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スーパーデラックスのブログ一覧

2011年08月14日 イイね!

小説「奇跡のガレージ(仮)」6

第6話  クルマより先に人を見抜け


檜山和夫 47歳。IT関連企業社長。
大学生の息子が一人。今は妻と2人暮らし、プラス犬。
趣味はゴルフとクルマ。

バブルの頃、株で大儲け。勢い余って仲間とイベント会社を作った。
当時、私は大学生だった。

時代が後押しするように事業は軌道に乗り、
経済誌にも「新進気鋭の若手ホープ」などという触れ込みで
何度か記事になったこともある。

今話したって、誰も信じてくれない様な派手な暮らし。
当時の口癖は「金なら出すけど」。

しかし、数年後。波が退くように全てが弾け、会社は倒産。
仲間(だと思っていた)たちや数多くの知人は去って行った。

幸い、借金を払い終わっても少々の金が残った。

わずかな資金で黎明期だったWeb関係の会社を作った。
一人からの再スタート。

今度は地道に努力した。派手な遊びもスッパリやめた。
着手が早かったことが功を奏したのか、優秀な人材も確保できた。
おかげで今は従業員40名ほどにそこそこの給料が払えるまでにはなった。
息子も一応有名私大に通わせている。

少々の小金が使えるようになったので、自分への褒美として
クルマ趣味を再開した。

ポルシェをはじめ、ベンツ、BMW、マセラティ、アルファロメオ、
レンジローバー、色々乗った。

あの頃と違うのは全て中古車だということ。
中古なら手ごろな値段で夢のあるクルマが手に入る。

もっとも負け惜しみじゃなく、今時のクルマにグッとこないのも正直なところだ。

中古車は安い分だけリスクも大きい。
随分「お布施」も払った。いい勉強になったと言えなくはないが、
これだけは言える。

「クルマより先に人を見抜け」

人というのは中古車を売っている人間のことだ。

人を見抜くだなんて、社長の私が今更言うのも恥ずかしいが、
欲しいもの、趣味に関してはどうしても判断が甘くなる。

「二度と出ない極上のタマが入庫します」

「檜山さんならこの価値、お分かり頂けると思いますよ」

プライドをくすぐる口車に乗せられて、着手金200万を持ち逃げ
されたことがある。

レストアに出したクルマと先払い金ごと行方をくらました業者もいる。

彼らにとって私は絶好のカモだったのかもしれない。

ガックリ肩を落とす度に妻には、

「だから新車にしておけば良かったのよ」

と小言を言われるが、中古車じゃないと興奮しないのだから仕方がない。


今はBMWのM635CSi。同じ仕様は日本には数台しかないはずだ。
この6発をマニュアルで操る気持ち良さは乗った者にしか分からない。

妻には古くて恥ずかしいから一刻も早く何とかしろ、とせっつかれている。
そもそも理解してくれとは思っていないが、乗ってくれないのには参った。

すぐ水温、油温が上がるので毎日は乗れないし大体年の半分は工場に
入っている。


日頃の足は別に持っているが、車検を機に入れ替えようとネットで物色している。

条件は、妻が運転するので車体は小さい方が良い。さらにいえば、
ゴルフバッグが乗ること、犬を乗せられることと、あまり壊れないことも重要だ。
できればドイツ車が良い。一番の要素は安いことだ。


最近ちょっと気になるブログを見つけた。
オペルのザフィーラを得意とする中古車屋のようだ。

能書きが多い中古車屋にろくなのがないのは経験から良く分かる。
知識をひけらかして「ここは詳しい」と思わせるのが彼らの手だし、
綺麗なウェブ・サイトは金が掛る。つまり潤っている、と想像できる。
web屋でありながら騙される私もどうかしているが。

しかし、この店主は少し違うようだ。

淡々と、しかし店主の人柄がよくわかる日記と写真。
ツボを得たメンテナンスのさわりのみサラッと書いている。
本当にこのクルマが好きなんだ、と伝わってくる。

ザフィーラも悪くないかもな。この道具然とした、なおかつ、凛とした雰囲気。
何より安い。

興味が沸いた。何より、店主に会ってみたくなった。

「ガレージ」か。私は携帯を手に取った。


つづく
Posted at 2011/08/14 07:56:27 | コメント(4) | トラックバック(0) | トラヴィックの話 | 日記
2011年08月08日 イイね!

