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2025年式BYDシーライオン7感想文 - シーライオン7
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ノイマイヤー
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BYD / シーライオン7
シーライオン7_RHD (2025年) -
- レビュー日:2026年2月20日
- 乗車人数:2人
- 使用目的:その他
おすすめ度: 3
- 満足している点
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1.圧倒的コストパフォーマンス
2.BEVらしい走りの俊敏さ
3.BEVの中では健全なパッケージ
4.抜きを自動で行うブレーキのマナー
5.顧客の声に寄り添い、学ぶ姿勢
自らの強みをよく理解している。 - 不満な点
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1.乗り心地の悪さ
2.持て余す巨体
3.自動車として気になる詰めの甘さ
4.運転支援の甘さ
5.ATTO3からの進歩を感じない
自動車作りの経験の浅さから来る荒削りな点は明らかに弱み。ATTO3からの進歩を感じない点は今後も注視したい。 - 総評
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BYDシーライオン7に乗った。結論を先に言えば2023年のATTO3で感じた驚きと焦りを上回るものは感じられなかった。
2026年2月時点のラインナップはボトムから、ドルフィン、ATTO3、シール、シーライオン7、そして日本市場向けとして初のPHEV仕様であるシーライオン6がある。

最も売れそうなSUVスタイルのATTO3が第一弾ということも、セカンドカー需要に対応できそうなBセグベーシックのドルフィンが続くこともよく理解できた。そして販売店網を地道に増やし、顧客とのFace to Faceのコミュニケーションから自社製品へのフィードバックを得ようとする真面目な姿勢にも好印象を持った。

シーライオン7は諸元を見て分かるとおり、全長4.8m、幅1.9m超という立派なサイズのSUVで驚異の加速性能やナッパレザーの立体的なシート、北欧の有名メーカーのオーディオなどプレミアムな要素を散りばめた高級SUVである。分かり易く言えばレクサスRZが近いサイズに位置している。
有機的なエクステリアやド派手な灯火類など欧米の高級BEVと肩を並べるような装備が揃っているにもかかわらず、RWDは495万円という価格が最大の特徴になっている。(レクサスRZは790万円から)
実際に目の当たりにし、乗ってみるとボディサイズが気になる。高解像度の周辺カメラがあってもデカイものはデカイ。またBEV的急加速は楽しめるが、シャシ性能がそれに追いついていない印象が強い。
サイズや性能などの諸元を元に考えればコスパの高さを充分に楽しめるとは思うが、シーライオン7のサイズ感を持った車は立派な高級車である。それらは500万円では到底買えないが、どれもプレミアムブランドであるという自負の元で高級な装備を備え、味付けにも相当な時間をかけており、それゆえ洗練された走りを見せるのだ。

BYDはリーズナブルな販売価格もさることながら圧倒的な開発スピードが特徴である。
元々中国には過酷なIT企業を中心に996文化(午前9時から午後9時まで週6日働く)があったらしい。さらにBYDには11万人の技術者が在籍しており3交代勤務で開発が行われている部署さえあるという。電池をはじめとしてほとんどのコンポーネントを内製するという「全方位主義」によって厄介な調達や開発における各部との摺り合わせのスピードを上げている。タイムリーに商品を市場に提供できれば販売競争において優位に立てる。そもそも開発は後追いの方が先行するライバルが悩んだ末の意志決定の結果を自社製品に活かせるからだ。そこにBYDが持つ強みが重なればコンセプト決定から量産開始まで23ヶ月以下で完了できるというが、これは現代の日本メーカーの約半分のリードタイムなのである。この様にBYDは急速に自動車業界の中で存在感が増していき、2025年には460万台を生産して世界第5位の自動車メーカーとなった。日産やホンダどころかGMをも抜き去って4位の現代・起亜に迫る勢いだ。
そんな中、私は2025年にデビューしたばかりのシーライオン7に試乗する機会を得たということは既に書いた通りだ。偶然、2台の同一グレードに乗ることができて市街地からワインディング、高速道路までを総合的に確認することができた。

