レッドブルは、2010年から2013年の4シーズン77戦で41勝した。
マシン的に盤石であったかのように思われるが、ギアボックス、オルタネータ、KERSの慢性的なトラブルは抱えており、空力重視のマシンコンセプトでの弊害は多少なりともあった。
トラブルは何故かウェーバーに偏ったためベッテルは連勝を重ねたがもっと接戦になった可能性は大きくあった。
ただタイヤによるレース中のコントロールは他チームからすれば奇跡に近いパフォーマンスではあった。
独走中のベッテルがファステストを出しに行くと無線で辞めるよう促されたが、ベッテルは常に狙っていた。
2009年、昨年イタリアGPで史上最年少で初優勝を遂げたセバスチャン・ベッテルがトロ・ロッソから移籍し、ドイツGPではマーク・ウェバーが自身にとって初優勝を獲得した。この年からこの2人のコンビが続く。
ニューウェイらは物議を醸した「二層ディフューザ」のコンセプトを見逃した。このコンセプトのおかげで、前半戦の貯金で、レッドブルに後半追い上げられたが、ブラウンGPとジェンソン・バトンはこの年タイトルを獲得した。
長いF1の歴史で新規参入チームが、、目立ったスポンサーも獲得せずタイトルを獲得し翌年買収され消滅することは非常に奇妙な出来事であり、今後起こりえない珍事でもある。
効果的なソリューションの発見はそのシーズンを牛耳ることが可能性があり、それを実現すれば、それまでのチーム間のパワーバランスは簡単に逆転する。もちろん、レッドブルでさえ絶対王者から簡単に陥落する可能性も大きくある。
リヤのディフューザーはダブルディフューザーと呼ばれる2段式のものを搭載している。これがテクニカルレギュレーションに適合していないのではないかと他チームから抗議を受けたが、FIAによって4月15日に合法であるとの判定を受けた。
ちなみに、この開発は前年撤退したスーパーアグリの空力設計者らや、撤退前のホンダの日本人エンジニアが考案したものといわれ、ロス・ブラウン自身も当時を振り返りながら認めている。
そして2012年、排気管の位置がマシンのフロアより高い位置に決められ、再び登場した吹きつけディフューザーのマシンが禁止されると、レッドブルは排気口の位置を新しくしたにもかかわらず、フロアに吹きつける方法があることに気づかなかった。
よって、前年とは大きく変わり、開幕から7戦続けて異なる優勝者が誕生するという珍しい記録が生まれた。シーズン中の勝者は8人を数え、1983年と2003年に並ぶ2位タイの記録となった(最多は1982年の11人)。
2012年規約に対する最も巧妙かつ最も効果的なソリューションは、ザウバーのものであった。
次にウイリアムズ。そのため、レッドブルがザウバー等を見習い、フェラーリ、マクラーレン等も続く。しかしコアンダ効果によるエキゾーストの開発は広く各チームに広まり、その後はタイヤへの理解度とマシンの対応力それに伴う戦術でシーズンは支配された。
そのため2009年のような勢力分布にはならなかった。
つまり、彼らはこの時代の規約における二大コンセプトを見逃しているのだ。ただしその後巻き返して、最初に考案したチームよりもこれらのアイデアを応用し実行した。どのチームよりも成功した。
ある著名なF1ジャーナリストは、ニューウェイは模倣する天才であり、かつその元のデザインコンセプトを超えて自らのマシンに的確に流用すると。
2013年もオルタネーターの問題は再燃し、シーズン途中でサプライヤーを宿敵マクラーレンの関連会社を選んだ。
同じルノーエンジンのロータスや他のチームより問題が発生するのはオーバーヒートと言われているが、単純な空力パッケージ上の問題より根深いものである可能性が高く、かつ速さの秘密の重要な部分に関係する部分である可能性もある。
レッドブルは、最終戦にも関わらず、ブラジルGPに格子状の圧力センサーを装着しフリー走行でデーターを取っていた。レッドブルは王者ではなく、非常に強い、貪欲な挑戦者でもある。
間違いなく来シーズンの開発をリードしているのはレッドブルであろうが、毎年、レギュレーションの違法すれすれのところから新たなソリューションを発見しその年のトレンドとなる。シーズン中に禁止となる場合もあるが。
ニューウェイは、最近のRB9に対する開発の一部は2014年に転用できるが、それ以外は新しいレギュレーションに適用できないと述べた。
ノーズの高さ変更等に伴うボディー下面からサイドポンツーンに伴う空力ソリューションは大きく変更になる。近年まれにみる大型になったFウイングのフラップ関係も少しは大人しくなるに違いない。
しかし予想されるノーズ形状は醜い形状となる可能性が高い。しかしここ2年の段差のノーズも見慣れてくるのは不思議である。ラウダはこの世の終わりのように嘆いていたが、結局段差を覆うチームはなかった。重量増加等を嫌ったというが、空力的な適正を見つけたのではないだろうか?