小説「奇跡のガレージ(仮)」5

第5話  葛藤


俺はあくまで中古車業にこだわりたい。その想いは今も変わっていない。

だから修理の受付には慎重だった。

でも、調子の良くなったザフィーラやトラヴィックに乗ったお客さんの
クシャクシャの笑顔。そして身に余るお礼と感謝の言葉。

不覚にも胸が熱くなることだって一度や二度じゃない。

お客さんが喜んでくれる仕事なのは間違いない。

・・・・・問題は俺は一人しかいないってことだ。


--------------------------------------------

正直言えば、修理は儲からない。

いや、かかる時間がペイできないと言った方が正解か。

納得いくまで仕上げると、時間はかかる。当たり前だ。
それを省くのは「手抜き」でしかない。

職人気質?いや、少し違うな。

本当のザフ・トラはこんなもんじゃない。
それを知らないなんてもったいなさ過ぎる。

「ほら、凄いでしょ?」

それを知ってほしいだけなんだ。

このクルマを「日本車」として売ったスバルにも一言あるが、
調子を崩しても修理できず、やがてまだ走れるのに廃車にされてしまう。

純粋な欧州車として扱ってやれなかったことが原因だ。

そんなザフトラを一台でも救いたい。
使命感みたいなものもある。


「このクルマが本当に好き」

遠くからはるばる来店してくれるお客さんの本気。
それが痛いくらいに伝わってくるから、なんとかしてやりたい。

してやりたい、なんておこがましいな。
その手伝いをしたい、と思うんだ。

だから知恵を絞る。手間をかける。もてるノウハウを惜しみなく注ぎ込む。

結果、あの笑顔が最大の報酬なんだ。


言ってみれば俺の自己満足かもしれない。

お人よしだ、商売にそれじゃダメだ、って声がないわけでもない。

修理を受けるようになってからというもの、まさに仕事に追われる日々が
続いている。忙しいのはありがたいこと。
そうは思うがそもそもマイペースで仕事がしたかったから独立したのに。


お客さんとその家族の幸せの前に、自分の家族の負担も・・・・・
子どもとの時間も・・・

・・・・いや考えているさ。

そういえば、言葉にしないとダメだってお客さんに言われたばっかりだった。
今夜にでも話そうと思う。


「さぁ、今日も3人来店だ。賑やかになるな。」

すっかり冷めたコーヒーを啜りながら自分に言い聞かせた。

つづく



Posted at 2011/08/08 22:41:04 | コメント(3) | トラックバック(0) | トラヴィックの話 | 日記
2011年08月07日 イイね!

小説「奇跡のガレージ(仮)」4

第4話  同世代


田中雄一 38歳。食品会社の経理主任。
二児の父。趣味はクルマと夜景撮影。最近のエコとか節電というコトバが嫌い。


子どもたちに手を振り、玄関を後にした雄一の頬が緩む。
空は雲ひとつなく澄みわたっている。
絶好の「ガレージ日和」だ。


今日は待ちに待ったオトコの休日。
3週間も前から美香に申請してひとりで出かける許しを得た。

もちろん、2人の悪ガキを任せちゃったことに後ろめたさがない
と言えばウソになる。埋め合わせを考えとかないと・・・後が怖い。



「お、来てる来てる・・・・」

「ガレージ」には既にSDX氏、498氏がシルバーと白のトラヴィックを
並べ、その両方がボンネットを天高く開けている。

その横には、お、幸田さんが何やら大笑いしているぞ。

「あ、どうも、TXこと田中です。」

一同「おはようございまーす。」

TXはボクのハンドルネーム。東京エックスという豚肉の名前から来てるんだけど
よくつくばエクスプレスが由来だろうと間違われる。
恥ずかしくて訂正するのも面倒だから、そのままにしている。


ここは通称「ガレージ」。
ザフトラ専門の中古車屋さんだ。

本来、ザフトラをはじめとする中古車販売がメインなんだけど、
修理や車検も快く引き受けてくれること、店主の幸田さんの圧倒的な知識と
ザフトラへの深い愛情、そしてなによりも人懐っこいフランクな人柄に魅了された
人たちの口コミから徐々に知れ渡る様になったらしい。

一度メンテナンスをお願いしたユーザーのリピーターが続出。
本来の性能を取り戻したザフトラに「幸田マジック」という言葉さえ生まれたのは記憶に新しい。

今や全国に知れ渡る「ザフトラの聖地」となってしまったのは言うまでもない。

もちろんボクも幸田さんに愛車の面倒を見てもらっている。

「いやいや、ご無沙汰です。タイヤ、換えたんですか?」

「あ、気づきました?それがねぇ。GRXTってちょっと硬いみたい。ねえ幸田さんどう思う?」

「そうねぇ。レグノも少し変わったよね。ケース剛性がちょっと高すぎるかもねぇ。」

「やっぱりミシュランでしょ。迷ったらミシュラン。」

「トーヨーも捨てたもんじゃないですよ。トランパスとか本当なんだから。」

「あ、そうそう、ザックスのマウントの話、聞かせてくださいよ。」

「いや、その話は勘弁でゴザルよぉ。」

一同 爆笑

分かる人にはワカル、分からない人には何を話してるのかサッパリな
超マニアックな話がマシンガンの様に繰り広げられる光景は、
きっと奥方には理解されないだろうな・・・だからオトコの休日。

奇しくも同世代のお父さんたちは時を忘れて話し込む。
その横顔は誰もが少年のようにキラキラと輝いている。
(こんなに無邪気に笑ったのは・・・・どれくらいぶりかな)

雄一はふと、子どもたちを大声で怒鳴り散らす美香の顔を思い浮かべた。

つづく
Posted at 2011/08/07 06:42:35 | コメント(3) | トラックバック(0) | トラヴィックの話 | 日記
2011年08月06日 イイね!