その開発力を以てすれば、世界のプレミアムブランドと戦える車になっていると期待しない方が失礼だと思うのだが、私の感想は「大きくて色々付いてるATTO3」という感想に留まった。詳細は別の項に譲るが、自動車としての作り込みがまだ不足しているとハッキリ感じられた。
495万円という価格を考えれば、それでいいじゃないかという意見も多数ある。私も一定の理解ができるが、シーライオン7はラージクラスのSUVである。一般的に自動車のヒエラルキーはボディサイズに比例する傾向があり、シーライオン7はサイズ的に競合する車種と比べると不満が残ってしまう。それでは495万円の乗用車としてみてはどうか?と言えばそれも物足りない。BEVだからという時代でもなくなってきている。補助金が約35万円あるとして460万円の乗用車だとしてもハリアーやエクストレイル、フォレスターあたりも視野に入ってくるがそれらの車と較べれば、装備品目や定量的な諸元値はBYDシーライオン7が秀でている。しかしながら、これくらいの費用を投じるならある程度の作り込みが欲しい。
言うなれば、ちょっと高めでメニュー数が多い食べ放題レストランの様である。品数は多いけどどれも美味しさは・・・・おなかいっぱい食べられるが、心から満足出来るだろうか?
シーライオン7の高水準の装備や加速性能はあくまでもファッションやアクセサリーであって、必ずしも便利な道具としての機能までもが優れているわけではないのである。写真のように128色から選べるインテリア照明は分かり易いギミックだが、中には「後席置き去り警報機能」の様に非常に日本市場向けの真面目なアクセサリーも含まれており、市場をよく見ていると感じられて侮れない。

BYDはサービス精神旺盛で、いささか過剰な部分がプレミアムとして解釈されるブランドではない上に、プレミアムの基礎となる作り込みが不足しているとなれば、その価格が同セグメントの競合より安かろうと割高で不便な実用車という域を出ていない。もしかすると、チューニングや品質の作り込みに費やす時間まで削減して早く世に出すことを選んでいないだろうか。
私はBYDは家電業界で独自のバリューブランドとなりつつあるアイリスオーヤマの様な立ち位置を目指すべきだと思う。高付加価値を生むハイエンド的な機能よりも、ほどほどの機能でお買い得感のある価格で販売するという方針である。安かろう悪かろうではいけないが、過剰な部分を取り去って機能を追求するべきだ。
その意味で2026年発売予定のラッコはドンピシャで日本でも(だけで)売れそうなBYDの新商品だ。日本は国土が狭く、道路も狭い。だから駐車場だって狭苦しい。だからこそ、道具としての機能性が特に求められるセグメントは軽自動車であり、その中でもスーパーハイト軽ワゴンは日本で最も売れている分類である。ラッコは一部のマニアではなく、市井の日本国民のためのBYDである。一方でシーライオン7はどちらかというと中国国内の内需を満たすための製品のように感じた。
BYDジャパンは2022年に設立され、2023年から販売を開始して3年が経った。BYDの販売台数は着実に年々右肩上がりである。これには店舗数の拡大と、商品ラインナップの拡充がある。シーライオン7は2025年に1501台を販売し、全体の4割を占めた。(ただし、2025年の実績を比較するとbZ4Xは2ヶ月で3448台を売った)

販売台数は2023年1月から累計5000台を超えているが、実店舗を持ちながらこの程度の販売台数では正直なところ赤字経営かも知れない。それでも、2026年現在でまだ20店舗が開店準備を進めているというから本国からの支援は相当なものなのだろう。その中で利益率が高いとみられるシーライオン7の存在は販売店にとっては間違いなく貴重な存在だ。
個人的にはBYDが日本で着実に地盤を築いていくことに対して、危機感を持っている。しかしながら、過酷な競争こそが日本ブランドの自動車を進化させる近道でもある。間違ってもBYDの作り込みレベルで良いんだ、と下方修正しないことが肝要だ。そうなるとますますBYDの土俵で真正面から闘うことになるからだ。日本市場で顧客に「BYDありかも」と思われるとまずいことになる。

