
人には誰しも、触れて欲しくないところがあるものです。髪の毛がタブーであったり、オ○ンチンであったり、女性などはどこを触ればいいのか迷ってしまいます。
同様かどうかはともかく、クルマもメーカーとしては触って欲しくない所があります。ただ、いくら可愛い子供であったとしても一旦世に出てしまった以上、正直なにをされても関与の及ぶところではなくなってしまい、見るも無残な形となって帰ってくる例も少なくありません。
ユーザーとしては恐らくクルマにとって良かれ、と思ってやっていることであるにしても、実はクルマにとっては一線を越えた、触ってはいけないところに手を付けていることも少なくないものです。
基本的に、あんまりやりたくないのがクルマの配線に手をつけることです。ハーネスと呼ばれる組配線の事ですね。
今では少なくなりましたが、かつてのナビゲーションのテレビアンテナはクルマの後方に付くことが多く、そのためにアンテナ配線を後ろに持っていかざるを得ませんでした。このため、あちこちのカバーを外し、カーペットをめくり、シートを外してアンテナ線を引き回したものです。
それから、メーターを外してスピードセンサーの信号線を分岐させ、シガレットからアクセサリー電源を、ハザードから(時計から)常時電源を分岐させ、サイドブレーキから、パーキング信号を拾う(滅多に私はやりませんが)作業をするわけです。ま、別にオーディオ関連の配線から電源関連は拾ってもいいんですが。
でも、何が嫌といって、異音が出やすくなったり、トランクに水が入るであったり、パネルが浮いてくるだの、どうもうまく機械が動かないだのと、何もしなければ何事もなかったはずのクルマに、いろいろとトラブルを抱え込む原因をわざわざ持ち込んでいるようなものだからあんまりやりたくないわけです。
元々そんなものを後からつけることを想定していなかったのですから、当のクルマにとっては当たり前といえば当たり前なんですがね。
このため、極力配線をいじられたくないメーカーは、ある時から「スピードセンサー信号」と「パーキング信号」の配線をセットにして、「ナビゲーションをつけるなら必ず外すであろう」箇所の、内装の化粧パネルの固定ピンすら外し易い様に(モデルの途中で)設計変更し、そのすぐ裏にひっそりと上記の信号線たちを配置しておく、なんてことまでし始めました。
また、あらかじめリアガラスにテレビアンテナの線を入れ込んでおく、なんてオプション(もちろんメーカーオプション)もありました。オーディオパネルを外してみたらアンテナ線も信号線も全部のコネクターがそこにあった時には感動したものです。もちろん自分で選んでおいたので当たり前のことなんですが。
恐らくよほどその手の作業が原因のクレームが多かったのでしょう。トランクに水は溜まると言われて診てみたら、アンテナ線の引き回しが稚拙で水が浸入していたなんて事は珍しくありませんでしたからねえ。ディーラーに依頼した所で、大して作業レベルに差はありませんし。つまり少なからずトラブルや作業ミスはあった(続発した)という事です。
いまやテレビアンテナもフロントガラスにぺちょっと貼るだけのものが多いですから楽になったものです。
ここのところ多いのが、やたらと親切というかお節介な点検サービスです。前にも採り上げた「バッテリーの電圧が....」とか「水抜き材いかがですか?」とかね。
80過ぎのおじいちゃんから「柴田君、どうも車の調子が良くないんだけど」と言われて見に行ったら、たしかにエンジンがボソボソいってる。ちょっと借りてみてあちこち診てみたら、ガソリンの給油口にこれでもかとばかりに「水抜き剤入れました」のシールがべたべた貼ってあるじゃあないですか。しかもそれほど距離を走らないクルマなのに。
ガソリンじゃないもので「走れ」と言われてもエンジンだって嫌なものです。半年に3回ぐらい入れられてたかなあ、確か。その足で下手人の所にいって怒鳴り込みましたもんね。「なんてことしやがる」って。
交換機材が普及したこともあるのでしょうけど、ここのところ目に付くのが「ATF換えませんか?」です。
以前自動後退に勤めていたというお姉ちゃんが、新車で買ったムーブを目の前にして「そろそろATF換えなくちゃ.....」とつぶやくので目が点になったことがあります。どうもあそこでは2万キロ程度でATFは交換するものだと吹き込んでいるようです。
冗談じゃあありません。
あそこはメーカーにとっても触られたくない箇所の一つです。だからワザと交換しにくいような設計をしています。点検スティックすらなくしてしまったクルマもある(新型クラウンとか)くらいです。クルマによってははっきりと「無交換です」と書いてあるものもあります(ウチのCがそうです)。
ATFはその劣化よりも、外部からゴミが侵入する事や変な添加剤の類いを入れられるとことのほうがよほど怖いものです。
ATFは冷却、洗浄、トルコンの作動油、油圧バルブの作動油などなどと、いわばオートマチックの機械全体がATFの中に浸かっているような状態の中で様々な機能を果たしています。つまり、ATFの性能もATを構成する部品の一つであり、そこに基準を満たしていない物など入れられても、期待した性能が発揮できるはずもありません。逆に機械が壊れることだって充分にありえます。
交換作業は機械が受け持つでしょうから、怖いのはその作業環境(少なくとも埃が侵入しないような気遣いがなされているかとか)と、次に入れられる製品です。
新しいATFだからといって安心は出来ません。うちのはワ○ーズだからと言われても耳は貸さない事です。いちいち純正の指定交換品を個別に揃えているわけにはいかないので、汎用品で済ませているだけなのですから。
できれば、きちんと取扱説明書でメーカーの指定交換品を確認してから、その通りのものか、もしくはメーカーの承認するその代替品を使うべきです。それだけATFは厳密なものなのですから。
特に最近は設計が厳密になってきていますので、あまり余計なことはしないほうがクルマにとってもいいものです。まあ、メーカーも自己防衛の事もあって、余計なことはさせない・出来ないような設計にしてきてもいますけど。
Posted at 2009/11/14 12:56:37 | |
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