2018年1月3日。
前日に鳳凰山の薬師岳小屋に泊まった私と友人は、朝早く起きて御来光を見ようか、薬師岳と観音岳まで行ってみようか迷っていた。
天気予報では麓の韮崎市でも雪の予報になっていたし、まだ暗い時間に外の様子を見てみたら強い風と横殴りの雪が降っていたので、御来光は諦めて山小屋から下山しようという考えになっていた。
今回山小屋では朝食の提供は出来ないという話だったので、登山者達は各自用意した物を食べている。
私も用意していたカロリーメイトのブロックを2本、あと水を少しだけ飲んで朝食の代わりとした。
携帯ストーブで湯を沸かしてインスタント食品を食べる事も出来たが、正直面倒なのでやめておいた。
山では割りと粗食にも耐えられたりするが、基本偏食なので食べる時には結構ガツガツ食べてしまったりする。
氷点下だとストーブに火が点かない事が多いけど、この山小屋は新築で密閉性が高いお陰か気温は7度か8度くらいあり暖かく感じた。
御来光と山頂は諦めたので、あとは山を下るだけなので少しは気が楽になったが、それでも強風と低温、いつも悩まされている軽度の高山病など不安な点は幾つかあった。
友人も準備が終わったので、日の出が終わった時間頃に山小屋から下山を開始する。
雪は止んでいたが、前日と同じく強い風が吹いている。
薬師岳小屋を出発してすぐに確認した気温。
この気温に加えて雪や砂が舞い上がるような強風が吹いているのだから、体感温度は実際の気温よりもっと寒く感じるだろう。
ここまで低温になると、もう鼻水を止める手立てはなく顔が痛さを通り越して麻痺したような感じになる。
本当は素手のほうがやりやすいが、素手だと金属に手がくっ付いてしまう可能性もあるのでアイゼンの装着は手袋をしたまま行った。
極厚手のウールのインナーグローブに、防水透湿性のオーバーグローブ、これぐらいしておかないととても手が耐えられない。
砂払岳。
日が出ており富士山も見えるので青空だと思われるが、風で舞い上がった雪の影響で遠くの景色はこんな感じにしか見えなかった。
遠くは見えにくいけど、近い場所ははっきり見えていたから決して視界不良というわけではなかった。
こんな風にカメラで撮影している時間でも、風は容赦なく襲ってくるので撮影を済ませたらどんどん移動しないと危ない。
カメラをポケットから出す時に一瞬手袋を外す瞬間も辛かった。
稜線を抜けて森林地帯の尾根に入ってしまえば風はかなり和らぐが、それでも冷たい風が常に吹いている感じだった。
今回の山歩きでは、歩く稜線の距離が短かったのが救いだったかもしれない。
南御室小屋の水場。
低温でも水が凍ることなく流れている。
ここで水を補給し飲んでみるのは私は2回目だが、美味しい水なのは間違いないがあまりの冷たさにせき込んでしまった。
ここに山小屋の他にテント場があるのでキャンプも出来るのだが、この日に張られていたテントはごくわずかで登山者の数が少ない事がよく分かる雰囲気だった。
友人は以前ここでテント泊をしたことがあるそうだが、外気温が氷点下15度で当然テントの中も氷点下なのでシュラフから殆ど出られなかったそうだ。
「もうこの時期にこの場所でテント泊はしたくない」と言っていた。
前日通った尾根をひたすら下っていくと、富士山が見えるポイントがあったので撮影。
こういう場所は登っている時にはなかなか気付けない…理由は登り坂だと頻繁に振り返る余裕がないから。
こういう雪が深い所なら12本爪アイゼンは本当に安心感があるのだが、時折露出している岩の上などは長い爪がガチガチ岩に当たって歩きにくいし、足場が狭かったり段差のあるような所は衝撃が足に伝わりやすいので大変。
あと、12本爪や10本爪アイゼンはつま先より前に爪が出ているので、気を付けないとこの前爪でズボンの裾を引っ掛けて破いてしまう事がある。
この爪が障害物に引っ掛かる可能性もあるし、時としてこの爪が凶器となり事故になる可能性もあるので注意が必要。
なので、歩く時は出来ればがに股っぽい歩き方をすると引っ掛けにくいと思う。
