旧野蒜駅~止まった時間と、歩き始めた街 

東日本大震災で甚大な被害を受けた路線の一つが、海沿いを走る仙石線(あおば通駅~仙台駅~石巻駅)です。
なかでも陸前小野駅~陸前大塚駅間は津波によって壊滅的な被害を受け、復旧にあたっては線路を内陸側へ移設。その結果、この区間にあった旧野蒜駅と旧東名駅は役目を終え、廃止されることとなりました。
その旧野蒜駅が、震災の記憶を伝える遺構として保存されていると知り、今回訪ねてみました。

こちらが旧野蒜駅の駅舎です。現在は補修・整備され、「東松島市震災復興伝承館」として活用されています。1階は交流スペース、2階には震災に関する写真パネルや映像展示があり、当時の出来事や復興の歩みを学ぶことができます。

駅舎の裏手へ回ると、震災当時のホームがそのまま保存されていました。
この一帯は津波に完全に飲み込まれた場所ですが、駅舎やホームは一見すると、それほど大きな被害を受けたようには見えません。しかし、近づいてよく観察すると、その印象は一変します。

駅名標は歪み、鉄製の支柱は根元から無残に折れ曲がっています。

レールも途中でぐにゃりと大きく歪み、津波の凄まじい破壊力を物語っています。
一見するとちょっと古めかしいだけのホームに見えますが、目を凝らすと、津波の爪痕が至るところに残されていることに気付きます。
駅周辺はがれきも撤去されてきれいに再整備されています。しかしこのホームだけは、津波が襲ったあの瞬間から時間が止まったかのように、その被害の大きさ、恐ろしさを伝えています。
現在はがれきも撤去され、見違えるほど整備されていますが、当時はホームや駅舎の周囲を大量のがれきが埋め尽くし、駅全体が激しく破壊されていたことが分かります(※大き目のファイルでアップしているので、画像をクリックして拡大して見てみてください)。

旧駅舎2階には資料展示室が設けられ、震災当時の記録や写真、資料などが数多く展示されています。

パネルやボタンは見るも無残に壊され、釣銭口には砂が入り込んだままになっていました。津波にのみ込まれたことを物語る生々しい痕跡が、その姿に今も刻まれています。
線路の付け替えに伴い、旧駅から約500メートルほど内陸側、海抜22メートルの高台へ移設されました。津波の教訓を踏まえ、安全性を最優先に整備された新しい駅です。

旧野蒜駅前の駐車場に停めたTクロス。その後ろには、二本の大きな松がまっすぐ空へ向かって伸びていました。
震災当時、この松も間違いなく津波を受けていたと思われますが、それでも枯れることなく、この場所に根を張り続けています。力強く生き続けるその姿は、野蒜の復興を静かに見守り続けているようにも見えました……。
歴史の「if」が眠る、野蒜築港跡へ行ってみた 
この日からは完全に家族と別行動。それでも宿だけは一緒という、なんとも奇妙な「家族旅行」です(笑)。
今日は仙台から北東方向へ向かってクルマを走らせます。
野蒜築港は現在の東松島市、仙台湾に面した一帯で進められた、日本初の近代港湾建設事業です。明治政府が東北開発の中核事業として整備を進めましたが、1882年の完成からわずか3年後、台風で突堤が大きな被害を受け、その後復旧されることなく放棄されてしまいました。

現在は土木学会選奨土木遺産に指定されています。しかし、東日本大震災では津波によって遺構の一部や資料館が被災・流失し、貴重な歴史資料も失われてしまいました。
明治14年には、この地に「野蒜測候所」が設けられ、日々の気象観測が行われていました。港湾を安全に運用するため、当時としては最先端の取り組みだったのでしょう。
野蒜築港のある鳴瀬川河口と、石巻市の北上川を結ぶ全長12.8kmの運河で、築港事業とあわせて開削されました。しかし、野蒜築港の失敗とともに利用する船舶も減少していきます。さらに、運河の底に流入した土砂が堆積してしまい、明治末期にはすでに船の航行ができない状態になっていたそうです。

実際に現地を歩いてみると、3.11の津波被害の影響もあり、かつてここが歴史的な港湾だったことを感じさせる痕跡は、ほとんど残っていません。
写真は、野蒜築港当時の市街地中心部に建てられた碑ですが、周囲には往時の賑わいを思わせるものは何一つありません。
まさに「夏草や兵どもが夢の跡」。
そんな言葉が、そのまま当てはまるような風景が広がっていました。

