設計とセッティングの妙でここまで仕上げることができるのだから、賞賛に値する。
燃費
1Lエコブーストという響きから期待されるほどの燃費は達成できなかった。自分の環境ではよくて15km/L。これはやむを得ない部分があって、すべてのセッティングが燃費志向ではないからだと思う。要求水準の高い欧州のドライバーを満足させるため、走り優先なんだと思う。
その代り、運転が面白いのだから、どちらを優先するかの問題。修行のように燃費優先の運転をすれば遠出で20km/Lの達成も可能だとは思う。それ以上を望むのなら、フィエスタを選択すべきではない。
シート
前席のシート、これは良い。長時間運転しても腰が痛くなることはない。サイドサポートも十分なうえにコンパクトカーとしては座面の前後長が異例に大きい。こんなに大きいのは他にないのでは?だからゆったりと座れる。このクラスのクルマとしては良くできていると思う。ただし、シートバックの調整がダイヤル式なのは微調整にはいいのだが、倒したい時に不便。
後席は座り心地を云々するほどのものではないが、身長175cmの自分は問題なく座れる。
その他
ホットマゼンタという色は艶が強調されていい色だ。キャンディーブルーもよかったが。
ナビの取り付けが困難というのが最大の問題点かもしれない。CDの挿入口を塞いで取り付けているので使い勝手は悪くないが、無理やりの後付け感はありあり。
テレスコピックの調整幅、特に前後の調整幅の大きさにビックリ。こんなに調整できる車は初めて。
ドアロックでドアミラーがたたまれる。ロック解除でミラーが戻る。エンジンオフ時ライト照射とともに不要だと思う。
フロントウィンドウに入っている熱線は、当初気になった。今はもう慣れたが、これも不要。
ATシフトをドライブに入れる際に勢い余って「D」を通り過ぎて「S」に入ってしまう。横に動かして「S」に入れる方式の方がベター。
メーター内のインジケーターが一種類毎しか表示されず、瞬間燃費、累積燃費、走行可能距離など、切り替ええて一つ一つ確認しなければならないのが不便。
後退時に左のミラーが自動で下がらない。これも相当不便。
ハンドルのレザーの質はいまひとつ。
自分としてはブレーキ容量が不足気味と感じる。
左足のフットレストのスペースがあるのに何故にカーペットのまま?樹脂カバーくらい付けて欲しいものだ。
室内の大きさゆえか、全席にルーフアシストグリップが付かない。少なくとも後席はあった方が良いと思う。
というふうに、不満が無いわけではないが、価格、その走りと満足感を考えれば、コンパクトカーとしては出色の出来だと思う。欧州でかなりの台数が売れて、ガンガン使い倒されている理由が良く分かる。 近所でのお買い物から日本全国の周遊まで難なくこなせるクルマだ。
返す返すもフォードが日本から撤退したのは残念だ。
Posted at 2017/12/21 20:24:36 |
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フィエスタ | クルマ
2017年10月18日
フィエスタも購入後3年経過したが、いまだ15,000kmに到達していない。とはいえ、概ねクルマとしての素性は分かったので、その印象を何回かに分けて書いてみる。
前から考えてはいたのだが、タイミングを逸してしまっていた。その間、フォードの日本撤退もあったし、本国では新型も出た。今さら無意味では?と躊躇もしたが、偶然の巡り会わせでたまたま購入したフィエスタという、日本では超マイナーなクルマが、フォード撤退によりさらに稀少な車になった、その数奇な運命を残念に思うよりも、なかなか経験できない状況として楽しんで、その稀少車がどのような車だったのかとメモすることも悪くないなと思い直した。
3年間乗ってみて、フィエスタ(Mk VII)の特徴を一言で表現するとすれば、「Vivid」だ。変に横文字使うのは嫌いなのだが、快活とか生き生きとしたという表現よりもぴったりくる。AUTOCARで絶賛されてきたのも必然と言える。
まず第一にエンジンだ。
2012年~2014年インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー3年連続受賞は伊達ではなく、試乗した時には、3気筒1リッターエンジンとはにわかには信じられないほどの加速力とレスポンスに衝撃を受けた。日頃運転して慣れてきても、その印象は大きくは変わらない。
フォードジャパンのホームページが残っていたので、そこからスペックを引用する。
<サイズ等>
全長 [mm] 3,995
全幅 [mm] 1,720
全高 [mm] 1,475
ホイールベース [mm] 2,490
トレッド(前) [mm] 1,470
トレッド(後) [mm] 1,460
最低地上高 [mm] 165
車両重量 [kg] 1,160
乗車定員 [名] 5
最小回転半径 [m] 5
燃料消費率[km/l]※ 17.7(JC08モード)
<エンジン>
FIESTA 1.0 EcoBoost
種類 直列3気筒ターボ
型式 SFJ
内径×行程 [mm] 71.9×81.9
総排気量 [cc] 997
最高出力 [kW (ps)/rpm] 74[100]/6,000
最大トルク [N・m (kg-m)/rpm] 170[17.3]/1,400-4,000
燃料供給装置 電子制御フューエルインジェクション
燃料 無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量 [l] 42
1,160kgの車重に対して100馬力/17.3 kg-mなので、普通のコンパクトカーとしては十分以上のパワーだ。(昔のシティターボくらいかと思ったら、あっちは700kg台ともっと軽かった。)1400回転から最大トルクが出るわけで、6速のDCTであることも相まって街中での加速力はこのクラスからすると想定の3~5割増しの印象だ。
DCTなので出だしは強力ではないが、走り出してからの加速は鮮烈で、運転に不慣れなドライバーも乗るファミリーカーとしては速過ぎるのでは?とまで思ったものだ。
