北海道ドライブもいよいよ3日目、そして最終日。
この日は帯広の宿を出発して南下し、日高沿岸部を回りながら千歳空港へ向かいます。走行距離は今回の旅で最長になりそうです。
午前6時前、まだ街が眠っている時間にホテルを出発。今日も見学予定はぎっしり詰め込んでいるので、早朝からのスタートです。
まずは国道236号線を南下し、帯広川西ICから帯広広尾自動車道へ。ここは無料で走れる自動車専用道路で、国道236号線の一部にも指定されています。
ところがナビの案内で中札内ICからいつの間にか下道へ…。少し戸惑いましたが、下道も流れが良かったのでそのまま並走する国道236号線を走ることにしました。
最初の目的地は「旭浜トーチカ群」。第二次世界大戦中に造られたコンクリート製の防御施設が、海岸沿いに今も点々と残されているそうです。
途中、道路脇には案内板もあり「観光地化されているのかな?」と思いきや、現地に着くとそこはただの海岸線。
砂浜に、ぽつんとコンクリートの塊が立っていました。これがトーチカです。
保存や整備はされておらず、かといって立入禁止でもない。戦後80年の風雪で一部は崩れ、中には砂が吹き込んでいますが、まだその姿を保っています。
見渡すと同じようなトーチカが海岸線に沿って何基も…。まるで戦争当時の空気が、まだこの地に残っているかのようでした。
トーチカを後にし、広尾町で国道336号線へと進んでいきます。この辺りからは海沿いの絶景が広がるドライブにはもってこいなルートとなります。
海と断崖に挟まれたこの道は「黄金道路」と呼ばれています。日高山脈が海に迫る厳しい地形のため、覆道やトンネル、桟橋、護岸が随所に造られ、建設には「黄金が敷き詰められるほど」莫大な費用がかかったことからこの名が付きました。
クルマを停めて遠くから眺めると、確かに崩落の跡があちこちに見え、維持管理の大変さが伝わってきます。
それでも走ってみれば、絶景続きのシーニックバイウェイ。北海道らしいダイナミックな海岸線を満喫できるルートです。
ここまでやって来た観光客のほとんどは立ち寄るでしょうが、今回は泣く泣くスルー。森進一さんに怒られそうですが(笑)、その代わりに向かったのは…。
●かつてのプレート境界
ここは太古の昔、ユーラシアプレートと北米プレートがぶつかり合っていた場所で、今もその痕跡が地上に露出しています。見た目は地味ですが、地形好きにはたまらないスポット。
そのプレート境界は地上だけでなく、海の中にも続いているそうです。
ここに地球規模の力が働いていたことを想像すると、悠久のロマンを感じずにはいられません。
さらにその近くには、明治・大正・昭和と3つの時代に掘られた隧道が残っています。
昭和の山中第二隧道は現役の車道、大正トンネルは歩いて通行可能。明治隧道も貫通していますが、漁具が置かれ、片側は崩落で半分以上埋まっていて入りづらい状態です。
日高耶馬渓のように地形が急峻な場所では、かつては海上交通での行き来が主流でした。それでもこの場所には明治期には早くも隧道が掘られ、その後も大正・昭和と3代にわたり新たなトンネルが造られ続けています。それだけ、この地が交通の要衝だったということの証左に他なりません。
今でも日高山脈を越える道は数えるほどしかありません。北海道の東と西を結ぶ大動脈として、沿岸部のこのルートが選ばれたのは、まさに必然だったのでしょう。
ここまでで、まだ午前10時。
このあとは、本日のメインイベントとなる、あの廃線跡を探訪しに行きます!
タウシュベツ川橋梁をじっくり堪能したあとは、名残惜しくも帯広の宿へと戻る帰路に。
その途中、ちょっと寄り道をして訪れたのが、かつての士幌線・糠平駅跡です。
●糠平駅跡
この場所には「上士幌町鉄道資料館」が併設されており、当時の路線図や保線用具、現役時代の映像などが展示されているとのこと。とても楽しみにしていたのですが…あいにくこの日は休館日。
仕方なく、糠平駅跡の周辺だけを散策することにしました。
跡地には、線路や踏切、駅名標などが残されています。ただし、これらは当時のものではなく、廃止後に観光トロッコ運行のために再整備されたものだそう。
それでも、線路が一本そこにあるだけで、かつて列車が走っていた気配がふっと感じられるから不思議です。
線路脇には、ちょうどルピナスの花が咲き誇っていました。花に包まれたこの光景、当時の士幌線もこんな風景の中を走っていたのでしょうか──
そんな想像にしばし浸ります。
●帯広駅周辺
夕方、17時前には帯広の宿に到着。
この時期の北海道はまだまだ明るく、せっかくなので駅周辺を散策してみることに。
宿泊したのは、帯広駅からすぐの「ホテルグランテラス帯広」。駅チカで飲食店も多く、駐車場完備ということでレンタカー旅にもぴったりの宿です。
駅前に向かおうとホテルを出た瞬間、「パッカパッカ…」という軽やかな音が聞こえてきました。
振り返ると、なんと馬車が目の前をのんびり通過中。
調べてみるとこれは「馬車Bar」といって、馬車に揺られながら帯広の街並みとお酒が楽しめるというユニークなサービスとのこと。
駅前ロータリーは広々としていて、十勝地方の中核都市であることを感じさせます。
とはいえ、夕方の時間帯にもかかわらず、人も車も意外なほど少なめ。
タクシー乗り場には数台がぽつんと待機しており、広すぎるスペースがやや寂しげにも見えました。
駅構内には「とかち食物語」という地元物産のエリアがあり、名産品やお土産が並びます。食事処もあり、旅行者にはうれしい施設です。
そろそろホテルに戻ろうかと駅前を歩いていると、ふと足元に2本のラインが。最初はデザインかと思って通り過ぎかけたのですが、なんだか気になる…。
目を凝らして確認すると、どうやら本物のレールのようです。
レールの終端は駅前の北洋銀行の目の前で途切れています。そこから反対を振り返って見ると、レールは北西方向へとまっすぐ続いています。
周囲に説明板などは見当たらず、詳しいことはわかりませんが、帯広駅の北側からこの方向──根室本線と並行するように北西へ延びる線路といえば…まさか士幌線の跡?