総合評価として★は意外と真面目なところにオマケして3つ。高額商品としては不満が残り、特に乗り心地は改善が必要。
- デザイン
- 3
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BYDが初めて作った乗用車はアルトをベースにしていたり、自車開発したPHEVは当時のカローラそっくりな(と言うよりデッドコピー)意匠だった。ATTO 3の感想文で作った画像を再登場させてみる。

シーライオン7はウォルフガング・エッガーが率いるBYD内製デザインなのだそうだ。調べてみると氏はアルファロメオで156や8C Competizioneをデザインしたとされ、2017年からBYDのデザインディレクターとなっている。
シーライオン7のシーライオンとは日本語でアシカを意味し、シーライオンをはじめとして海洋シリーズとして海洋生物の名前がつけられている。ベースとなったセダンもあざらしを意味する。デザインコンセプトは「海洋美学」ということで大らかな中国大陸的なテーマのように感じる。正面から見てXに見えるのはOcean X Faceと言うらしく、決してマーク〆との関連はない。

中国車に必須のクッキリハッキリした灯火類は国産車では勝てる車種が居ないのでは無いかと思うほどだ。ヘッドライトは青白く光り、華やかだ。テールも水滴を模したパターンで繊細で個性がある。
「リフレクターの蒸着メッキは高いから廃止」とか「法規的にLED3個で良いんだからそれ以上は無駄」とかそういう価値観と全く異なり、シーライオンは灯火類をアイキャッチに使っている。
写真を見ると、ヘッドライトいかが分厚く見えてバランスが悪く見えたのだが実車を見ると視点が高いのでバランスが取れている。

サイドはBピラー以降を絞った空力シェイプがよく分かる。BEVにとって空気抵抗は大敵だ。ICE車は他で頑張れる部分があっただけでBEVは空気抵抗が悪ければダイレクトに電費に効く。CD値は全長が長いというのは空力的には有利だと前置きしつつ0.28と相当頑張っている。ドアハンドルを格納式にし、ルーフからの気流をキレイに流すためにルーフスポイラーをネコミミ型にして中央付近の気流をバックドアガラスにキレイに気流を繋ぎ、バックドア後端のスポイラーで渦を後方に流し外側の気流はルーフからさっさと引き剥がす作戦を採っている。

リアは水滴模様のリアコンビは既に書いたが、今流行りの一文字テールランプを採用し水平線を表現しているとのことだ。BEVゆえに基本的には分厚いシルエットだが、過度に分厚く見えないように調整されている。
個人的に感心したのは、ドアやフードの手押し剛性の強さだ。衝突に使う骨格以外はギリギリの薄板で作るのが常識だが、それによって現代の車両の外板はペコペコと頼りないものになっている。
昔はフードに腰掛けたりルーフに子供を座らせて撮った写真を見たことがあるが現代の車でそれをやるとベッコリと凹んでしまうだろう。
昔は外板の板厚も分厚く、ワックス掛けで簡単にペコ付いてしまうような外板は商品性がないと指摘を受ける時代だったが、近年はワックスではなくコーティングをかける人が増えているので薄板化してもクレームになりにくい。
その点、BYDはどのパネルを押してもしっかりとしていてどことなく頼り甲斐がある。前述の通り衝突安全には何の効果も無いのだが人は手の感覚や触感から安心感を得るという事をBYDはよく分かっているのかも知れない。

BIW(ボディ・イン・ホワイト)のCGを見てみるとドアアウタパネルの裏におびただしい量の骨が入って外板を支えていることが分かる。国産だとホンダN-WGNがドア補強を入れて平板な意匠を実現しているが、シーライオン7の外板補強は我が目を疑うレベルだった。
ドアやフードはキャラクターラインや凹凸面が存在し、素性としてはペコペコし易いはずなのだが、そこにしっかりとコストと質量を投入している。
前述のネコミミリアスポイラーも斜め上からの見え方も配慮されて円弧を描いている。パノラマルーフとの境目にボディカラーの三角の樹脂パネルを設定しているなどBYDは意匠に対してしっかり原価がかけられている点は、デザイナー視点なら相当羨ましいと思うのではないか。