2013年、あの赤外線カメラで明るみになった、たわむフロア。レース中の接触に伴うFウイング交換時に発覚した、やわらかいノーズ。トラクション・コントロールに関する噂や、排気のダウンフォース生成効果を最大化する巧妙なエンジン・マッピングの噂。まだまだ秘密が多く隠されているはずである。
はたして、ニュウェイは来年の規約に対して最高のソリューションを見出すだろうか、それとも他のチームが見出すだろうか? シーズン終了から3か月ほどしかなく、もう現在は基本パッケージは各チーム共完成または決定しているはずである。
ここ数年で大きく違うのはエネルギー回生装置 (ERS)の導入である。
2009年のKERS導入したワークス勢が低迷し非導入のブラウン、レッドブルがチャンピオンを争ったように新たなソリューションを導入の当初は混乱をきたすものである。
近年の空力の優位性よりパワーユニットでの優位性や成熟度での優劣が起こる可能性があるが、ただ、現在ルノー、メルセデス、フェラーリの3つしかパワーユニットサプライヤーはいない。
特定のサプライヤーが秀でる可能性は十分ある。がしかしその次に差が生まれるのはドライバーの技能と空力ソリューションである。
冷却の方法が大きく変わりサイドポンツーンの形状も変わり、今ほどのタイトなコークボトルは増加するユニット、補機類で大きくなり、熱害による余裕のスペースや冷却のための空気の流れの管理は非常に困難になるのは誰もが予想できる。
最終戦のブラジルGPでは派手な白煙をグロージャンは披露したが、非常に久しぶりに見たような気がした。来年はパワーユニットのトラブルで多くの光景を見ることが予想される。
そして忘れてはいけないのがタイヤである。ブラジルGPに2014年用のタイヤを持ち込んだがレース以外は雨だったため使用されなかった。
よりコンサバになるのか?ライフは伸びるのか?はたまた悪名高きレース中の大きなファクターとして残るのか?
来季のパワーユニットはピークパワーは減少となる可能性が大きいが、ターボと回生エネルギーの増大は、瞬間的なトルクは増加する。構造的な脆さで演出してきたピレリは構造強化と特性によるコンパウンドの変更は求められる。それがどこまでの範囲となるか、シーズン前テストを多く望んでいるが、FIAは許可しない。もうタイヤによる演出は見たくないが・・・どんなシーズンとなるのであろう。
ピレリもここ数年のサプライヤーとしては商業的には明らかに失敗であり、モーターレーシングに興味のある人間にとってピレリのタイヤのワードは決してよいイメージは無い。
FIAはピレリによりエキサイティングなレースをと、現在のような特性のタイヤを要求したが、結局一番理解しうまく利用できたのはレッドブルであった。
一時期他のチームに有利に働くこともあったが、例のバーストによる事態のため昨年の仕様に近いものに戻された。
これはメルセデスとフェラーリには不利に働きまたしてもFIAの思惑は外れた。シーズン途中の変更は異例であり、起こってはならないことである。このことも結果的にレッドブルの独走の助けとなってしまった。
この状態をピレリが長く続けるとは思えない。もしくはミシュランやほかのサプライヤーが出現するかもしれない。
ミシュランの言う18インチ化は市販車レベルで考えるのであればさも、当然であるがFIAは今のところ拒否している。
パワーユニットはより市販車を意識したものに変更されていっているのになぜタイヤだけは?
ちなみに、仮に18インチタイヤが導入されれば、現行ではタイヤ自体がサスペイションの一部として利用されているので、その部分がなくなるため、大きい機構自体の変更とメカニカルな部分のパッケージがより大きなものが必要になるはずである。
現在のような細いノーズでは収まらない可能性が高い。
そのために13インチがずっと続いている要因の一つではあるが、最大の要因はマーキングされるスペースの問題であろうか?
来年もまたしても、レッドブルの独走を許すのか・・・言い方を変えればその他のチームの不振は続くのか?