けれど、「何も残っていない」からこそ、想像は大きく膨らみます。
もし野蒜築港が計画どおり成功し、横浜や神戸のような大港として発展していたなら、この景色はまったく違うものになっていたでしょう。
さらには、東北が日本の工業や物流、あるいは行政の中心地となり、日本という国の姿そのものが現在とは大きく変わっていた可能性すらあります。
野蒜は、日本の歴史における壮大な「if」を秘めた場所。そんなことを考えながら、この地を後にしました。
家族で(?)仙台旅行へ行ってきました
久しぶりに家族旅行へ出かけることになりました。今回の行き先は仙台。目的は、楽天スタジアムでプロ野球を観戦することです。



恒例!冬のロングドライブ 第8回~震災遺構「中の浜メモリアルパーク」と生き残ったトンネル
東北ドライブ3日目です。この日は、三陸沿岸に今も残る震災遺構を見学するため、宮古市街から北へとクルマを走らせます。








恒例!冬のロングドライブ 第7回~あの日を見ていたラサの煙突と、宮古の震災遺構 
東北ドライブもいよいよ3日目。岩手県の宮古市にやってきました。
今回この地を訪れた目的は、「本州最東端」を極めること。前日に到達した 大間崎(本州最北端)に続き、本州四極のひとつであるトドヶ崎を目指します。
今回の東北ドライブでは、本州最北端と最東端を踏破することが大きなテーマのひとつになっています(ちなみにもうひとつは、公開終了間際だった尾去沢鉱山の見学)。
とはいえ、いきなり最東端へ向かうのももったいない。せっかく宮古を訪れたのですから、気になるスポットをいくつか巡りながら向かうことにします。

まず見に行ったのが、宮古の街のシンボルとも言える「ラサの煙突」。かつてのラサ工業の精錬施設に付属していた煙突で、田老鉱山から産出された銅鉱石の精錬時に発生する亜硫酸ガスを排出するために建てられました。標高約90メートルの丘の上に、さらに高さ160メートル。その姿は市街地のどこからでも目に入る、圧倒的な存在感です。
1939年の操業開始以来、時代の移り変わりとともに、宮古の街を見守り続けてきた煙突ですが、現在は近づくことができないのが少し残念です。

宮古と聞いて、多くの人が思い浮かべるのが2011年の東日本大震災による津波被害ではないでしょうか。市内には、その記憶を後世に伝えるための震災遺構や関連施設が、今も各所に残されています。トドヶ崎へ向かう道中、そうした場所にも立ち寄っていくことにしました。
まず訪れたのはここ「うみどり公園」。ここは震災当時、宮古市役所の旧庁舎があった場所です。

この画角から撮影された津波の映像は、当時テレビでも繰り返し放送されました。記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
ちなみに今でも、その映像は YouTube 上に残されています。
参考映像 https://www.youtube.com/watch?v=4XvFFfgXwnw

目の前にある堤防は、おそらく高さ4〜5メートル。しかしあの日、津波はそれを軽々と乗り越え、川をさかのぼりながら市街地へと流れ込みました。
黒く濁った水が一瞬にして街を飲み込んでいった映像の光景と、いま目の前に広がっているこの景色をリンクさせると、本当に言葉を失います。

河口付近には、大きな水門が設けられていました。震災当時の映像には存在しないことから、あの経験を教訓として新たに整備されたものだと分かります。
震災時には、津波で流されてきた多くの船舶がこの橋に衝突・破壊されてしまいました。それでも橋は落ちることなく耐え抜き、現在も変わらず交通を支え続けています。まさに“生き残ったインフラ”のひとつです。

続いて訪れたのが、すぐ近くにある「道の駅みやこ シートピアなあど」。ここも震災当時、津波に完全に飲み込まれた場所です。背後には先ほどうみどり公園から遠望した水門が、まるで壁のようにそびえ立っています。
参考映像 https://www.youtube.com/watch?v=kkXmieHhPp4&t=473s

津波発生時、この建物は1階部分が完全に浸水してしまいました。上の映像でも、この建物が津波に飲み込まれていく様子が記録されています。
今は何事もなかったかのように営業していますが、その背景にある出来事を知ると、見え方が大きく変わってきます。
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