からけんのブログ一覧

竹輝飯店(ホテル)。僕の気持に合っているところだ。旧市街のはずれにある。この近くにも資本主義は容赦ない。

働け、稼げ、休むな、頑張れ。中国はスローガンが好きな国だ。工業団地にはドーランを塗ったように真っ白な工場が並ぶ。そのそばに灰色の制服を着たいかにも田舎から出てきた顔をした女工さんがあふれる。

中国という偽国家と、一旗（ひとはた）あげようとする博打資本主義同士が悪魔の握手をしたようだ。労賃が安いぞ、土地が安いぞと中国が叫べば一旗組が投資するぞと応えた。ひとをコマ扱いする鵺（ぬえ）同士だ。

一度蘇州市市長から説明を聞いて幻滅した。国全体が労働者絶望工場だ、ごく一部に成金が臭い恰好をして町を闊歩している。まるで日本だ。

そんなことなら外国に行く意味はない。

さいわいなことに中国は広かった。韓国のような息が詰まる閉塞感もない。竹輝飯店のほんのすぐそばに滄浪亭がある。(そうろうてい、纓（えい）とは冠の紐）


　　　　 滄浪之水清兮　　滄浪の水 清ければ
　　　 　可以濯吾纓　　　以って、吾が纓（えい）を洗うべし。
　　　　滄浪之水濁兮　　滄浪の水 濁れば、
　　　　可以濯吾足　　　以って、吾が足を洗うべし。

日本では弥生時代が始まろうとする頃、ＢＣ3世紀。楚の屈源が詠んだ。こだわらないことが大事ですよ、という意味である。滄浪亭は、今の６倍の規模があったそうである。今でも十分広かった。日本語の公園という感じとは異なるアホを排除する威厳を持つ。

チャラチャラしてない。園内に入ると何時間でも過ごせる不思議な魅力を持つ。どこでも大声で話す田舎者が来ないというだけで世の中はこんなにも清涼になるのか。

そういえばここはクルマの音がしない。そのせいか。




　

僕は歩いていて素敵な花を見つけた。蠟梅、（ろうばい、Winter sweet、からうめ）。何語で言っても素敵だな。なんと言う香りの素晴らしさ。地面の中からこんな香りを引き出すなんて。

帰国するとすぐこの梅を購入した。どんどん育ち毎年１月ごろ素敵な香りを出す。庭で一番大切な木だ。

誰が地面の中からこんな香りを出せるだろう。人間の知恵なんてまだまだだ。