リヤショックの減衰調整について書かれた記事ってあまりないですよね。
今年タイヤをDirezzaZⅢからS.Driveに替え、ネルソン号の乗りやすさを再現したくて減衰を見直し、その時考えたことをメモにまとめました。
何かの参考になれば幸いです。
急ハンドルをキメると減衰量は何かと多くなりがちですが、逆にどこまで減衰量を抜けるかを探ることによって、限界グリップよりもグリップとタイヤの状況の分かりやすさを両立させ乗って楽しい車を目指せるのではないかと考えました。
1. 脚周りの構成パーツとその理由(理由になっていない)
[フロント]
ショック:GAZ SAXO用 GAI3004-MST26
… 調整式ダンパーでストロークが150mm近くあるもの
車高調:GAZの106用コイルオーバーキット同梱品
スプリング:3.5kgf/mm 長さ250mm ID66mm BESTEX特注
… 4kgf/mmではストロークが短く、硬い乗り味だった
3kgf/mmではもっとスプリング長が必要
バンプラバー:テストなので装着せず 本来は必要
アッパーマウント:YZ特注
…ボディ取付面下に出る寸法が最も少ないもの
[リヤ]
ショック:GAZ 調整式
…安かった
トーションバー:21mm
…20mmが欲しかったが無いので最安値のもの
アンチロールバー:22mm
…トーションバーが硬いならアンチロールバーは柔らか方向で
ホイールスペーサー:20mm
…前後のトレッドを近づけたいため
2. タイヤの変更について
Direzza ZⅢはタイヤの剛性が高くグリップは良くラフな操作に寛容で、ある意味乗りやすいです。でもそれは無理な操作のクセがついて限界がわからないまま自爆する方向につながりやすいのではないか。また、乗り味が硬く疲れる…ということもあり、柔らかタイヤの方向にしました。
106のタイヤの選択肢は非常に狭くDirezza以外ならほぼ一択ですが、ネルソンさんの106試乗やサニートラックに履いてみて扱いやすさを感じたS.Driveを選びました。
S.Driveは柔らかいサイドウォールと適度なグリップ力があり、グリップ⇔スキッドの変化が穏やかで扱いやすいと思います。
3.スプリングのプリロード調整(車高調整)
脚を変えているクルマでは割と高めの車高にしています。
車重の6割を超える重量がフロントにかかるので、主であるフロントを先に調整してから、従としてリアを調整します。
フロントのロアアームが水平か、わずかに下方向を向くように調整してから、リアの車高を横から見て水平になるようにました。
4. ダンパーの減衰力調整
前置きが長かったですが、ようやく本題です。
(1) 減衰係数の範囲の確認
ダンパーに必要な減衰量自体は車体によってまちまちで、その数値を確認する手段は一般人には難しいものですが、別の見方で、どの程度振動を継続させて収束させるかは減衰係数として経験から得られています。
「減衰をあらわす係数」の最後にある参考 構造物や機械の減衰比 部分にありますが、
小型乗用車のサスペンション 0.2 〜 0.5
オートバイのサスペンション 0.35 〜 0.45
私はこれから小型自動車の範囲に収めることにしました。
減衰係数:0.2~0.5
減衰係数と振動の継続の関係はどんなものかは、同じく小野測器さんのサイトの
図5 自由振動の応答にあるような振動曲線で、減衰係数(ζ)が異なると振動の収束に差があります。
ダンパーの調整量を求めるには、実際の揺れを観測してグラフの減衰係数の曲線となるような調整量を知ります。車体の揺れは「ライト光軸の揺れ」でもって目視で確認します。 ただしタイヤの振動による周期の短い揺れは無視します。
[前輪の調整量]
後輪ダンパーの減衰調整を操縦性に害がない範囲で硬くする
↓
前輪ダンパーの減衰を調節し、走行中の光軸の揺れをみる
減衰係数0.2~0.5に入る調整量を記録する
↓