インテリアもステアリングにAUDIを感じる以外はBYDらしい。例の縦横回転式のディスプレイはお馴染みだがインパネ両端からドアトリムに繋がる
立体的な造形は他車では類を見ず、オリジナリティがある。




樹脂部品の精度がアバウトだったり、ガタガタで雑なステッチやトリム間建付けのバラツキでせっかくの連続感が損なわれているのは残念だがコスト的に有利なハイバックシートを豪華に見せている点は三河地域の自動車メーカーには大いに参考になるのではないか?(安っぽくて目も当てられないハイバックシートを採用している)
デザインに関して、BYDは急速に進化しており、意匠の意図を汲んだ部品設計をしていると思う。
しかし、部品のクオリティがまだ追いついていない事もあり狙いに実力が伴っていない部分が気になる。★3とする。 - 走行性能
- 4
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スマートキーを操作するとインテグレートされたドアハンドルが伸びてきた。手をかけて軽く引けばドアが開く。ちなみにこのドアハンドルは、スマートキーで施錠するか一定車速まで加速すると再びドアと面一に格納される。試しに手を突っ込んだままスマートキーで施錠してみたが、挟まれることなく安全性にも配慮されている。
乗り込んだ。回転する15.6インチディスプレイ、カスタムカーのような室内照明はBYDらしさがあるがステアリングはどことなくアウディ風、ガラス製シフトノブはボルボ風かな?ということで全体的に欧州の影響を受けながら中国らしさ、BYDらしさも確かにある。
起動はセンターコンソールのシフトノブ右手前のボタンで操作するのだが、まずこれが初見では分かりにくかった。(もっと言えばハザードスイッチもわかりにくくて押しにくい)

BEVなので、メーターが鮮やかに点灯しSOCは88%で航続距離は472kmと表示された。電卓で計算すれば100%で536.4kmとほぼカタログ値通りになる。
空調が動き出すくらいでアイドリングもなく何も起こらない。シフトノブを手前に倒せばあとは発進すればEPBが自動的に解除される。
走り出しはスムースだった。さっそく交差点を左折した。ウインカーレバーが右側に配置されている点が喜ばしい。さらにセンターディスプレイには左後方の映像が映し出されて感心した。2018年、レクサスESが量産車世界初採用したデジタルアウターミラーと同じ機能が楽しめる。ESのデジタルアウターミラーはドアミラー付近まで首を振ってディスプレイを確認しなければならないのは、生真面目なトヨタのエンジニアがドアミラーをデジタル化したとしても、従来の延長線上で後方確認できるようにしたのだろう。その生真面目さは評価する一方で、BYDのこの機能は非常に見やすい。この映像はミラーでは無いのでちゃんとドアミラーも見ているが、考えてみれば映像が正確でなければ各種安全機能も正しく動くはずがない。