高度が下がるにつれて高山病特有の頭の重い感覚が薄れていくのが分かったが、完全に治まったのは下山して昼食を食べた後だった。
夜叉神峠。
白峰三山の稜線には雲?舞い上がった雪?が掛かっていたが、こちらは風は止んでおり気温もかなり上がっているように感じていた。
ずっと動いていて暑くなってきたので、防風用に着ていたレインウェアを脱いで収納した。
下ってきてからだいぶ暖かくなってきたなと思い温度計を見たら氷点下10度だった。
ここから下は雪よりも土や石が多いからアイゼンを外したほうがいいと友人に言われ、私も納得してアイゼンをここで外すことにした。
当然着た物を脱いだり収納するには素手で行うので、あっという間に手が冷たくなり麻痺してきてしまう。
今回の山歩きはとにかく低温と強風が辛かったな。
アイゼンを外したりレインウェアを収納している時に、前日の薬師岳小屋で話をした女性が下ってきた。
この後はもう1時間も掛からない行程なので、3人で話をしながら夜叉神の森まで下る事にしたが、私は夜叉神峠でアイゼンを外してしまったのでツルツル滑る道に苦労しながらの歩きとなった。
登山口のある夜叉神の森。
無事に下山出来た安心感と、一応薬師岳までは行けたので満足だった。
一緒に下った女性の方とはここでお別れ、連休の都合ですぐに広島へ戻るそうで、遠くて大変だねえと友人と話しながら車のほうへ向かった。
夜叉神の森の山小屋で風呂を借りたり食事をしたかったが、残念ながら営業していなかったので諦めた。
雪が降ったみたいだけど、大して積もらず道も通行止めになっていなかったので良かった。
下っている時に、何度か登山者とすれ違っているから通行止めにはなっていないだろうとは予想出来たけど、実際に見てみないとなかなか不安は解消されない。
気になったのは、前日もそうだが駐車場に停まっている車の少なさで、むしろここは駐車出来るかどうかを心配するような場所なので拍子抜けした。
友人は、登山ブームが去ったのかなとか言っていたが、単純に冬は寒いから行く人が少なくなるのではと思う。
日本海側は荒れた天気予報になっていたし。
この後は、家へ向かい無事帰宅。
色々と予想外な事が起きてしまったが、辛いけど楽しい山歩きだった。
スント アンビット2で計測した1月2日の山歩きのデータだが、歩行距離や速度に誤作動の兆候が見られる。
スント アンビット2で計測した1月3日の山歩きのデータ。
下りの累計標高差が凄い数値になっている。
前回のブログで書いた通り、早速山歩きのブログを書きたいと思う。
今回の山歩きは、南アルプス北部にある鳳凰山。
薬師岳、観音岳、地蔵岳という3つのピークがある事から鳳凰三山とも呼ばれており、最高峰は観音岳の2841mで山頂付近の稜線が森林限界を超えている。
登山口までの交通アクセスが悪い南アルプスの山々の中でも比較的交通アクセスが良いという事や、難所などの危険が少なく登る事ができ、山頂からの眺望が良い事などから人気のある山である。
友人から正月に鳳凰山に登ろうと誘いを受けていたので、金峰山にしようか迷ったが今回は鳳凰山に決定した。
1月2日、夜叉神の森。
ここには鳳凰山の登山口があるのでここから山歩き開始となるが、登山シーズンにはここからバスなどを利用して南アルプススーパー林道を通り広河原という場所まで行き、そこから北岳などの白峰三山を登山するコースがあったり、広河原から更にバスに乗って北沢峠まで行き甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳を登山するコースもあるので、この場所は南アルプス北部の交通の要衝となる場所である。
もちろん現在は厳冬期のためバスなどは発着しておらず、広河原や北沢峠へ行くには徒歩で行かなければならない。
連休という事で駐車スペースに車を停められるか心配だったが、意外にも車の数は少なく容易に停める事が出来た。
ここは駐車場が混んでいる事が多いので、何故こんなに少ないのかと友人も不思議がっていた。