後輪ダンパーの減衰調整を元に戻す
[後輪の調整量]
前輪ダンパーの減衰調整を操縦性に害がない範囲で硬くする
↓
後輪ダンパーの減衰を調節し走行中の光軸の揺れをみる
減衰係数0.2~0.5に入る調整量を記録する
↓
前輪ダンパーの減衰調整を元に戻す
(2) 実走テスト
(1)で記録したダンパーの調整量をどう生かすかが主な点になります。
減衰係数0.5というのはハードでこれ以上硬くなると体に悪い感じで、対して減衰係数0.2というのは揺れていますがタイヤの追従性は高いほうだと思います。
1)評価ポイント
何をもって「いいな!」とするかは、指標がないとその時々で変わってしまうため、ざっくりとした着目点を決めておきました。
①直進時の縦揺れ
②ハンドルを切った時の直後の反応
・ハンドルの操作感
・瞬時回頭性
・スラローム等交互操舵時の破綻可能性
③ハンドルを切った時の継続した反応
・継続した回頭性
・スキッド開始までのグリップ
・スキッドからの回復
2)テストコース
どんな状況でテストするか
公道なので高速長時間の旋回とかは必要なく、やや低速、スラローム、坂、逆カント、日陰の濡れ落ち葉等の低グリップ状況があればいいと思います。
ちょうど近くにぴったりと合った道があったため、使いました。
3)実際のテスト
前輪は「わかりやすさ」を求めるためのアプローチをします。
最初に減衰係数0.5のダンパー調整量をセットして、減衰係数0.2のダンパー調整量に向かってダンパーを抜いて行きます。 試走して、これらの範囲の中でハンドルを回す力が明らかに軽くなった調整量を前輪の調整量としました。
減衰が多いとハンドル操作に対してキビキビ反応しますが、操作力が必要になります。逆に減衰が少ないとハンドル操作に対してダルな感じですが、操作力は少なくて済みます。ハンドルを切るのに力みが必要では掌の感覚を鈍くさせます。
後輪はグリップに主眼にしています。
後輪ダンパーの調整量は、最初は減衰係数0.2の調整量にします。 車体の反応を観察して、減衰調整を減衰係数0.5の調整量に向かって硬くして行きます。
減衰係数0.2の調整量ではややアンダーでダルな感じでしたが後輪の追従性と滑り出しや回復の感じは非常に良いです。でもユサ・・揺れが収まりにくいので怖いです。
後輪の減衰量を増やして行くとあるところから瞬時回頭性が良くなりますが、同時に後輪の外側の突っ張り感や内側の伸びの悪さも出てきて日陰の濡れ落ち葉での滑り出しや回復の低下が出てきます。スピンとの表裏の関係になるので、「良いな!」と思った調整量から減衰をわずかに抜いておきました。 少し疲れたときでも同じように走るための工夫です。
全体としてDirezza ZⅢを履いていた時よりも減衰量が下がり、ハンドル操作は自ずと少し手前から荷重を乗せて切り込むようになり、結果として単位時間当たりの操作量が減るものになりました。
5. 懸念事項
私の車では後輪にスペーサーが入っているので、スペーサーのない状態の車に適用は難しいかもしれません。スペーサーがあると
ハンドルを切る→フロントが動く→次いでリヤがグリップしはじめる
という時間差が明確にあり、前輪と後輪のグリップを別々に観測できますが
スペーサーのない場合は、フロントの動き出しとリヤのロールがほぼ同時に起きてしまうので、別の反応の仕方、見え方をするかもしれません。
6.まとめると
サスペンションの減衰調整・味付けの一例として、前輪側の減衰調整点をハンドル操作が重くなる・軽くなる点とし、後輪の減衰調整をそこに合わせて弱めに設定することでグリップとタイヤの状況の分かりやすさを両立できそうな感触を得ることができました。
また、後輪の減衰調整を変化させて車体の回頭性とグリップ変化の感触を得ることができました。(知見とまではいきません)
加えて減衰も小さくなったことで急ハンドルの操作が減り丁寧なハンドル操作に繋がることに気付きましした。