発進加速はBEVらしく過剰に速い。2230kgという車重を感じさせない最大トルク380Nm、最高出力230kW(312ps)という性能が本当に活かせる場所はサーキットくらいだろう。ある程度までアクセルを踏み込めるが、「ちょっと怖いくらいだな」と思うところから幾らかアクセルの踏み代が残っているからだ。
市街地で周囲と一緒に走ることはそれほど難しくない。ただ、インナーミラーに映る本当の景色は3割ほど。バックドアガラスの開口が小さくトーチカを覗いているような感覚だ。左後方もピラーが太く死角が大きい。そのあたりは「ディスプレイで見たら良いじゃん」と言うことなのだろう。しかし、自分の目で見ないとちょっと気持ち悪いと言おうものなら「そもそもミラーに映る映像は虚像。ディスプレイ見てんのと一緒じゃん(一緒じゃないけど)」とシーライオン7から説教されそうだ。まだBEVが珍しい日本でのシーライオン7はスペシャルティカー的な商品だと思うが、気にはなるので記録のために記しておく。
市街地では25km/h~30km/hあたりでキャビンがこもる瞬間があるが、正直これより酷いのは幾らでもあり、低周波に関しては比較的良い方だ。これは剛性の高いバッテリーを床下に搭載し、車体骨格として利用している恩恵かも知れない。
一方で乗り心地は堅さを感じるだけでなく、常にブルブルと揺れが収まらず、目線が動かされるのが気になった。普段乗っているプログレと比べた時、路面からの入力をサスやブッシュだけで抑えられず、残念ながらボディに伝わることはよくある。プログレはフロア振動が有るときでも、シートで上手く遮断してくれるところ、シーライオン7はそのまま私の頭部まで揺れを伝えてしまう。人体に揺れを伝えやすい点が視線が動かされる原因なのではないだろうか。リアルの路面は良路だけではない。案外、限られた開発時間の中で良路ばかり走っていると見落としてしまうポイントなのではないか。
前方の信号が赤に変わり、気付くのが遅れて少し強めの制動になってしまった。感心したのは停止直前の「抜き」を自動でやる制御が選べることだ。私が試乗した時には作動していたので重たい車が停止して身体がグッとGを感じるカックンが無い。同種の制御はセンチュリー系にもあると言うが実際に体験したのはこれが初めてでちょっと癖になる快感だった。同乗者を乗せている時に使うと喜ばれそうだ。Frブレーキはドリルドタイプの立派なものでこの巨体を停めるにはそれくらいのスペックを求めたのだろうか。

ICから高速道路に流入した。ランプ路でちょっと元気に曲がってみたが、2t超えの物理量を感じさせない俊敏な曲がり方に少々恐怖を覚えた。グイグイ切り込んでいくのだが、ステアリングフィールが希薄でデジタル感覚だ。昔のアーケードゲーム的な反力の違和感は無かったが切れば曲がるという先のタイヤからステアリングまでが繋がっている感じがもっと出せないと急に限界を超えそうで怖い気がしてしまう。
合流は一切のストレスフリー。必要とあらば猛烈なダッシュ力を発揮する。RWDゆえ、加速時のトラクションは十分でFFベースのBEVにありがちな
トルクステアの心配が無い点が良い。サクラの場合は絶対的な出力が絞られているからFWDでも癖を感じないが、アリアクラスまで行ってしまうとトルクステアや偏向が気になる場面も出始める。もはやE/G車では問題にされなくなってきたトルクステアで不満が残るモデルが出てしまうほどBEVの持つ強大な駆動力による諸問題が再び課題になってくるため、今後はRWDがさらに増えるであろうと予想する。
BEVでは加速性能そのものに不満が出るような経験はほとんどない。シ―ライオン7も過剰な程の加速力を持っている。公称値では0-100km/h加速は6.7秒、最高速度215km/hを誇るが、高速道路でも事実上敵なしという感覚だ。
一般道で気になった乗り心地は相変わらず好転せず、常にブルブルと揺れて揺すられてしまう点は明らかな欠点だと確信した。頭部の共振周波数は20~30Hzというから、この領域の揺れが大きいということになりそうだ。また、路面の大きなうねりを超えた際に上下に揺れる(バウンス)するのが自然なシーンで前後輪が別々の周期で揺れている。減衰があまり効いていないのだろう。その分ソフトな乗り心地なのかと期待してしまうが、突き上げはまぁ普通にある。
騒音の観点では高速域でも風切り音は小さく、気になる音は後席からのタイヤ(キャビティノイズ)と橋の継ぎ目を超えたときの「かぽーん」という残響音が気になるくらいで大きく注目すべき現象は無かった。アコースティックドアガラスは確認できたが、ふんだんに防音アイテムを使っているのではないかなという感はある。BEVにはNVが大切、ということをBYDは良く心得ている。
レーダークルーズコントロールと車線維持機能を使った。「お、いいじゃん」と思えたのは本線を淡々と走っている時で問題は無いが、ジャンクションに差し掛かり制限速度内でコーナーを旋回中に前方を走るトラックを見落とし、隣の車線にいると勘違いしてぶつかりそうになったので利用は状況の良いシーンに留めておいた方が良い。