レスポンスは非常に良いし、1リッターとは思えないスピード感で軽快に変速、加速する。車体が軽い分、日常的な出足ではウチにあるE46 330(直列6気筒3リッターNA 231馬力)をもしのぐ。3気筒のデメリットも特に感じない。アイドリング時には3気筒なりの振動が発生するが、それも「ルルルッ♪」と可愛いものだ。
ただし、100馬力なので絶対的なパワーがあるわけではない。いざフル加速した場合には特に速くもなく、0-100kmでは10秒超となるようだ。だが、セッティングが絶妙なのだ。限られたリソースの中で、極めて活発な走りができるようにパーツを組み合わせ、設定をすることで、本当に胸のすく走りを実現している。開発拠点がイギリスであることも影響しているのかもしれない。イギリス人ユーザーがこうした車に分かり易い活発さを求めているのが、フィエスタを運転していると良く分かる。
技術的なことはよく分からないが、いわゆる直噴ターボで中低速域でトルクが出ているうえに、スロットルは結構早開きの設定になっていると思う。それをDCTのダイレクト感が後押しする感じで、アクセル開度が小さい段階からグイグイ加速する感覚につながっている。クルマ全体でのまとまりがいいため、運転に慣れていさえすれば飛び出し感もなく、とても自然にキビキビ走らせることができる。日本のメーカーのモデルもスロットルは早開きとは聞くが、典型的な日本車のセッティングだと、全体としてはこういうまとまり具合にはならないだろう。
STでもないノーマルモデルでこれなのだから、イギリス、ドイツなどの欧州では、足となる実用車についても、要求水準が相当高いのだろうと思う。燃費が良いだけでは駄目で、快活に気持ちよく走れて、日常ユースで街中から高速まで十分な性能を有していること、そして運転に面白みがあることが求められているのだろう。こうしたニーズにしっかりと応えられるクルマだからこそ、欧州でのベストセラーモデルになっているのだと思う。
最近のクルマでは、省燃費性能や安全装備などが重視されるのだろうし、そこに自動運転機能の話まで加わるようになった。それぞれの重要性は認めるとしても、ウン十年来のドライバーとして言いたいのは、運転して面白いクルマでなければ乗りたくないということだ。完全自動運転が実現したら、クルマなんて家電と一緒で、何でもいい。まだ自分で運転しなければならないのだから、運転が面白いクルマを操りたい。
このクラスのあらゆる車種に乗っているわけではないので断言はできないが、特別なスポーツモデルとかを除けば、普通のBセグメントのノーマルモデルとしては、フィエスタは面白いクルマの筆頭だろうと思う。
このエンジンについての不満を敢えて挙げるとするとは、吹け上がりとそのフィーリング、そして燃費だ。
4500~5000回転からレッドゾーンまでは一応回るが、パワーは頭打ちで気持ち良く回るわけではない。小排気量で出力大きめなので、高回転までヒュンヒュン回ることを期待してしまうとがっかりする。効率重視のダウンサイジングターボと割り切って、DCTの変速に従ってパワーバンドの1400~4000回転でシフトアップしていく方が良いようだ。
そして、3気筒ながら決して悪くない、むしろ出来の悪い4気筒よりも良いと思うのだが、普段乗ってるBMWのM54エンジンと比較してしまうと、回転フィーリング自体を楽しむエンジンではないとは思う。アクセルを操作による伸びやかな加速とレスポンスはとても楽しいのだが、エンジン単体の音振が取り立てて魅力的ということはない。これは比較対象が悪すぎるのかもしれない。
キビキビ、スイスイという志向性のクルマなので、そうした運転になってしまう。この車で省燃費運転に徹するのも少々苦痛を伴う。結果として燃費はさほど良くならない。細心の注意を払ってエコカーに近い運転をすれば、遠出では20km/Lを超えると思うが、節約できるガソリン代と運転の楽しさを天秤にかければ省燃費運転に意味は見いだせない。
エンジンの組成と制約を考えれば、不満というほどのものではなく、もともとが無理な願望が充たされないだけということだ。
ということで、多分、続く。
Posted at 2017/10/18 21:51:08 |
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フィエスタ | クルマ
2016年09月14日
2014年10月購入なので、はや2年。かっこいい外観だなあ、くらいに思っていたのが、試乗時の鮮烈な印象に思わず買ってしまったフィエスタ。
自分にとってはいろいろと新鮮なクルマで、気が付いたことをブログにしようと思っていたのだが、それもいつの間にか2年経過。そうこうしてる間に衝撃の「フォード、日本市場撤退!」とアナウンスされ、少々狼狽しつつも、無事サービスの引き継ぎ先が決まって安堵しているところで、今更ながら素人の感想文でもチマチマ書いてみようかと。
娘が免許取って運転するので、コンパクトカーが欲しいなと考え始めたのがきっかけだ。 候補車をピックアップしている時期に、ちょうど新型フィエスタが発売となり、その外観デザインにとても魅かれて筆頭候補に。アクアやフィットに比べてデザインの完成度ははるかに高い! フィアット500よりも実用性は断然上!などと盛り上がりつつ、試乗してみたら目からうろこが。かっこだけの車ではなかった。
一言でいうと、「なにこれ凄い!」
1L の3気筒エンジンに大人が3人乗っていても、のけぞるほど加速する!意図したよりもはるかにスピードが出過ぎて300mくらい走る間で慌ててアクセルを戻したほど。この時のインパクトが最も大きかった。
後になって考えてみれば、低回転から効く直噴ターボとかなり早開き気味のスロットル特性の影響があったのだが、6気筒の重いクルマばかり乗っていた自分にとってはとにかく衝撃的な乗り味だった。
ということで、しばらくフィエスタの感想文は続ける予定。
Posted at 2016/09/14 21:26:32 |
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フィエスタ | 日記