私の実家には”豆炭”こたつがある。火をおこし、温度や安全面でも一手間かけてあるそれは、うちの電気ごたつとは違う温かみと有難みがある。暖冬とはいえこの時季の日本らしい最上級のもてなし道具だ。本当にいいものだと思う。折り畳んだひざをふとんに差し込む。中の温かい空気が体の隅々に広がる。ふとんの内側かこたつの内側かこたつの足をぎゅっと握れば、冷たかった両手に一気に血が通うようだ。近ごろは電気ごたつもあまり見かけない。友人も「埃っぽいしのんびりあたる暇もないから」とこたつを嫌う。確かに家の構造や暮らし方によって道具やその価値は変わる。それでも左党が熱燗には銅製ちろりが最高というように、便利な代用品にはない魅力がある。「こたつにあたると既知の人ととももっと和やかになって話が弾むから不思議なもんだ」実家には、宝物がある。