夕刻の高速道路を気ままにクルーズするのは気持ちの良いシーンのはずだが常に頭部まで揺すられていてどうにも疲れてしまう。ちなみにシールでも乗り心地に関する指摘があったとされ、減衰力可変ダンパーが採用されたと言うがシーライオン7には最初からそれが付いている。ボディサイズが大柄かつ重いBEVなのでゆったりとクルージングさせるのには丁度良いかなと試乗前に期待していたが裏切られてしまったようだ。
(乗り心地項に続く) - 乗り心地
- 2
-
(走行性能項の続き)
帰路にワインディング路を挟んだが、ここでも特筆すべき点はなく、強烈な加速とバッキバキに曲がるのは事実だが大柄すぎて車線内をキレイに走らせる事に全神経を集中させる必要があった点が面倒くさかった。この感想は過去のレクサスLSと同じ感覚であり、やはり我が国では大柄なグローバルサイズは持て余しがちだ。
この様にシーライオン7に乗ってみると、圧倒的な動力性能やハイテク感あふれるインフォテインメント、あるいは内外装の華やかさが楽しめて高コスパなBEVというキャラクターに対する説得力が高そうに見える。
ところが全長4.8m、車幅1.9mという大柄なBEVがいくら近しいサイズの車と割安な価格設定だからと言っても売れるとは考えにくい。もちろんレクサスRZなど日本製BEVと比べて圧倒的な安さだが、かといって500万円の車並みの質感・しつらえがあるのかと聞かれると歯切れが悪い。勿論、強豪をよく研究したシーライオン7は、例えば部品点数や諸元など書面で比較できる面においては高い商品性があるのだが乗ってしまうと、「ああ」とバレてしまう。
自動車の開発期間のうち、多くのメーカーは図面を元に試作車を作り、1年以上の時間をかけて狙い通りの走りの味が出せるかを作り込んでいく。そこに各社のノウハウがあったり、こだわりが見えてくるのが各車の乗り味の個性と言うことになる。特に不快な現象がないかどうかも徹底的に走り込んでモグラたたきのように対策をしていると考えらるが、一般に500万円クラスの車というのは「不快ではない」レベルを超えて全ての要素で及第点が付かないようなっているだけでなく、「期待以上」の存在も求められている。だから安いからと言ってもこのレベルではいけないと私は思う。
各メディアで絶賛されているものの、シーライオン7には物足りなさが残る。言わば、皮むきや調理が終わった段階の料理のようなもので、味付けや盛り付けが終わっていない状況に近い。(料理の世界では各部門シェフによるで味付けが終わってから総料理長がソースの最終調整を行い、盛り付けや温度を見てゴーサインを出す。)
BYDが誇る驚異的な開発スピードは、単に製品を速く世の中に出すことだけではなく、味付けできる残り時間を多く与えることにも使えるのではないか。
ATTO3と比べれば良くなった部分もあるが、車格に見合った乗り味の進化があまり感じられなかったのがシーライオン7の残念な部分である。せっかく生みだした開発スピードを商品のブラッシュアップにも使えば、さらに完成度の高い商品が生み出せるだろう。価格が安いことも大切だが、価格帯やセグメントにあった質感というものが欲しい。

シーライオン7の動力性能を評価するなら★5をつけても良いと思う。速いか?と聞かれれば速い!と即答できる。ただ、エンジンブレーキに相当する減速度の選択ができないため、ブレーキに頼りがちになる点が気になるのと、一定車速を維持するのがちょっと難しい点が気になるので4★に減ずる。
一方で落ち着かない乗り心地は★2とする。やはり車は乗ってみないと分からない。 - 積載性
- 3
-
ゆったりとしたボディサイズのクーペライクSUVだが、このサイズともなれば室内はそれなりに広い。狭くて乗ってられない!というかつての2代目インサイトの様なことは起こりえない。

特に後席は2930mmという超ロングホイールベースの恩恵でレッグスペースも広い。着座した時に太腿の裏が浮かないのはブレードバッテリーの薄さ、CELL TO BODYのお陰だろう。Bz4XやアリアをはじめとするBEV群は学んで欲しい。
シートバックを寝かせ気味の着座姿勢だがレッグスペースが充分あるため、辻褄が合っている。かつての中国車は後席居住性を重視するという特徴があったが、その痕跡が感じられるほどだ。勿論良いことばかりでは無く、イマイチな部分もある。