画像の車は、山歩きを見越して一昨年購入した軽自動車で、狭い道でもすれ違いが容易で最低地上高が高いフルタイム四駆という理由で購入したスズキのKei。
この車が駄目になったら、次はハスラーを候補にしようか。
車の横に置いてあるザックは、冬季登山などで使う機会があるオスプレーのバリアント37(旧モデル)というモデルのザックだが、こちらは頻繁に使う事はないが結構長く使っているザックになっている。
登山届を提出し山歩きを開始。
登山口にはよく「クマに注意!」の看板が設置されているが、こういった看板は登山コースがある山ではよく見られる物である。
本当に最近目撃されていると、詳細が書かれていたり目撃例の貼り紙などが貼られている場合が多い。
山歩きを開始してしばらくすると、積雪が見られるようになってきた。
当然標高が上がるに従って積雪している可能性は高いので、この先にある夜叉神峠でアイゼンを付ける事にした。
夜叉神峠。
ここは、夜叉神の森から徒歩で約1時間くらいの位置にあり、白峰三山の眺望が良いのでハイキングなどで訪れる人が多い。
今の時期はこの夜叉神峠を目的に訪れる人は殆どおらず、多くはここを通過して鳳凰山を目指す人達である。
肝心の白峰三山は山頂付近に雲が掛かっているように見えるが、もしかしたら強風で雪が舞い上がっているのかもしれない。
実際にこの夜叉神峠でも強い風が吹いており、気温も氷点下5度を下回っているので体感温度が非常に低い。
早いところアイゼンを付けようと急いでザックに入れてあった袋を取りだすと…
出てきたのは6本爪アイゼン。
実は、使うつもりだったのはこの6本爪アイゼンではなくチェーンアイゼンという物だったのだが、中身をよく確認せず間違えてこちらを持ってきてしまったのだ。
こちらはチェーンアイゼン。
ゴムバンドで固定するので、靴下を履くような感覚で簡単に装着出来るし、短い爪が細かく無数に配置されているので岩場でも歩きやすい。
6本爪アイゼンは、靴の真ん中付近に長い爪が6本配置されているので平地だとどうしても不安定になるし、つま先やかかと部分には爪が無いので狭い場所での歩きだとアイゼンの爪が掛からず滑ってしまう可能性がある。
間違えてしまったのは仕方ないので6本爪アイゼンを付けようとしたら、今度はアイゼンを固定するためのバンドが壊れてしまっていた。
ロックが出来なくては使う事が出来ないので6本爪アイゼンを諦める事になり、あまりにも情けない自分への怒りから癇癪を起こしてしまい友人に咎められてしまったが、これで帰るわけではなく万が一のために用意していた12本爪アイゼンを使う事にした。
12本爪アイゼン。
靴底に10本、つま先の前方に2本の爪が飛び出ている厳冬期登山の縦走や登攀に使われるアイゼンで、積雪歩きのグリップはもちろん最高だが爪が長いので岩が剥き出しの場所や平地では非常に歩きにくく、重量もあるので足に掛かる負担が大きくなる。
見た目がかっこいいので冬山で使っている人を多く見掛けるが、途中で積雪していない場所を通過するのにかなり歩きにくい様子をよく見るので、出来ればこれは使いたくなかった。
でも、6本爪が壊れている以上はこれを使うしかないので12本爪アイゼンで歩く事にした。
南御室小屋。
長い長い登りをひたすら歩き、せっかく稼いだ高度を下げてしまった鞍部にある山小屋で一旦ここで休憩。
ここへ来るまでは低温と強風の中での歩きとなり、普段暑がりなはずの私も友人も氷点下10度と強風の中ではさすがにたまらない。
何とかここまで辿り着いたが、私達が泊まる山小屋は更に300m以上登らなければならない。
更に、高山帯歩きでは最早お約束になってしまったが、今回もまたしても軽度の高山病になってしまったようで頭が重かった。
全然激痛ではないのだが、偏頭痛持ちの私としては頭が重いという感覚が痛いに変わってしまわないかと心配だった。
長い登り坂が終わると森林限界を超えて高山帯となる。
画像は高山帯に入ったばかりの稜線にある砂払岳という場所で、雪みたいに白い花崗岩の砂が広がっている場所。