小説「奇跡のガレージ(仮)」3

第3話 夫の楽しみ


田中美香 34歳。専業主夫。2児の母。

せっかくの土曜日なのに雄一は早朝から何やら嬉しそうに駐車場へ。
息子2人が起きてくる頃には戻ってもらわないと。
あのクルマが来てからというもの毎週がこんな調子。

スバルのなんとか・・ってクルマ。
良く分からないけど、7人乗れるからって強引に決めて来たのよね。

前のレガシィよりは確かに広いけど、あっちこっちが固くて重くて。
おまけにレガシィにあったオートエアコンもナビも付いてないって言うじゃない。

・・・・本当は隣りにあったステップワゴンのほうが良かったわ。

なんていうと唾を飛ばしながら、1時間は解説が続いちゃうから言わないけど。

息子たちは一番後ろの席を取り合いしたり、結構気に入ってるみたい。
一番の理由はパパの誇らしげなところかも・・・・


最近はオフ会っていうの?
「SDXさんと今度ガレージでオフやるんだ・・・・」って
これまた満面の笑みで私に言うんだけど、誰よSDXって。ガレージってどこ?

夜な夜なパソコンに向かっては一人でニヤニヤしたり、難しい顔したり。
一体何がそんなに楽しいのか。
まぁ聞いたらまた一時間くらいしゃべり続けちゃうんだけど。

子煩悩だし、ゴミ出しも嫌な顔一つせずにやってくれるし、
毎日遅くまで大変だとは思ってる。

でもね、でもさぁ。
私がすぐ近くにいるのに背中を向けて会話ってどうなのよ。

そんなにPCが好きならPCと結婚すれば良かったのよ。


今夜はそれについて一時間お説教ね。


つづく


Posted at 2011/08/06 19:43:27 | コメント(2) | トラックバック(0) | トラヴィックの話 | 日記
2011年08月06日 イイね!

小説「奇跡のガレージ(仮)」2

第2話     つなぐもの


「よし、幸田さん、コレに決めたよ!」

「ありがとうございます!しっかり整備して納車させていただきます」

この瞬間は何度経験しても良いものだ。
そして同時に「しっかりやらねば」と身が引き締まる思いがする。
最高の状態で納車したいからだ。

今月はこれで5台目。
世間的にはド・マイナー車であるはずのクルマが飛ぶように売れてゆく。
仕入れた横から売れて行くというのが現状だ。

うちの主力商品は、オペル・ザフィーラとそのOEMのスバル・トラヴィックだ。

ドイツの大衆車メーカー・オペルがルノー・セニックに対抗して出した、
アストラベースの7人乗りミニバン。
その小さなボディからは信じられないスペースユーティリティと
ミニバンというカテゴリーで語って欲しくない「これぞドイツ車」という
質実剛健な走りっぷりに俺自身が惚れている。

ちなみに幸田さんとは俺のコト。
ブログを見て来店してくれるお客さんが多く、名刺を渡さずとも名前を
呼んでくれる。

だからと言ってお客さんとの距離を縮める努力を怠っても良い訳じゃない。
お客のタイプに応じて、硬軟織り交ぜたマニアック・トークで圧倒する。

いや、圧倒しちゃまずいな。ほどほどにしないと。
この辺、趣味の延長の悪い癖だ。妻にはいつも怒られている。

そういうのが苦手な人は多分、俺とは合わないだろう。
客を選ぶ店。ちょっと最近悩ましい。

ブログ。ホームページも持ってはいるけど、更新が面倒で放置気味。
そこで毎日無理なく更新できるブログを始めてみた。

中古車業の日々と子育てパパのネタを織り交ぜた日記は
自分が思った以上に好評で、順調にビューアーを増やしていった。

その影響か、ザフィーラ、トラヴィックで検索して辿りついた方から
メールをたくさんいただくようになった。

そのほとんどは維持の悩み。オペルも輸入が中止され数年が経ち、
ヤナセでもオペルを修理できるところが少なくなってきている。
トラヴィックに至ってはディーラーがこのクルマを敬遠する傾向すらあるという
現状がオーナーの苦悶に満ちた文面に綴られている。

このブログとメールが俺とこの店とお客さんを「つなぐもの」だったんだ。

つづく
Posted at 2011/08/06 00:21:46 | コメント(4) | トラックバック(0) | トラヴィックの話 | 日記

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何シテル?   09/02 23:46
いかにお気楽にクルマ生活を楽しめるかを実践中。 うんちくは大好きですが、実はメカに疎い(汗。 中途半端なドシロウトです。 子どもとクルマと音楽をこよな...
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