後席で言えばL断面のヘッドレスト形状の下端が首の根元に当たってしまい不快なのと、シートバックが背骨に当たる部分(シートバック中央部分)のクッション性が不足していて身体が何だか落ち着かない点は気になる。また、リクライニングレバーの意匠の裏(人が指で操作する面)が肉抜きリブだらけの形状をしており触っただけで金がかかっていないことが分かってしまう点は非常に良くない。AE110カローラ前期型のワイパーレバーを思い出してしまった。人が操作する部品は目に見えるところと操作時に触る部分どちらにも配慮が必要だ。

運転席もきちんと寛げる広さがある。RHDの割に左右のオフセットズレが少ない点は美点だが、ステアリングポストが上を向いていて違和感があることもすぐに分かってしまう。このあたりはシールでキレイに成立する配置のままヒップポイントを上げたのだろう。90年代のセダンベースMPVでよくある状況だ。
スマホのワイヤレス充電トレイが一等地に設置されているのは2020年代の車らしい。冷却風が出てくる開口まで設けているというおもてなしっぷりに驚いた。植毛仕上げでコーナリングのG(加速度)でスマホが飛んでいかないようになっている点もよく考えられている。

ラゲージはRrに500Lの充分広いスペースがある。植毛仕上げのデッキサイドトリムは高級感満点。シーライオン7のサプライズはフランク(Frにあるトランクスペース)の存在だ。Rrモーターによる後輪駆動でありFrの(ICE)内燃機関車でいうところのエンジンコンパートメントは収納になっている。と言っても機内持ち込みサイズのスーツケースが入るかどうかという程度の小振りなスペースなので洗車道具あたりを入れておくのが丁度良い感じだ。 - 燃費
- 2
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WLTCモードで走らせて1km走るのに何Wh必要かを求めたのが交流電力量消費率である。
シーライオン7は161Wh/kmである。ブレードバッテリーと称するBYD内製のリン酸鉄Liイオン電池を82.56kWh搭載している。つまり、WLTCモードに従って82560Whの電池を使えば512.8km走れる計算になる。

今回の試乗では起動時に88%:走行可能距離472kmという表示が出ていたので100%なら536.4km走れる計算になる。試乗後、再びメーターを見ると70%:走行可能距離385kmに減っていた。実際に試乗で走った距離は59kmだったので18%の電気を使って59kmを走ったことになり、1%の電気で3.278km走れる。この調子で100%電気を使い切ったなら327.8kmしか走れない。電気が残り10%とか言われると気が気でないだろうから、295km位が精神的限界距離になるだろう。愛知を出ても東京の手前で充電が必要になりそうだ。
カタログ値の590kmの半分程度と期待外れな数値である。これこそが私がBEVを信じ切れない一つの理由である。高速距離が590kmだと聞くとガソリン車並の長い脚を持つと考えてしまいがちだが、実際に走らせていると半分強しか走らないというのはいかがなものか。(なにもBYDに限った話じゃないが)
一つ救いになるのは、リン酸鉄Liイオン電池は急速充電に強い性質があるということだ。他車のBEVが使っている三元系Liイオン電池の場合、劣化を防ぐため急速充電であってもイッキ飲みはしない。その事が旅行などの長距離移動で急速充電をしても思うように航続距離が伸びない原因になる。
かつてのハイブリッドやリーンバーン、アイドルストップ付き車などのエコカーもカタログ値の半分くらいしか走らないという状態が続いていた時代もあった。BEVはまだその段階なのだろう。