今季のマクラーレンの不振は目を覆うものであった。
ポディウムなしは現在のマクラーレンの体制になる合併以来初めてのことである。
正直2人のドライバーとも開発がうまいドライバーでは無い。かといってバトンにハミルトンのような走りは期待できない。ぺレスは時々光る物は見受けられたが、成績には繁栄されず、トラブルメーカーの烙印を押された。
大きなレギュレーションの変更の前年にも関わらず前年の正常進化モデルとせず、新しいコンセプトでのマシン開発で、なおかつテスト中の誤ったパーツでのデーターでの開発のミスを気づくのが遅れ、その開発の遅れをシーズンを終了まで挽回できなかった。
それより、ハミルトンの移籍が一番のネックであったと思われる。
来季は1年だけメルセデスのパワーユニットを使用し、ホンダに移行する。非常に中途半端な状況下である。期待は2015年としよう。ボーダーフォンに代わるスポンサーは日本企業と噂される。これはHONDA復帰とのパッケージであるが、2014年の年間約50億も含まれていると・・・
パナソニックとソニーが一時噂されていたが、どこなのであろう?
ライコネンが復帰し、2人のワールドチャンピオンを要するフェラーリであるが、チームの歴史をみると活躍していたのはNAエンジン時代のみであり、チームとして新機構や特にターボやエレクトロニクス関係に素早くなじめない歴史がある。
シューマッハ、ライコネンもワールドチャンピオンを取ったときはNA時代であり、以前のターボ導入期のフェラーリの低迷が思い出されるのは私だけであろうか・・・・
次はメルセデスであるが、チームはコンストラクターズ2位を獲得し、ロズベルグが2勝、ポール3回。ハミルトンは1勝しポール5回であった。
昨年から大きな飛躍を期待され、シューマッハの引退によりハミルトンが加入した。両名とも予選では光る走りを見せたが、レースでは3勝にとどまった。
マシン固有のタイヤに対する特性と、改善しかけたにも関わらず、ピレリのタイヤ仕様変更が大きく影響した。マシン固有の特性は依然からのものである。
チームの首脳陣の多さが体制が大きく影響していると早くから言われて、とうとう、ロス・ブラウンはチームの離脱を発表した。フェラーリ移籍やあるチームの買収が噂されている。
メルセデス自体が来季以降の飛躍のため予算の増額を早くから決定し、パワーユニットのテストも順調に進んでいると思われる。
今年大きく成長したロズベルグとハミルトンの体制は大きく期待できるが、比較的攻撃的な2人のドライビングスタイルがどう影響するがが問題である。
今シーズンより厳格なターゲットタイムによるコントロールレースの様相が予想される。これはどのチームにも言えることであるが、状況の理解と実行そのための戦略がより重要とされる可能性が高い。財政的にも問題は無いのでより期待したい。
財政面といえば、一部の上位チーム以外、財政難は珍しくなく、ドライバーのマーケットでもペイドライバーの名前が多く聞かれる。ロータスもその一つであり、深刻な状況である。
初戦のオーストラリアGPの1勝にとどまったがチーム状況から考えれば、ライコネンが2位6回、3位1回。グロージャンが2位1回、3位5回は素晴らしい成績である。より財政的に安定していればコンストラクターズでも2位を争ったのはロータスであったであろう。
ライコネンの移籍によりグロージャンがNo1ドライバーとなるが、彼の今シーズンの成長は目を見張るものがあり後半はポディウムの常連であり、アロンソ以外でレッドブルを脅かすのは彼だけであった。
結婚し、精神的に落ち着いたことが大きいらしいが今シーズンから理学療養士の定期的なカウンセリングを受けているらしい。
財政面ではカンタム・モータースポーツとの交渉中で今週中にもまとまるといわれているが、依然不透明である。一時はルノーに命名権含めた支援を要請していたと噂されていた。
スタッフ、ドライバーとも給料の延滞、未払いが報道され身売り、チームの消滅も噂されている。
消滅の危機はぜひ回避してもらいたいが近いうちに大きな発表がされる予定である。
ドライバーもグロージャンのチームメイトが決定していないが、その動向に候補たちは待っているようだ。マルドナードとぺレスの行方でほぼ決まるが2人とも大きな支援のあるドライバーである。
可夢緯は蚊帳の外である。あのお金はいったいどうするんだろう?
※次回はエンジンではなくパワーユニットについて。