足元のレールが、十勝の大地を抜け、タウシュベツ川橋梁へとつながっていたのでは…? そんな想像がふくらみます。
夕陽が沈みゆくなかでの、偶然とも思えない出会い。
「このレールが、あの橋へ続いていたんだ…」
今日という一日が静かに、でも印象的に締めくくられていく瞬間でした・・・。
──と、ここまでが現地での私の感動だったのですが、後日調べてみたところ、この線路は士幌線の跡などではなく、根室本線が最初に敷設された場所に復元されたモニュメントだったようです(なお現在の根室本線は高架化済み)。
・・・あの感動を返してくれッ!! orz
タウシュベツ川橋梁の展望台から少し北へ進むと、橋へと続く林道の入口が現れます。ですが、すぐには橋を目指さず、まずは士幌線の終点へと向かい、廃線跡をたどってみることにしました。
次に訪れたのは、第五音更川橋梁と幌加駅跡。
士幌線の遺構は、地域でも観光資源として活用されているようで、国道沿いには橋や駅の跡を案内する看板や駐車スペースが整備されており、気軽に立ち寄れるようになっています。
●第五音更川橋梁
第五音更川橋梁は、旧士幌線に多く見られるコンクリートアーチ構造。これから向かうタウシュベツ川橋梁も、同様の工法で建造されたと考えられます。
橋の上からはすでにレールが撤去され、草が生い茂っていて渡ることはできませんが、途中に残る待避所のような構造から、かつての姿がふと目に浮かびます。
●幌加駅跡
幌加駅跡はガイドブックにでも紹介されているのか、観光客の姿も多く見られました。
駅構内はきれいに整備されていて、ホーム跡やレール、ポイント、枕木などが当時の雰囲気を色濃く残していました。東大雪の山中にあった駅の姿が、ここには今でも確かに息づいているように感じられます。
●十勝三俣駅跡
さらに先へ進み、士幌線の終着駅だった十勝三俣駅跡に到着。しかし、ここでは駅舎もホームもすでに撤去され、路盤跡も判然としません。
それでも辺り一帯は谷間に広がる平坦な土地で、山深い場所とは思えないほど空が開けた、まるで高原のような清々しさに包まれています。
人が生活を営むには最適な場所だったのかもしれない──そんなことを思わせる風景でした。
近くには柵に囲まれた廃屋がひとつぽつんと残っていましたが、これは十勝三俣駅からさらに奥地へと伸びていた森林鉄道に関連する施設だったようです。
こうして旧士幌線を終点までたどりきった私は、いよいよ今回の旅の最大の目的地、タウシュベツ川橋梁へと向かいます。
国道から林道へと折れ、しばらく走ると写真のゲートが現れました。通常、一般車はここで通行止めですが、今回は事前に通行許可を取り、鍵を借りています。
※タウシュベツ川橋梁へと至る林道ゲートの鍵は、以下のサイトから予約することができます。
タウシュベツ川橋梁「林道ゲート通行鍵」予約ページ/上士幌町タウシュベツ川橋梁観光
ただし、この周辺はヒグマの生息地でもあり、つい数日前にも出没情報があったとのこと。ガクブル・・・。
橋への期待と熊への不安が入り混じる中、鍵を使ってゲートを開け、許可証を掲げて林道を進みます。
林道には水たまりや勾配のきつい区間もありましたが、路面は比較的フラットで、日産ノートでも車体の底を擦ることなく走行できました。
15分ほど走ると林道脇に広めのスペースがあり、ここに車を停めて橋へ向かいます。
そこから先の通路は、かつて士幌線の路盤だったようで、掘割がきれいに残されており、列車が走っていた面影が感じられました。
そして、その湖面を横断するように──
森が開けた瞬間、草木ひとつない風景が広がり、その中に佇む橋の姿が見えました。
●タウシュベツ川橋梁
湖の水位によって姿を現したり沈んだりするこの橋は、激しく風化が進行し、他の士幌線の橋梁群とはまったく異なる、朽ち果てた姿をしています。
一部ではコンクリートが崩れ、アーチは「首の皮一枚」で繋がっているような危うい状態。
それでもなお、湖面を対岸までしっかりと結んでいるこの橋は、凛として誇り高く立ち続けているようでした。
コンクリートが剥がれ落ち、中の鉄筋がむき出しになってもなお、橋としての矜持を失わないその姿に、心を強く揺さぶられます。
今でも人ひとりくらいなら対岸へと連れて行ってくれそうに見えますが、もちろん橋上への立ち入りは禁止。
鉄道がこの谷を越えていた頃とはまるで変わってしまった風景の中で、それでもこの橋が見ているもの、想っていることは、きっと今も昔も変わらない──そんな気がしてならない、まさに魂を揺さぶる絶景でした。
●音更駅跡
最初に訪れたのは、音更駅跡。現在は交通公園として整備されており、駅舎は残っていないものの、車両の展示があります。
特に珍しいのがSLのカットモデル。内部構造が見えるように一部が切断されていて、蒸気機関の仕組みを学べます。
●士幌駅跡
次は士幌駅跡へ。こちらは駅舎・ホーム・線路・貨車がそのまま残されており、往時の面影をしっかり感じられる場所です。
駅名標には士幌駅だけでなく、なぜかとなりの中士幌駅のものも並べて設置されていて、ちょっと不思議な演出。
●道の駅かみしほろ
その後は道の駅かみしほろへ向かい、8時半ごろ到着。鍵の貸し出しは9時からとなるので、受付が開くまでしばし休憩。