この辺りに雪が積もっていないのは、ここは風の通り道で積もった雪が吹き飛ばされてしまうからである。
台風みたいな風なので身体を安定させるにも一苦労で、ふらつく身体を何とか踏ん張りながら富士山を撮影した。
砂払岳から見る白峰三山。
山全体が見えるようになっていたが、あちらはもっと寒くて強い風が吹いているだろう。
何しろむこうは3000m峰が3つあり、鳳凰山よりも300m以上高い北岳や間ノ岳があり、両者は国内2位と3位の高峰なのだから気象条件はより厳しくなるはず。
薬師岳小屋。
今回私達が泊まる山小屋で、昨年建て替えが終わったばかりの新しい山小屋になった。
中に入って手続きを済ませるが、今回の年末年始の営業では夕食のみの提供となり朝食は各自用意してくれとの事。
まあ、腹が減っていたらお湯を沸かしてインスタント食品を食べる事にしよう。
新築の山小屋なので中もとても綺麗だし、個室のような作りになっていて落ち着く空間に生まれ変わっていた。
布団も新しい暖かそうな物になっていたので寝るにも快適そうだ。
部屋の真ん中は長テーブルが置かれ談話スペースのようになっており居住空間が広く取られているが、その分定員は以前の60名から40名に減っているようだ。
これは夏のシーズンは事前に予約しておかないと泊まれないなと思ったが、今回私達が泊まる日は20名の宿泊という事であまり混雑はしていなかった。
ただ、トイレが屋外にあるというのは昔から変わっていないようで、強風吹き荒ぶ中で用を足しに行かなければならないと思うと不安になった。
かなり早い時間に山小屋に着いたので、とりあえず薬師岳山頂まで行ってみようと外に出てみた。
相変らず風は強く、特に顔面が麻痺してしまうような寒さがとにかく辛かったが、更に登り坂で既に本日の脚力が終了していたので、すぐ近くにある薬師岳までの道のりがとても遠く感じてしまった。
友人は12本爪アイゼンの重さが効いているのではないかと言っていたが、たぶん私もそう思う。
薬師岳山頂。
鳳凰山は眺望の良い山で薬師岳からの眺めもとても良かったが、とにかく寒さが辛かったので隣の観音岳にはとても行く気にはなれずすぐに山小屋へ引き返した。
観音岳は明日天気が良かったら行こうという話になったが、翌日はもっと荒れるだろうという予想しか出来なかった。
山小屋に戻ったものの夕食までにはかなり時間があるので、友人はビール、私はジュースを飲んでその後はストーブの番人となってジッと座っていた。
特にする事がなくなってしまったので、ふと山歩きのデータを測定していたGPSウォッチを確認していたら、近くに座っていた女性が興味深そうに時計の質問をしてきた。
カシオのプロトレックのように気圧計や高度計やコンパスが付いた時計や、最近は更にGPSで歩いた軌跡を記録出来る腕時計があるんですよ的な話をしたりした。
話をしているうちに、その女性は何と広島から車で夜叉神の森まで来たのだと言う。
その話にビックリする私と友人だったが、かなりの頻度で山歩きをしている本当に山好きの方みたいで、話がとても面白かったので結構長い時間話し込んでしまった。
でも、その話をしていたお陰で重かった頭の感覚がとても楽になったし、とても助けられた気分になった。
知らない人と話をして過ごすというのも山小屋の魅力なのかもしれない。
山小屋の夕食。
当たり前だが、普通の旅館などと比べれば食事はシンプルになってしまうが、こちらの山小屋はとても頑張って極力質素にならないよう作って下さってると思う。
テレビに天気予報が表示されていたが、翌日は麓の天気が雪になっているので御来光は無理かなという考えになった。
友人は御来光よりも睡眠時間が大事そうな事を言っていたが、やはり天気次第では起きるという気持ちもあるのだろう。
とりあえず早朝に外の様子を見て決めようと思った。
ブログの容量が心配なので、1月3日のブログは別の機会に。
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