ただ、エネルギーの話ついでに書けば、BEVが増えた時に一体どうやって電力を賄うのか。BEVが排ガスを出さない点は理解するがその電気はどうやって作られたものなのか。この国のエネルギー政策が整っていない限り本当にBEVが普及することは無いと思うし、整わないまま普及してもらっては困る。 - 価格
- 4
-
シーライオン7の重要な性能の一つが低価格である。試乗車は495万円、Frにもモーターを積んだAWDは572万円である。
乗用車の価格としては高額だが、ボディサイズを考えれば競合するテスラモデルYは558万円~、レクサスRZ300eは790万円、アウディQ6 e-tronは839万円スタートである。
BEVとして価格が近いbZ4Xは480万円、リーフ474万円だが、ボディサイズを考えると格下である。
横並びで安いがその安さには理由が素人の私にも分かるような商品性である。では、この価格をどう考えるか。
日本で購入するなら、35万円のCEV補助金が支給される。これがテスラモデルYだと127万円、レクサスRZは130万円満額が支給され、最終的な価格差を含めて計算すると下記のようになる。

この補助金は、電費性能や日本国内におけるメーカーの環境対策や投資によって最終的な補助金が決定するため、価格が高くても省エネ性能が高い、或いは日本国内に工場を持つようなモデルに対して補助金が高くなる仕組みになっている。補助金そのものの是非はともかくとして日本製のBEVが安くなる仕組み自体は当然と言える。
しかしながら、補助金がないとICE車と競合できないという事実は今のBEVに競争力が無いと自白しているように見える。さらに国民の血税が外国製BEVにも使われているという点も理解を得にくい気がする。
いずれにせよBEVなら高額の補助金がもらえるので、bZ4Xは350万円スタートということになり、新型RAV4の450万円というスタート価格を100万円下回るという状況になっている。
シーライオン7は中国製でかつ、電費性能に関しては競合に対して一歩譲るため35万円に留まっている。その結果、シーライオン7の好敵手は同じく新興BEVメーカーであるテスラモデルYと言うことになる。
アウディやレクサスは既にブランドイメージが構築されており、自動車作りの経験が長いため「自動車らしさ」や「自動車ビジネス」に精通しているという意味では高くても敢えてこちらを選ぶという堅実な選択をする人も多いだろう。
こうなってくると、とことん未来派のテスラか堅実なインターフェースのBYDかという選択になる。自動車としての完成度が荒削りという意味では両車とも同程度であり、あまり優劣はつけられない。いっそあなたの政治スタンスが左か右か・・・・お好きにどうぞ。

この図はいま日本で販売されているBEVの全長に対する価格の分布を表している。参考に指数関数的な近似曲線を引いているが、日本製BEV(白丸)はほぼ近似曲線の中央付近にいるのに対して
輸入ブランドのBEV(黒丸)は近似曲線の上に位置することが多く、プレミアムカーとして販売しようとしているのが分かる。全長が短いカジュアルなモデルであったとしてもBEVの値付けは強気だ。この中で異彩を放つのが赤丸でプロットしたBYD製品であり、どれも最廉価ラインにいる。
蛇足だが、今年出ると噂されるラッコの価格はベールに包まれている。この関係を見る限り200万円ポッキリ位じゃないとインパクトは無さそうだ。また、補助金額も他モデル同様35万円引きとなれば仮に200万円だった場合実質165万円程度になり、N-BOXを下回る価格で同程度の室内空間を持ったモデルが買えるなら相当なインパクトだ。(補助金込みで同額の173万円になるように208万円という可能性も期待できる)ただ、BYDからすれば日本だけでしか販売できない仕様のBEVは例えばラッコのための金型投資も日本だけで回収しなければならないから、そんなに安くできるのかどうかは未知数でもある。
話をシーライオン7に戻すと、補助金を差し引いて自動車として評価すれば500万円クラスとは思えない高い動力性能や豊富なアクセサリーはさておき、作り込みや味付けの面で500万円クラスとは思えない未熟さも同居している。そんな私も、シーライオン7が300万円以下だったら、ぐちゅぐちゅ言わず「安い!」となるが、そんな安さだけで押すやり方はお薦めしない。過度な値引きはブランドイメージを毀損してしまう。
スペックに対する価格を評価するだけなら★5でもいい。しかし、私はこの価格帯の車には作り込みが欲しい。ミニマムトランスポーターではないのだから安ければ良いとは思わない。よって★4とする。
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