受付が始まるとすでに数人が並んでおり、順番を待って鍵を受け取りました。林道走行時の注意点やクマ対策について説明を受けます。
林道の鍵を借りる際、探索に必要な熊すずや長ぐつの貸し出しがありましたが、私は自前の長靴・クマ鈴に加えクマスプレーまで用意していたので、ここでは鍵だけを借りました。
無事、鍵を借りることができたので、国道273号線を北へ。この道はかつての士幌線跡と並走しており、ところどころに鉄道遺構が顔を覗かせます。
●第三音更川橋梁
まず現れたのは、第三音更川橋梁。コンクリートアーチが美しい橋で、国道沿いからその全景を望めます。駐車帯も整備されていて見学しやすいスポットです。
●第四音更川橋梁
少し進んだ先には第四音更川橋梁。こちらも同様の構造ですが、自然崩落なのか理由あって撤去されているのか分かりませんが、一部が欠損しているのが特徴。
●糠平ダム
士幌線をいったん離れ、糠平ダムへ。ここは1956年に完成した発電用ダムで、渋く風格ある佇まい。
タウシュベツ川橋梁が沈んだり姿を現したりしている糠平湖は、このダムによって生まれた人造湖です。
●三の沢橋梁
続いて向かったのは三の沢橋梁。こちらは遊歩道として開放されており、橋を渡ると森の中に続く旧線跡がまっすぐ伸びています。あまり奥まで進むとクマのリスクもあるので、控えめに散策。
●タウシュベツ川橋梁展望台
タウシュベツ川橋梁に直接行く前に、まずは対岸のタウシュベツ川橋梁展望台に立ち寄りました。林道ゲートの鍵がなくても橋を遠望できる、観光客にも人気のスポットです。平日にもかかわらず多くの人が訪れており、その多くは鉄道ファンではない一般の旅行者でした。やはりタウシュベツの神秘的な姿は、誰の心にも響くのでしょう。
展望台からは、糠平湖を挟んでくっきりとタウシュベツ川橋梁が浮かび上がって見えました。ここ数日の雨で水位上昇が心配されましたが、この日はしっかりとその姿を現してくれていました。
・・・ずっと見たかった景色が、ちゃんと待っていてくれた。
♠警告灯点灯【ウインカーハイフラ現象】 カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2025/06/15 06:25:47 |
![]() |
![]() |
二代目Tクロス (フォルクスワーゲン Tクロス) TクロスからTクロスへの乗り換えです。グレードとボディカラーは全く同じなので、見た目は代 ... |
![]() |
スズキ ジムニー デリカ3回目車検のタイミングでジムニーに乗り換えました。ちょうど子どもがMTの運転免許を ... |
![]() |
輸入車その他 その他 BESVのe-Bike(電動自転車) 、PS1です。 ミニベロタイプのかわいい自転車で ... |
![]() |
フォルクスワーゲン Tクロス 奥さんのクルマです。ポロに続き、再びフォルクスワーゲンになりました。 |
2025年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2024年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2023年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2022年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2021年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2020年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2019年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2018年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2017年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2016年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2015年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2014年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2013年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2012年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2011年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2010年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2009年 | |||||
01月 | 02月 | 03月 | 04月 | 05月 | 06月 |
07月 | 08月 | 09月 | 10月 | 11月 | 12月 |