CROWN Hybrid 紹介-02 THSⅡ(電力機械併用無段変速機)
投稿日 : 2010年09月10日
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前編で掲載した、3MZ-FE Hybrid 機構。
ハリヤー用の3.3L 横置V6エンジンに搭載されたTHSⅡシステムの近接画像です。
1NZ-FXE PRIUS用 Hybrid System との違いは、動力分割機構(スプリット式)の奥に、1段式リダクションギアが組み込まれている事です。
変速機のアウトプット側にモーターが有る為、車速に対してのモーターの負担が大きくなります。
3MZ-FE Hybrid 機構ではこの1段式リダクションギア(減速ギア)によって、細くなったモーターの出力トルクを増強し、且つモーターを高回転化する事で、寸法を大きくせず出力を飛躍的に向上させる事が出来た訳です。
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こちらの画像は、2009年の東京モーターショウで展示された、アイシンAW製のHVトランスミッションのHR-10です。
LEXUS GS450h、そしてのちに CROWN HYBRID に搭載された、2モーター×2段リダクション変速機を備える縦置きエンジン+RWD(後輪駆動)用HV機構です。左側がエンジン結合部分で、次の各構成要素(Ⅰ~Ⅳ)と一直線上に配置されています。
Ⅰ ジェネレーター(発電用モーター)
Ⅱ 動力分割機構
Ⅲ 駆動用モーター
Ⅳ 2段リダクションギア
この変速システムは一般的なCVTとは異なり、エンジンの動力増幅を、動力分割機構(1組の遊星歯車による機械式減速機構)と発電機とモーターの電気制御により行います。
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2段リダクションギア近影。
ハリアーで採用した、Ⅱ以外のもう一つの遊星歯車機構(Ⅳにあたる)を、ハリアーの1段固定式から2段変速式へと進化させています。
モーターは高速走行では効率が落ち、トルクが減少するため、リダクションギアの減速比を切替式にする事で高速域でも有効トルクの大きな領域を使えるようにしました。
これによって、動力性能を高め、且つ高速回転によるエネルギー損失も抑える事に成功しています。
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これは、リダクションギアに用いられている遊星歯車機構(=プラネタリーギアメカニズム、planetary gear mechanism)の構成部品のサンプルです。
一番右の小さい部品をサンギア(=Sun Gear、太陽)、真ん中の組付部品は5個のプラネタリーギア(=planetary gear、遊星)とそれを支持するプラネタリーキャリヤ(=planetary carrier、遊星位置支持ハウジング)、左の一番大きい部品をアウターギア(=Outer Gear、外輪歯車)と言います。
この名称は、太陽系の太陽と、自転し乍ら太陽の周りを公転する惑星(=遊星)にちなんでいます。
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遊星歯車機構の基本断面図。
このメカニズムには、以下のような特徴があります。
●少ない段数で大きな減速比が得られる
●大きなトルクが伝達できる
●入力軸と出力軸を同軸上に配置できる
●多段の遊星歯車に負荷を分散できる
(磨耗やギア欠けが比較的少ない)
●構造上、機構が複雑になる
●ギア比の計算が非常に難しい
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遊星歯車機構の立体的回転作用イラスト。
中心の太陽ギア、その周りを回る惑星(遊星)ギア、一番外側の外輪ギア、これら3つの部品の回転要素を、固定・入力・出力に各々接続します。
どれを何に割当てるかによって、ユニット一個として複数の減速比や回転方向を切替える事が出来ます。
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こちらは、Ⅱの動力分割機構の拡大画像。
Ⅳの2段リダクションギアと同様、こちらも遊星歯車機構(=プラネタリーギアメカニズム)です。
開発の進展をおさらいすると、
①PRIUSにはこのⅡの動力分割機構のみ
②ハリヤーにはⅣのリダクションギアを1段だけ加えてモーターの出力トルクを高め、且つ高回転化
③LEXUS LS/GS、及びCROWNではⅣのリダクションギアを2段にして2段変速機として使用
・・・となります。
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こちらは、Ⅱの動力分割機構の簡易図解。
エンジンのクランクシャフトはプラネタリーキャリアに、発電機はサンギアに、外輪歯車を車輪(モーター)にそれぞれ接続され、エンジンの駆動力を車輪(モーター)と発電機に分配します。
モーターと車輪は機械的に直結しているので、車輪が回転している時は常にモーターも回転しています。
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